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第2章 国
第62話 レイスロード
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◇
「ぐっ。【シャドウ】が死んだ?」
私は【レイドレッド帝国】の死の王、【レイスロード】。
私の使役していたシャドウが死を迎えたことが伝わる。シャドウの死の苦しみが私の胸を締め付ける。一太刀で切り裂かれた?
シャドウはレベル30の魔物だ。影に潜むことが得意な暗殺に向いた魔物。オルブスではブルースとレナリスだけが強者だと思っていたが、見えない強者がいたようだ。
「シャドウの記憶が入ってくる。一瞬だが見えた少女。肩に妖精を乗せていたな」
シャドウが死に際に見えた世界。死を迎えるとマナを放出する。その影響で魔法で見えなくなっているはずの彼女たちが見えるようになったんだろう。まさか、そんな効果があるとは私も気が付かなかったが。なにせ、私の魔物がやられたのは初めてだからな。
「ちぃ!」
夜の自室に私の舌打ちだけがこだまする。
私は自分が強いと思っていた。しかし、今回の相手はかなりの強者だ。異常なまでの強さを持っている少女。
「妖精を使役するほどのものか。妖精など、昔に全滅したと言われていたんだがな。おかしな魔法を使うと聞いているが、それで強くなった少女か?」
【願いをかなえる】妖精の話を私は聞いたことがある。強くしてほしいと願った少年が勇者となった話だ。
眉唾物だと思っていたが、実際に見ると信じざる負えないな。
「計画が破綻したな。オルブス王国を無傷で手に入れることは叶わなかったか」
王妃、カテジナを操りブルース王を謀殺。第一王女に私の血を飲ませ、操る計画だったんだがな。
失敗してしまったのなら仕方ない。最初からやり直しだな。
「ケビン。ケビンはいるか?」
「はい。ここに」
私の人間の部下の筆頭であるケビンを呼びつける。彼は返事をして部屋に入ってくると跪く。
「オルブス王国のラッセルに書状を送る」
「はい。どのような? この間のような暗殺の依頼ですか?」
「いや、今回は違う。情報だ」
「情報?」
ケビンの質問に答えると彼は首を傾げる。
ラッセルは私の敵となってしまったと認識している。メリナ暗殺の失敗を告げて来た時に依頼料の倍額の金額を叩きつけてきたからな。シャドウが得た情報ではラッセルが脅迫されていたという報告を受けていた。
しかし、彼は商人だ。金を払えば情報を売ってくれるだろう。
「ついでに教会の方からも情報をいただきたいが」
「シャイン教会の聖女がジャーメイノにいるという話です。町の中では不思議なことが起こっているとか。古傷が治ったりしているみたいですよ」
教会の話をするとケビンが町で得た話をしてくる。彼も行きたい様子で話す。
「昔の傷が治るなら俺も治るかなって。たまに弓がうまく飛ばないことがあるので」
「確か手を怪我したんだったか?」
「はい。ダンジョンの魔物に」
ケビンはそう言って利き腕の右腕の手首をさする。彼の弓の腕は帝国一の腕前。
城壁から500メートル先の兵士の頭に乗せたリンゴを射抜けるほどの腕を持っている。彼の腕は教会の回復魔法でも治ったことはない。
古傷は治らないのが回復魔法。そのはずだが、聖女の魔法ならば治るかもしれない。彼の腕が治るのならそれほど嬉しいことはない。彼を向かわせてみるか……。
「ケビン。ジャーメイノに行ってみるか?」
「え?」
「君の腕が治るのなら行ってみる価値はあるだろう? どうだ?」
私の提案に驚きの声を上げるケビン。少し考えるしぐさをした彼は頷く。
「腕が治るなら行ってみたいですが。いいんですか? 俺。いや、私で……元オルブス国民なのに」
「ははは、ケビン程信頼している部下は他にいない。そのケビンの力が強くなるのなら、少しの休暇くらい安いものだ」
ケビンの声に笑いながら答えると、彼は嬉しそうに右手を見つめる。
彼は国境沿いの村に住んでいた男だ。村にオルブスの兵が来て略奪を行い、家族を失った。復讐を心に秘めて私の部下となった。悲しくも強い決意と共に私の横にいてくれている。
「明日にでも出るといい。しかし、レイドレッドから来たとは言わないほうがいい。強者が探ってくるだろうからな。私よりも強い強者がいる。ブルース以外のな」
「え!? レイスロード様よりも強いものですか? 御冗談を」
「ははは、冗談ならばよかったんだがな。事実だ」
シャドウの記憶から感じた強さはブルースはもちろんのこと、私を大きく超える強さだった。
山二つ……いや。海、または空を二つといったところか。それほど大きな力を感じた。
私が使役するこちらの世界の魔物では太刀打ちできないだろう。【魔界】から魔物を連れてこなければ勝てない。そのためには大きな代償が必要だ。私の命……そんなもので使役ができれば安いものなのだが。
「そ、そんな奴がジャーメイノに?」
「ああ、滅んだと思っていた妖精を使役しているようだ。顔はよく見えなかったが少女のように見えた。もしくは顔が綺麗な少年か?」
「男か女かわからないほどの幼い子。というわけですね……。異常な化け物ですね」
彼が顔を青くさせて疑問を口にする。私がそれに答えると化け物と称する。
化け物……、昔は私もよく言われたものだが。言う方になると、これ以上お似合いの言葉はないな。
まさにあの子供は化け物そのものだった。シャドウの記憶では切られたことに気が付くのが遅れていた。鈍い魔物ではないシャドウが遅れを取っているというわけだ。
見えなくなっていたとしても殺気に敏感なシャドウが遅れを取る。化け物……これ以上の言葉があるとしたら【魔王】はたまた【勇者】と言わざる負えないな。
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「ぐっ。【シャドウ】が死んだ?」
私は【レイドレッド帝国】の死の王、【レイスロード】。
私の使役していたシャドウが死を迎えたことが伝わる。シャドウの死の苦しみが私の胸を締め付ける。一太刀で切り裂かれた?
