ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第59話 カテジナ

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「ムロク大臣。やっときましたか」

「お待たせいたしました。カテジナ様」

 松明を持っていた人を尾行するとフードを目深く被った女性と会っていた。ご丁寧に名前を呼びあっている。
 松明を持っていた人はムロク大臣。フードをかぶった女性はカテジナというらしい。ムロク大臣は知っているけど、カテジナという女性の方は全く知らない。どういう関係なんだろう。なんだかドキドキする。逢引なのかな?

「言われた通り、ブルース様に飲ませました」

「そうですか。では次はこちらをメリナ姫に」

 ムロク大臣の言葉に彼女は嬉しそうな顔になり、懐から瓶を取り出す。差し出された大臣は首を横に振った。

「や、約束が違います。ブルース様に飲ませれば終わりだと。妻を解放すると言ったじゃないか!」

「あら? 私はちゃんと言ったわよ。”飲ませたら”とね。ただ人数は言っていなかったけどね」

 ムロク大臣は少し声を張り上げる。どうやら、人質を取られて言うことを聞かされているみたい。逢引だと思ってドキドキしていた気持ちを返してほしい。

「つ、妻を返せ!」

「あ~、煩い。そんなに声を張り上げたらだれか人が来てしまいますよ。そうなったらあなたの奥様は帰ってこなくなってしまいますよ」

 ムロク大臣は悔しそうにこぶしを握る。カテジナはクスクス笑い。瓶を差し出す。
 あの瓶はレイブン達が手に入れた瓶と同じ形だ。ブルース様に飲ませて次はメリナに飲ませようとしている? ただの毒だと思ったけど、特別な効果のある毒なのかな?

「では吉報を待ちますよ。それを聞かないと【ベイルード】に帰ることができません。あなたも早く私から解放されたいでしょ?」

「……私はブルース様に忠誠を誓っている身。毒ではないのだろうな?」

「ふふふ、忠誠ね~。それならば、妻共々命を散らせばいいのに。安心しなさい。毒ではないわ。普通の人にとってはね」

 カテジナはそう言ってほくそ笑む。普通の人にとっては毒ではない? それはどういう意味なんだろう?

「それにしてもブルースの体は人間のものなのかしらね? かなり弱っていたと思ったのに、元気になっちゃって。私が手を加えなくても死を迎えると思ったのにね~」

「貴様。王妃の立場で王の死を願うか!」

「なに怖い顔してるのよ。あなたと私は共犯なのよ。同罪なの」

「毒ではないのだろ! 私は違う。ブルース様の死は願っていない!」

 二人の会話に熱が入る。本当に毒ではないみたいだけど、おかしい。それに【カテジナ】は【王妃】でありながらブルース様に何かを飲ませた。その目的は彼の死? 一体何を飲ませたっていうの?

「そろそろ人の目が入るかもしれないわね。私は帰るわ。あなたは少し時間をおいてから帰ってね」

「……私は」

「ふふ、歳は取りたくないわね」

 カテジナの言葉に返す言葉もなくなるムロク大臣。とてもかわいそうだけど、今はカテジナが気になる。なんで王妃なのにブルース様を亡き者にしようとしているのだろう?
 彼女はランタンに火をつけてお城に帰っていく。王妃なのだから当たり前だけど、どこか恐ろしさが垣間見える。

「あと少し、あと少しでこのお城も町も領地も私の物。ふふふふ」

 カテジナはそう言って低俗な笑みを浮かべている。ただの私利私欲? そんなことの為にブルース様とメリナを亡き者にしようとしているの?
 でも、おかしい。ブルース様だけでも王妃の立場ならばすべてをものにできるはず。なんでメリナにも手をかけるの?

「お母さま。どこに行っていたの?」

「【レイナ】。寝ていなさいと言ったのに起きていたの?」

 お城に入って3階まで上がる。扉を開くと3歳くらいの少女がカテジナを迎える。もしかして、あれが第二王女? メリナの妹?

「あと少しであなたの時代がやってくるわ。それまでゆっくりと大きくなりなさい」

「時代? それよりもお母様ともっと一緒にいたい。またどこかへ行ってしまうの?」

「そうね。役に立たない男達のせいで自ら手を加えなくてはいけなくなってしまってね。またしばらくお城を離れることになるかも」

 カテジナの声に悲しい表情で答えるレイナ。私は音もなく一緒に部屋に入る。すると彼女と目が合う。しっかりと見つめてくるレイナ。もしかして見えてる?

「妖精?」

 そう呟いたレイナはニッコリと微笑んでカテジナに抱き着く。

「お母さん。今日は一緒に寝てくれる?」

「大丈夫よ。ゆっくりできるわ」

「やった。メリナお姉ちゃんとも遊んでいい?」

「だ~め。あの子はガサツだから。いつもあなたが傷ついて大変な目にあう。あの子と違ってあなたは繊細なんだから、お勉強をしましょうね」

 一緒に寝れることを喜んで私と目が合ったことを報告しないレイナちゃん。再度彼女は私を見つめてウインクしてくる。
 私が悪い人だとは思わないのかな? 

「ねえ、お母さん。ご本読んで! 妖精のお話」

「ふふ、ほんとに好きね。【小さな妖精】のお話が。いいけど、ちゃんと眠るのよ」

 こうやって見ると普通のお母さんに見える。メリナよりも幼いレイナちゃんに優しく本を読んであげている。
 【小さな妖精】のお話はとても面白い話だった。妖精が姿をかくせることを武器に悪い人を懲らしめていく話。まさに今の私のようなお話だった。この話が好きな彼女は私達をその妖精の知り合いだと思っているのかもしれない。もしくはそのものだと思っている。
 とても純粋な少女。なんでカテジナはすべてを手に入れようとしているのだろうと思ったけれど、彼女のためなのかもしれない。
 でも、それがブルース様とメリナの身に危険が及ぶことだとしたら黙っているつもりはない。二人はもう私の友達だから。

「妖精は悪い人を懲らしめて、優しい人と幸せに暮らしました。はい、おしまい。寝ましょうね」

「は~い。”妖精さんは悪い人を懲らしめるんだよ”優しい人は懲らしめないんだ~」

「? そうね。優しい人を懲らしめないわね」

 カテジナは優しくレイナの頭を撫でる。すると彼女はわざわざ私に聞こえるように大きな声を上げる。首を傾げるカテジナ、彼女に言った言葉じゃないのはわかった。
 レイナは私に言っているんだ。カテジナは優しい人だと教えてくれてる。でも、それはあなたの立場から見た彼女の姿。私は彼女を懲らしめないといけない。
 そう思っていたけど、優しく見つめあう二人を引き離すことは私にはできなかった。
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