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第三章 建国

第二十七話 オークの逆襲

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「一族の恨み晴らさせてくれる!」

 オークキングはジーニに奴隷から解放してもらってすぐにアダマイオス・エンリックの元へと進軍していた。進軍するうちにいくつかのゴブリンの集団を味方につけていく。そしてアダマイオス・エンリックが統治している街へと到着する。

 アダマイオス・エンリックはヘンダークの領地の一つを統治している貴族である。そしてアダマイオス・エンリックはオークキングが来る事はわかっていた。奴隷紋が消された事がわかったからだ。

 そしてオークキングを迎え撃つ様に街の城壁より魔法や弓で迎え撃っている。

「命令でなければやられはせん!!」

 オークキングは号令を出した。その号令によりゴブリン達が動き出す。ゴブリン達は自分達の二倍はある盾を構えて城壁へと進んでいく。

「魔法使いを狙え弓ならばあの盾で十分防げる」

 オークジェネラルも指示をだす。盾は木で出来ているがそれでも弓ならば防げる。魔法による被害が一番危険なのをわかっているのだ。魔物だと侮る事はできない。

「ゴブリン達は城壁についたな」

 ゴブリン達は城壁まで到着した。そしてゴブリンは城壁に肩車で登っていく。いくつものゴブリンはしごが出来上がる。それを確認したオークジェネラルはオークウォーリアを連れてかけ走る。

「急げ!」

 オークジェネラルは焦っている。ゴブリンをはしごにしたこの戦法はどうしてもその状態を長くは保てない。城壁からも攻撃が加えられるからだ。

 だが何とかはしごを維持している間にオークジェネラル達は城壁へと到着する。そして、

「我らを辱めたアダマイオス・エンリックはどこだ!」

 城壁を登りきったオークジェネラルは雄たけびのような叫びを放った。戦場は城壁の上へと移っていく。

 アステリアの街と違ってこのマグラスという街には城門が4方向にある。そのすべての城壁はオークキングによって制圧された。

「逃げる者はいい!、それよりも領主の館を調べろ。エンリックを逃がすな」

 オークジェネラルは部下達にそう伝える。そして領主の館へと入っていった。

 街の住人達は街を放棄していく。開け放たれた門から次々と人々が逃げのびている。

 ゴブリン達はそれを指を咥えて見ている。オークキングはジーニとの約束をたがえないようにしているのだ。

「よし、我らも街に入るぞ」

 オークキングは椅子から立ち上がりマグラスの中へと進軍する。だがその時、

「あの土煙は!敵の援軍ではありません。規模が段違いです」
「何!では本隊は街にいなかったというのか」

 オークキングはすぐに城壁の中へと入っていく。マグラスの軍は最初から捨て駒であったのだ。

 魔法使いの攻撃が少ないのはそのせいであった。この世界の魔法使いは戦士よりは明らかに少ない。10人に1人くらいの割合である。なので捨て駒の中にはそんなに含むことはできなかったのだ。

 それに気付いていれば潜んでいた敵本隊を軽く屠る事は出来たはずだった。それは何故か....城壁に守られた魔法使いはとても強力な兵科である。

 だが壁や前衛のいない魔法使いはとても無防備で弱い兵科になってしまう。ましてや伏兵は森に潜んでいた。ゴブリンの大群に襲われたら魔法を使う前にやられてしまうだろう。

 そして魔法の放つまでの時間だ。初級魔法ならば無詠唱で撃てるものは多くいるが中級上級とまでいくと世界でも指折りの人物たちだけである。

 オークキングは勝つチャンスを逃した。だがまだ諦めていない。自分達がある程度時間のかかったこの城壁ならばまだ勝てるはずだと思っているのだ。だがそれはかなわなかった。

「ははは、ゴブリンに門が守れるか!」
「なんだ?弓しか使えねえのか」

 マグラスの兵士達はゴブリンを踏みつけながら進軍していく。城壁戦において人間達はとても多様な兵器を持っていた。門を破壊する兵器、破城槌である。

 その兵器は予め”傷つけられていた門”を易々と壊しマグラスに立てこもったオークキングを追い詰めていく。

「王を守れ!」
「ギャギャ、もうやってられるか!」
「俺達はにげる!」

 ゴブリン達はオークジェネラルの号令に従わずに包囲されている街から逃げようと城壁から飛び降りた。しかし城壁はとても高い、もちろんゴブリン達は足や頭を打ち付け生きていても兵士達にとどめを刺されて行った。

 残るはオークたちのみである。しかし活路はない。完全に包囲されている。それもそのはずだ最初から罠にはまっていたのだから逃げられるようになっていないのだ。

 多勢に無勢オークたちは傷つき絶命していく。いくらか敵を倒してもたかが知れている。一騎当千の戦士はオークジェネラルとオークキングの5人のみである。しかしその5人がいくら頑張っても覆らない数の差であった。

 そしてその時はやってきた。

「はっは~俺がこいつを殺した。殺してやったぞ」

 一兵卒だろうか。簡単な装備を身に纏うその少年兵はオークジェネラルの首を掲げて歓喜の声を上げる。

 その姿を見て倒れ伏しているオークキングは歯を食いしばる。

「よう、オークキング殿....元気そうだな」
「アダマイオス・エンリック....」

 兵士達をかきわけてアダマイオスが現れた。彼は笑みをうかべて兵士が用意した椅子にすわる。そしてオークキングを見下ろす。

「それで?俺に何かようか?」
「ぐぁ~殺す!殺してやる!」

 オークキングは鬼の形相でアダマイオスを睨みつける。だがエンリックはきにかえさずに兵士のいれた水を飲み干して笑みをうかべ続ける。

「ふむ、殺すか...その言葉はそのまま返すが....お前の奴隷紋を解いたのは誰だ?」
「殺す!殺す殺す!」
「お~お~....おいあいつらを連れて来い」
「ハッ」

 エンリックは兵士に指示をする。兵士達はすぐにオークキングの前にオークたちを並べていく。傷つけられて、もう戦えない者達を殺さずにとっておいたアダマイオス。この為だけに殺されずにいたオークたちは今の現状を理解して歯噛みした。

「王!すみません!」
「ああ、まさか」

「ははは、魔物も涙を流すのだな。しかし臭い臭い、豚小屋の匂いがするな~」

 オークたちは涙している姿をアダマイオスや兵士達は笑っていた。

「では諸君始めようか。ああ、オークキング君は言いたくなったらすぐに言ってくれよ。100匹はいるから安心してくれよ。君達が大所帯で助かったよ」

 アダマイオスは鼻を抑えてオークキングを捉えている家から離れていった。

 離れてすぐにオークの叫び声とオークキングのアダマイオスへの呪いの言葉がマグラスに響いている。

 アダマイオス・エンリックはとても狡猾な男である。ヘンダークの一翼を担う者なだけあってそれなりにやる男である。

 しかしオークキングは最後までジーニの名前を出さなかった。オークキングは最後までエンリックへの呪いの言葉を口にしながら天へと召されたのだ。

 その場にいた兵士達も驚愕していた。魔物のくせに仁義を見せたのだ。だがそれは語り継がれない。それは魔物だからである。

 マグラスでの戦闘はオークキングの最後で終焉した。エンリックはほくそ笑んで兵士を集めていく。それはどこに行く兵士達なのかはまだわからない。

 
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