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第2章 国
第71話 秘める思い
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「ふぁ~……。頑張るねラッドは」
「はっ! この!」
ダンジョンでずっと魔物と戦い続けるラッド。外は夜が深くなっていってる。ダンジョンの中は昼のまま。ほんとに便利な空間。
「ん~、ファム様……」
「レイブンはお眠ね」
座ってラッドが戦っているのを見ているとレイブンが私の膝を枕にしてくる。思わず頭を撫でてあげるとすぐに寝息をかき始める。
「あれ? レイブンさん寝ちゃったの?」
「ユマ君?」
膝枕で眠るレイブンを眺めているとユマ君がダンジョンにやってくる。
「イーターさん。オークをお願いします」
「了解」
すぐにユマ君もラッドの横で魔物と戦い始める。首を傾げてみていると彼は頬をポリポリと恥ずかしそうに口を開く。
「実はみんなが寝た後にダンジョンに入っていたんだ。洗濯の仕事は朝早いから強くなる時間が欲しくて」
彼はそう言ってオークに魔法を放つ。一発では倒せない様子だけど、すぐにオークが動かなくなる。
彼は努力を惜しまずにやってるんだね。偉いな~。
「はぁはぁ。負けてられねえな」
オークを一人で倒すユマ君に感化されたラッド。彼もオークを一人で倒して見せると大剣を力強く握りしめる。
「俺は魔法が使えない。剣気をマスターしないとダメだ。マスターできないとファムを守るどころか、横に並ぶこともできねえ」
力を込めながら呟くラッド。
剣気の気配はしてる、彼ならもう少しで使えるようになる。レナリスさんのおかげかな。見せてもらうのともらえないのとじゃ大きく違うだろうからね。
「はぁはぁ……。ちきしょう! 安定しねえな……。やっぱり短剣の方がいいのかな。ラッセルの言う通りなのか」
ラッドは大剣を力強く握るのをやめてブツブツと独り言を話す。ラッセルに何か言われたみたい。そういえば、ケビンのことを報告してもらったんだったっけ。あの時、急に自分が行くって言ったのよね。
「ラッドはラッセルが好きなの?」
「はぁ? 何言ってんだよファム」
「だって、行きたがったでしょ?」
疑問に思ったことを聞くと呆れたように答えるラッド。更に問いかけると彼はヤレヤレといった様子で首を横に振った。
「好きとか嫌いとかじゃねえよ。ちょっと聞きたかったことがあったからついでに報告にいきたかっただけだ」
「聞きたかったこと? それって私達にも言えないことなの?」
「……言えないってわけじゃねえけど。みんなの兄として後ろめたいんだ」
ラッドはそう言って大剣を地面に突き刺す。大剣をそのままに私の横に座ると、レイブンとユマ君を一瞥する。
「ラッセルさんを見た時にさ。なんだか知らないけど、この人の匂い知ってるってなったんだ。それで何度か会って見てたらさ。勝手に涙が出てきて。これっておかしいだろ? 病気なのかなって思ってネネさんに聞いたら『ラッドの両親はどこにいるの?』ってなってさ」
ラッドがつらつらと語る。ネネさんには話していたんだ。……少しショック。ラッドの教育者として失格かな。
「その【両親】って言葉を聞いてさ。ラッセルさんと再度あったらさ。あ、お父さんだ。ってなって……。それから貯めてた水が溢れるように涙がブアッて出てきて」
「……ラッセルは知ってるの?」
「いや……。言ってないよ。だって、俺を捨てた人なんだぜ? それに、知ってショックを感じてほしくないし。拒絶されるのが怖いんだ」
ラッドはうつむいたまま話すと立ち上がった。みんなに後ろめたいっていうのは親が居たってことなのね。
「ラッドはどうしたいの?」
「どうもしないよ。捨てたことに変わりはないし。今はネネさんとトトさんが俺達の親みたいなものだしさ。だから、生きるコツみたいなのを盗んでいこうと思って。ラッセルさんも苦労してリーダーになったみたいだから」
私の問いかけにラッドはそう言って大剣を握って素振りを始める。ラッセルの過去の話も聞いてるのね。もしかしたら彼も気が付いてる? そういえば、ラッセルも見たことがあるとかいっていたっけ?
