フレンドコード▼陰キャなゲーマーだけど、リア充したい

さくら怜音/黒桜

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Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友

16 助けろよ

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  放課後。居ても経ってもいられなくなった圭太は、のんびり帰宅準備をしている滝沢の元へ向かった。どんなに思考を張り巡らせても、ノートは黒く染まるばかり。不本意だがこの男に縋る以外の方法が思いつかない。
 
「なあ滝沢、あんな噂は酷い嘘だって叩きのめしてくれよ。あいつが可哀相だ」
「え、ちょっ、何。サエ……待て。とりま落ち着け」
「お前はいいよな、どうせ他人事だとか思ってんだろ。でもお前が僕にあれこれ詮索してこなかったら、こんなことにならなかったはずだ!」 
 
 声のトーンも落とさず、言いがかりのような文句を投げつけて、戸惑う滝沢の胸倉を掴む。
 すると滝沢はマスクに人差し指を当てて、何度も「シーッ」と息を吐く。それから興奮気味な圭太の襟首を掴み返してきた。
 ゴツンッ。
 額に衝撃的な痛みが走る。
 物理的な反撃を食らうと思っていなかった圭太は、目を丸くして一、二歩よろめいた。圭太より背丈の高い滝沢は、額をくっつけたまま低い声を発した。
 
学校ここでそういう話すると、また変な噂が立つだろ。落ち着けって」
「……っ」
「俺もさあ、誰がどうのって話は眉唾だと思うし? なんとかしてやりたいとは思ってんだよ」
「だ、だったら早くなんとか」
「とりあえず家についたらラインしろ、いいな?」
 
 ゲームの攻略はともかく、リアルの人付き合いはこいつに勝てるはずがない。圭太は言われるがまま、こくりと無言で頷いた。
 一触即発ともいえる喧嘩腰の二人の様子を遠巻きに見ていた歩夢が、無言で教室を立ち去る滝沢の後ろを慌てて追いかけていった。
 

…… ……

 
 圭太は苛立ちながら自宅に戻り、言われるがまま滝沢に連絡を入れた。するとすぐに通話のコールがかかってくる。
 
『誰もいないとこで話さないとまずいと思ったんだ。悪かったな、いきなり頭突きして』
 
 受話器越しの滝沢の声は、いつもの軽薄な陽キャ仕様とはうってかわって真剣そのものだった。おかげで圭太も少し冷静さを取り戻すことができた。制服のまま二階の子ども部屋に移動し、ドアも閉めて鍵もかける。それからスピーカー越しに、ずっと言いたかった噂への恨みつらみをぶちまけた。
 
「学校もクラスの皆もどうかしてるだろ! 誰が感染したかもわからないし、アレに感染したからって罪を犯したわけじゃないのにっ」
「わかる。でもみんな不安なんだろ」
「自分が感染したくないから? はっ、結局友だちなんてそんなもんなんだろ! ターゲットがいれば不平不満は全部そいつのせいにして、責任転嫁してさ。ホントにそいつのことが大事なんだったら、まずは心配するのが当たり前なんじゃないのかよっ。だから嫌いなんだ、何が友だちだ。クソくらえ! リアルなんてゲームよりクソだ!」
 
 思っていた以上にあれこれと溜め込み過ぎていたようで、気づけば涙まで零れ落ちていた。滝沢は電話越しながらも、冷静に話を聞いてくれている。
 
「サエは安藤がなんで休んでるのか、知らないんだろ」
「うん……」
「あいつの肩持ちたいのはわかるけど、連絡ないってことは何か隠してるのかもしれないじゃん」
「……」
「安藤ってテニス部だろ。一年二組のテニス部連中って、夜中まで外うろついてて、たばこも吸ってて、マスクなしでコンビニ入るようなイカれた輩が多くてさ。俺はこの目で見たから知ってるんだけど、お前は知ってたか?」
「……し、知らない……」
「それでもお前、あいつを信じて感染者じゃないって言いきれるのか?」
「……いや……でも、だけど」
「あの噂を偽物だって証明したけりゃ、まずは安藤と連絡とって真実を聞かないと、俺も動けないわけ」
 
 いつものテンションと違い、静かに諭すような物言いをする滝沢の言葉は深く重くのしかかる。
 
「ここまで一度も連絡先を交換しなかったってことは、その程度の関係ってことじゃん。そんな奴、ゲーム以外で心配してやる必要、ある?」
「そんな言い方しなくてもいいだろ!」
 
 滝沢の指摘があまりに他人行儀に感じられて、圭太は被せ気味に叫んだ。太一を疑うなどという気持ちは微塵もない。けれど確かに、会えなくなったことで彼の現状も気持ちも何もわからない。ゲーム以外のことは何も教えてもらえないのだ。ただの元・ゲームフレンドだから。
 
「ちが……僕は……嫌われるのが怖くて……あいつがゲームに飽きたらもう終わりの関係だと思ってたから……それ以上仲良くなって、あとで終わりになるのが嫌で……」
 
 こんなことになるなら、気持ちを誤魔化さずに連絡先を聞いておくべきだった。関係が壊れることを恐れないで、もっと色んな話をしたいと言っていればよかったのに――。大事な人を守ることもできないどころか、自分のせいで彼を傷つけることになるなんて。気づけば大粒の涙がぼとぼと零れ、机の上を濡らしていた。

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