ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
61 / 81
第2章 国

第61話 過ちと後悔

しおりを挟む
「申し訳ありませんブルース様」

 影の魔物を倒した後、私はカテジナを追いかけた。彼女はレイナちゃんの部屋に急いで戻って泣きながら抱きしめた。
 そして、次に彼女が向かったのはブルース様の寝ている寝室。
 自分が犯していた罪を謝り声を上げている。

「どうしたんだカテジナ? 何があった?」

 ブルース様は具合の悪そうな顔で問いかける。彼女は隠すこともせずにすべてを打ち明ける。
 
「そうか……。レイドレッド帝国の魔物か。動き出していたんだな」

 ブルース様はそう言って水の入った瓶から水を一口口に含む。ホッとした様子でカテジナを見据えるとほほ笑む。

「君の様子が可笑しいと思っていた。しかし、守ることが出来ずにいた。申し訳ない」

「い、いえ。私が騙されていたのです。ブルース様のせいでは」

「いいや、私のせいだ。私が守れなかったせいだ」

 ブルース様は大きなため息をついてカテジナの頭を撫でる。

「君はレイナやメリナのことを第一に考えていきなさい」

「ブルース様?」

 ブルース様の言い回しがおかしい。そう感じたのはカテジナも一緒。青い顔で無理に笑うブルース様はとても力なく横になる。向けてくる背中はとても小さく見える。

「ははは、心配しなくてもいい。少し眠るだけだ。子供を大事にしなさい。必ず君の力になってくれる」

「……」

「カテジナ?」

 力なく話す彼のベッドにもぐりこむカテジナ。後ろから彼を抱きしめると涙を流す。

「毒だったんですね……」

「……君のせいではないよ」

 二人でいる最後を悟って二人で涙を流す。

「ありがとう」

「なんでお礼なんて……。私のせいなのに」

「はは、どんな形でも看取ってくれて感謝しているんだ。私よりも長く生きてくれてありがとう」

 ブルース様は後ろから抱きしめるカテジナに力なく体を向けて告げる。とても綺麗な言葉、私も涙を流して魔法を唱える。

「お願い! 影を倒してくれた人がいるんでしょ! 私の大事な人を守って! 治して!」

「……カテジナ」

 詠唱を唱えているとカテジナが声を上げる。泣きじゃくってまるで子供みたい。
 彼女は帝国の力で惑わされていた。いつからかは分からないけれど、彼女は騙されていたんだ。
 それで大事な人を失うのは間違ってる。

「この光は?」

 姿を隠したまま、私はブルース様にヒールを唱えた。今度は声すらも見せずに光だけを授ける。
 ヒールは見事に彼の体を治していく。

「ブルース様! ありがとう、本当にありがとう」

「な、何が起こっているんだ?」

 顔色の良くなったブルース様を見て涙ながらに喜ぶカテジナ。私はニッコリと微笑んでその場を後にした。
 カテジナの失態は内密にされた。ムロク大臣の奥方様も無事に戻ってきた。
 彼女はカテジナの別荘で悠々自適な毎日を送っていたらしい。
 監禁というよりも旅行と言った方があっているくらいのものだったとか。無駄に騒がれずに監禁するにはいい手かもね。

「メリナ」

「お母様? ど、どうされたのですか?」

 ムロク大臣への謝罪の後、兵士達の剣稽古を見ていたメリナにカテジナがレイナちゃんと一緒に現れた。
 メリナは抱きしめてくるカテジナに困惑してる。
 問いかけに答えずにメリナを抱きしめ続けるカテジナ。
 困惑していたメリナだったけど、強く抱きしめ返し、涙を流す。

「よかったですね」

 それを見ていたレナリスさんも涙を流して喜んでる。
 私達はそれを割り当てられた部屋から見下ろしてホッと胸を撫でおろす。

「レイドレッド帝国か」

「あまりいい噂を聞かない国です」

 ラッドとレイブンがそう呟く。
 みんなにも昨日の出来事を話した。朝食のあとすぐにカテジナさんがムロク大臣に謝りに来たからみんな驚いて私に聞いてきたんだよね。
 みんな私が夜に出かけていたのに気が付いていたから何かしたと思ったんだろうな。夜に出かけた前科があったから目をつけられてるな~。

「魔物を使役する術を研究している国。人も操るとか」

「それをカテジナ様に。なんて自分勝手な国だろうね」

 レイブンが情報を教えてくれるとネネさんがため息をつく。
 戦争せずに国を手に入れようとしてるのかな。どちらにしても碌な国じゃない。

「ファム。ラッセルに調べてもらったわよ」

 みんなでため息をついていると扉が勢いよく開く。リドナさんが瓶を調べた結果を持ってきてくれた。

「大急ぎで調べたわ。トロールでも一発で死んじゃう毒だった」

「ただの毒? それだけ?」

 リドナさんが手渡してきた紙の内容を口頭で教えてくれる。
 あのトロールを殺めるほどの毒、それをブルース様に飲ませるなんて……。カテジナさんも中身はしらなかったみたいだけど、恐ろしい。

「……じゃあメリナに飲ませようとしたのも?」

「そうかも。カテジナ様を操ればレイナちゃんも操れるし……」

 私の呟きにレイブンが肯定する。ブルース様とメリナを亡き者にすれば国が手に入っていたってわけね。
 私がいなかったらこの国は今日にでも帝国のものになっていたってわけね。……こんなことをする国のものになるなんて絶対にさせない。ブルース様達は絶対に私が守る。
 リドナさんに昨日のことを報告しておく。ラッセルにも共有してもらわないと。

「ラッセルに知らせて。必ず帝国からこの国を守るって」

「ふふ、わかったわ。あ、そうだったわ。毒のことを聞いた時に聞いたんだけど。メリナ様の暗殺を企てたのはカテジナ様だったみたい。彼女は操られていたから……」

「……そういうことね」

 初めてメリナに会った時の暗殺はレイドレッド帝国の企てだったってわけね。
 ますますやる気が出てきた。教会も加えて帝国を落としていこうじゃない!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...