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第2章 国
第64話 嬉しい知らせ
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「あれから一か月か~。ほんとファムはすげぇな~」
ブルース様達と友達になったあの日から一か月が経った。
ダンジョンでレベルと依頼を達成する日々を過ごしていたラッドが呟く。まじまじと私を見つめてくる彼は少し大きくなったような気がする。羨ましいな~。
「そんなことないよ。ラッドだって凄いじゃない。レベル15になったでしょ?」
「凄いね~……。レイブンは17レベルだぞ」
私が謙遜してラッドを褒めると彼はレイブンをジト目で見つめてため息のような声をもらす。
レイブンも体が少し立派になってレベルも上がった。二人ともオークを一人で倒すことができるようになってる。板についてきたってやつかな?
「ん、ラッドはまだまだ」
「うるせえよ。それは俺がよくわかってる。イーター! 次だ次! オーク出してくれ」
レイブンの挑発に苛立ちを見せて声を上げるラッド。すぐにオークが現れると大剣を振り上げて、一太刀で仕留めて見せてくる。大剣が似合うようになったな~。カッコいい。
「はぁ~、もっとスマートに倒せないかな……。ファムみたいにさ~。カッコいいんだよな。ファムの剣さばきは」
ラッドのことがカッコよく見えていると、彼が私をカッコいいといってくる。思わずドキッとしてしまった。どうしちゃったんだろう私。
「あ、時間だ!」
気を紛らわせるように声を上げる私。そろそろトトさんがお店を閉める時間だ。お片付けの手伝いをしなくちゃ。
「今日もトトさんの手伝いか?」
「うん! 二人はまだいるでしょ。油断しないでしっかりとやるんだよ」
「……ああ、わかってるよ!」
ラッドの質問に答えて声をかけると、彼が不貞腐れて声を上げる。なんだか反抗期の息子みたいな返事に私は首を傾げた。
レイブンがヤレヤレといった様子で首を横に振ってる。何か私やっちゃったのかな?
「ラッド、嫉妬してる」
「バ!? な、なに言ってんだよレイブン!」
「嫉妬?」
レイブンがニヤニヤしながら声を上げる。ラッドが勢いよく彼女の口を手でふさぐ。私は思わず呟くと、原因を理解した。
「ごめんねラッド。トトさんを取っちゃったね。甘えたいんでしょ? 今度、ラッドが手伝いに行くといいよ。譲ってあげる」
「「……はぁ?」」
ラッドはトトさんに甘えたいんだ。それなのに私が彼の手伝いをしてしまうから甘えられないんだね。
私がトトさんに甘えたいから気づかなかったな~。もっとしっかりと家族を見てあげないと。失敗失敗。
私の声にため息のような声をもらす二人を置いて、すぐにダンジョンを飛び出す。
そのままトトさんの屋台に着くとお片付けを手伝う。
「ファム。別に手伝わなくてもいいぞ。お前も仕事をしているんだから」
「やりたいからやってるの~。手伝わさせて」
「ははは、やりたいなら仕方ねえな~」
トトさんは気遣ってくれる。とても優しい人。ほんと、金一郎さんを思い出す。
彼を見ていると懐かしさで涙が出てくる。
「トト~。お前のところの娘はいい子だな~」
「ははは。そうなんだよ! ファムは世界一の娘だ」
他の屋台のおじさんの言葉に気を良くしたトトさん。嬉しそうに答えて私の頭を撫でてくれる。
「今帰ったぞ~」
「おかえりなさいあなた」
屋台の片づけを済ませて宿屋に帰ってくるとネネさんが迎えてくれる。二人はニッコリと微笑んで一緒にネネさんのお腹を見つめる。
あれ? もしかして? そう思ってネネさんを注意深く見ているとおなかをよくさすっているように見える。
「ネネさん」
「ん? どうしたんだいファム?」
厨房で食事の準備を始めたネネさんに声を上げる。私は彼女のお腹を見つめる。
「もしかして?」
私がそういうと、彼女はニッコリと微笑んでお腹をさすった。
「やっぱりファムには気づかれちゃったね。そうだよ。子供が出来たんだ」
「やっぱり! おめでとうございます!」
ネネさんの答えに私はとても嬉しくて声を上げる。
ネネさんとトトさんの子供。私達の弟ができるんだ! こんなに嬉しいことはない。
「ふふ、ファムは本当によく気づく子だね~。まあ、だから子供を作ろうと思ったんだけどね」
「え? 私?」
「そうだよ。お金にも余裕が出来て、ファムみたいな頼りになる子が近くにいる。こんなに心強いことはないのさ~」
ネネさんはそう言って椅子に座ると優しい表情で私を見つめてくる。
新たな命を作ろうと思ったのが私……ほんとに嬉しい。私がいたからお腹の子がいるってことでしょ? こんなに幸せでいいのかな?