シャドウはレベル30の魔物だ。影に潜むことが得意な暗殺に向いた魔物。オルブスではブルースとレナリスだけが強者だと思っていたが、見えない強者がいたようだ。
「シャドウの記憶が入ってくる。一瞬だが見えた少女。肩に妖精を乗せていたな」
シャドウが死に際に見えた世界。死を迎えるとマナを放出する。その影響で魔法で見えなくなっているはずの彼女たちが見えるようになったんだろう。まさか、そんな効果があるとは私も気が付かなかったが。なにせ、私の魔物がやられたのは初めてだからな。
「ちぃ!」
夜の自室に私の舌打ちだけがこだまする。
私は自分が強いと思っていた。しかし、今回の相手はかなりの強者だ。異常なまでの強さを持っている少女。
「妖精を使役するほどのものか。妖精など、昔に全滅したと言われていたんだがな。おかしな魔法を使うと聞いているが、それで強くなった少女か?」
【願いをかなえる】妖精の話を私は聞いたことがある。強くしてほしいと願った少年が勇者となった話だ。
眉唾物だと思っていたが、実際に見ると信じざる負えないな。
「計画が破綻したな。オルブス王国を無傷で手に入れることは叶わなかったか」
王妃、カテジナを操りブルース王を謀殺。第一王女に私の血を飲ませ、操る計画だったんだがな。
失敗してしまったのなら仕方ない。最初からやり直しだな。
「ケビン。ケビンはいるか?」
「はい。ここに」
私の人間の部下の筆頭であるケビンを呼びつける。彼は返事をして部屋に入ってくると跪く。
「オルブス王国のラッセルに書状を送る」
「はい。どのような? この間のような暗殺の依頼ですか?」
「いや、今回は違う。情報だ」
「情報?」
ケビンの質問に答えると彼は首を傾げる。
ラッセルは私の敵となってしまったと認識している。メリナ暗殺の失敗を告げて来た時に依頼料の倍額の金額を叩きつけてきたからな。シャドウが得た情報ではラッセルが脅迫されていたという報告を受けていた。
しかし、彼は商人だ。金を払えば情報を売ってくれるだろう。
「ついでに教会の方からも情報をいただきたいが」
「シャイン教会の聖女がジャーメイノにいるという話です。町の中では不思議なことが起こっているとか。古傷が治ったりしているみたいですよ」
教会の話をするとケビンが町で得た話をしてくる。彼も行きたい様子で話す。
「昔の傷が治るなら俺も治るかなって。たまに弓がうまく飛ばないことがあるので」
「確か手を怪我したんだったか?」
「はい。ダンジョンの魔物に」
ケビンはそう言って利き腕の右腕の手首をさする。彼の弓の腕は帝国一の腕前。
城壁から500メートル先の兵士の頭に乗せたリンゴを射抜けるほどの腕を持っている。彼の腕は教会の回復魔法でも治ったことはない。
古傷は治らないのが回復魔法。そのはずだが、聖女の魔法ならば治るかもしれない。彼の腕が治るのならそれほど嬉しいことはない。彼を向かわせてみるか……。
「ケビン。ジャーメイノに行ってみるか?」
「え?」
「君の腕が治るのなら行ってみる価値はあるだろう? どうだ?」
私の提案に驚きの声を上げるケビン。少し考えるしぐさをした彼は頷く。
「腕が治るなら行ってみたいですが。いいんですか? 俺。いや、私で……元オルブス国民なのに」
「ははは、ケビン程信頼している部下は他にいない。そのケビンの力が強くなるのなら、少しの休暇くらい安いものだ」
ケビンの声に笑いながら答えると、彼は嬉しそうに右手を見つめる。
彼は国境沿いの村に住んでいた男だ。村にオルブスの兵が来て略奪を行い、家族を失った。復讐を心に秘めて私の部下となった。悲しくも強い決意と共に私の横にいてくれている。
「明日にでも出るといい。しかし、レイドレッドから来たとは言わないほうがいい。強者が探ってくるだろうからな。私よりも強い強者がいる。ブルース以外のな」
「え!? レイスロード様よりも強いものですか? 御冗談を」
「ははは、冗談ならばよかったんだがな。事実だ」
シャドウの記憶から感じた強さはブルースはもちろんのこと、私を大きく超える強さだった。
山二つ……いや。海、または空を二つといったところか。それほど大きな力を感じた。
私が使役するこちらの世界の魔物では太刀打ちできないだろう。【魔界】から魔物を連れてこなければ勝てない。そのためには大きな代償が必要だ。私の命……そんなもので使役ができれば安いものなのだが。
「そ、そんな奴がジャーメイノに?」
「ああ、滅んだと思っていた妖精を使役しているようだ。顔はよく見えなかったが少女のように見えた。もしくは顔が綺麗な少年か?」
「男か女かわからないほどの幼い子。というわけですね……。異常な化け物ですね」
彼が顔を青くさせて疑問を口にする。私がそれに答えると化け物と称する。
化け物……、昔は私もよく言われたものだが。言う方になると、これ以上お似合いの言葉はないな。
まさにあの子供は化け物そのものだった。シャドウの記憶では切られたことに気が付くのが遅れていた。鈍い魔物ではないシャドウが遅れを取っているというわけだ。
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