「ははは。ファムもそんなに泣くんだね」
気が付くと私は涙を流してた。そのままネネさんに抱き着くと声を出して泣いてしまった。
嬉しい、彼女たちの力になれたことが本当に嬉しい。ありがとう、ネネさん、トトさん。
「ファム姉さんが泣いてる!」
「どうしたの?」
私の声を聞いて心配してくれるネーナちゃんとドンタ君。ドロップ君も心配で背中をさすってくれてる。
みんなもいい子に育ってくれてる。もっともっと頑張らないと、この子達が傷つくようなことがあっちゃダメ。後悔しないようにしっかりと守っていかないと。
ブルース様達と友達になったあの日から一か月が経った。
ダンジョンでレベルと依頼を達成する日々を過ごしていたラッドが呟く。まじまじと私を見つめてくる彼は少し大きくなったような気がする。羨ましいな~。
「そんなことないよ。ラッドだって凄いじゃない。レベル15になったでしょ?」
「凄いね~……。レイブンは17レベルだぞ」
私が謙遜してラッドを褒めると彼はレイブンをジト目で見つめてため息のような声をもらす。
レイブンも体が少し立派になってレベルも上がった。二人ともオークを一人で倒すことができるようになってる。板についてきたってやつかな?
「ん、ラッドはまだまだ」
「うるせえよ。それは俺がよくわかってる。イーター! 次だ次! オーク出してくれ」
レイブンの挑発に苛立ちを見せて声を上げるラッド。すぐにオークが現れると大剣を振り上げて、一太刀で仕留めて見せてくる。大剣が似合うようになったな~。カッコいい。
「はぁ~、もっとスマートに倒せないかな……。ファムみたいにさ~。カッコいいんだよな。ファムの剣さばきは」
ラッドのことがカッコよく見えていると、彼が私をカッコいいといってくる。思わずドキッとしてしまった。どうしちゃったんだろう私。
「あ、時間だ!」
気を紛らわせるように声を上げる私。そろそろトトさんがお店を閉める時間だ。お片付けの手伝いをしなくちゃ。
「今日もトトさんの手伝いか?」
「うん! 二人はまだいるでしょ。油断しないでしっかりとやるんだよ」
「……ああ、わかってるよ!」
ラッドの質問に答えて声をかけると、彼が不貞腐れて声を上げる。なんだか反抗期の息子みたいな返事に私は首を傾げた。
レイブンがヤレヤレといった様子で首を横に振ってる。何か私やっちゃったのかな?
「ラッド、嫉妬してる」
「バ!? な、なに言ってんだよレイブン!」
「嫉妬?」
レイブンがニヤニヤしながら声を上げる。ラッドが勢いよく彼女の口を手でふさぐ。私は思わず呟くと、原因を理解した。
「ごめんねラッド。トトさんを取っちゃったね。甘えたいんでしょ? 今度、ラッドが手伝いに行くといいよ。譲ってあげる」
「「……はぁ?」」
ラッドはトトさんに甘えたいんだ。それなのに私が彼の手伝いをしてしまうから甘えられないんだね。
私がトトさんに甘えたいから気づかなかったな~。もっとしっかりと家族を見てあげないと。失敗失敗。
私の声にため息のような声をもらす二人を置いて、すぐにダンジョンを飛び出す。
そのままトトさんの屋台に着くとお片付けを手伝う。
「ファム。別に手伝わなくてもいいぞ。お前も仕事をしているんだから」
「やりたいからやってるの~。手伝わさせて」
「ははは、やりたいなら仕方ねえな~」
トトさんは気遣ってくれる。とても優しい人。ほんと、金一郎さんを思い出す。
彼を見ていると懐かしさで涙が出てくる。
「トト~。お前のところの娘はいい子だな~」
「ははは。そうなんだよ! ファムは世界一の娘だ」
他の屋台のおじさんの言葉に気を良くしたトトさん。嬉しそうに答えて私の頭を撫でてくれる。
「今帰ったぞ~」
「おかえりなさいあなた」
屋台の片づけを済ませて宿屋に帰ってくるとネネさんが迎えてくれる。二人はニッコリと微笑んで一緒にネネさんのお腹を見つめる。
あれ? もしかして? そう思ってネネさんを注意深く見ているとおなかをよくさすっているように見える。
「ネネさん」
「ん? どうしたんだいファム?」
厨房で食事の準備を始めたネネさんに声を上げる。私は彼女のお腹を見つめる。
「もしかして?」
私がそういうと、彼女はニッコリと微笑んでお腹をさすった。
「やっぱりファムには気づかれちゃったね。そうだよ。子供が出来たんだ」
「やっぱり! おめでとうございます!」
ネネさんの答えに私はとても嬉しくて声を上げる。
ネネさんとトトさんの子供。私達の弟ができるんだ! こんなに嬉しいことはない。
「ふふ、ファムは本当によく気づく子だね~。まあ、だから子供を作ろうと思ったんだけどね」
「え? 私?」
「そうだよ。お金にも余裕が出来て、ファムみたいな頼りになる子が近くにいる。こんなに心強いことはないのさ~」
ネネさんはそう言って椅子に座ると優しい表情で私を見つめてくる。
新たな命を作ろうと思ったのが私……ほんとに嬉しい。私がいたからお腹の子がいるってことでしょ? こんなに幸せでいいのかな?
「ははは。ファムもそんなに泣くんだね」
気が付くと私は涙を流してた。そのままネネさんに抱き着くと声を出して泣いてしまった。
嬉しい、彼女たちの力になれたことが本当に嬉しい。ありがとう、ネネさん、トトさん。
「ファム姉さんが泣いてる!」
「どうしたの?」
私の声を聞いて心配してくれるネーナちゃんとドンタ君。ドロップ君も心配で背中をさすってくれてる。
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