まあ、彼も言い出せないのかも。親子だから似てしまうものだし。
「ラッド兄さん。僕たちは兄さんが幸せになってくれればいいと思ってるよ。親がいてもいなくても」
「俺もそうだよ。みんなが幸せになれればいいんだ。だから、別に言わなくても」
ユマ君の言葉に答えるラッド。
共に幸せを願ってる兄弟。血のつながりなんて関係ない。ここには本当の兄弟愛があるんだ。こんなに綺麗なものは他にない。
「僕の親もどこかで生きてるんだろうな~」
ユマ君がそう言って遠くを見つめる。彼らの数だけ親がいる。私の両親のように死んでいる可能性もあるけれどね。
「俺達が強くなって有名にでもなったら迎えに来るかもな。金に目がくらんで」
「兄さん。そんな想像やめてよ。もっと前向きな想像にして」
ラッドがニカッと笑って想像を口にするとユマ君は顔を青ざめさせた。
有名人になった子役の子みたいな話ね。急に知り合いが増えて、お金を狙ってくる。借金地獄まで追い込まれる話を聞いたことあるわ。私はそんなことにはさせないけどね。
「よし! みんなのためにももっと強くなってやるぞ!」
「僕も!」
二人はそう言ってレベル上げを再開させる。この日は二人とも1レベルを上げるのがやっとだった。どんどんレベルを上げるのが大変になってる。私とは大違い。
「はっ! この!」
ダンジョンでずっと魔物と戦い続けるラッド。外は夜が深くなっていってる。ダンジョンの中は昼のまま。ほんとに便利な空間。
「ん~、ファム様……」
「レイブンはお眠ね」
座ってラッドが戦っているのを見ているとレイブンが私の膝を枕にしてくる。思わず頭を撫でてあげるとすぐに寝息をかき始める。
「あれ? レイブンさん寝ちゃったの?」
「ユマ君?」
膝枕で眠るレイブンを眺めているとユマ君がダンジョンにやってくる。
「イーターさん。オークをお願いします」
「了解」
すぐにユマ君もラッドの横で魔物と戦い始める。首を傾げてみていると彼は頬をポリポリと恥ずかしそうに口を開く。
「実はみんなが寝た後にダンジョンに入っていたんだ。洗濯の仕事は朝早いから強くなる時間が欲しくて」
彼はそう言ってオークに魔法を放つ。一発では倒せない様子だけど、すぐにオークが動かなくなる。
彼は努力を惜しまずにやってるんだね。偉いな~。
「はぁはぁ。負けてられねえな」
オークを一人で倒すユマ君に感化されたラッド。彼もオークを一人で倒して見せると大剣を力強く握りしめる。
「俺は魔法が使えない。剣気をマスターしないとダメだ。マスターできないとファムを守るどころか、横に並ぶこともできねえ」
力を込めながら呟くラッド。
剣気の気配はしてる、彼ならもう少しで使えるようになる。レナリスさんのおかげかな。見せてもらうのともらえないのとじゃ大きく違うだろうからね。
「はぁはぁ……。ちきしょう! 安定しねえな……。やっぱり短剣の方がいいのかな。ラッセルの言う通りなのか」
ラッドは大剣を力強く握るのをやめてブツブツと独り言を話す。ラッセルに何か言われたみたい。そういえば、ケビンのことを報告してもらったんだったっけ。あの時、急に自分が行くって言ったのよね。
「ラッドはラッセルが好きなの?」
「はぁ? 何言ってんだよファム」
「だって、行きたがったでしょ?」
疑問に思ったことを聞くと呆れたように答えるラッド。更に問いかけると彼はヤレヤレといった様子で首を横に振った。
「好きとか嫌いとかじゃねえよ。ちょっと聞きたかったことがあったからついでに報告にいきたかっただけだ」
「聞きたかったこと? それって私達にも言えないことなの?」
「……言えないってわけじゃねえけど。みんなの兄として後ろめたいんだ」
ラッドはそう言って大剣を地面に突き刺す。大剣をそのままに私の横に座ると、レイブンとユマ君を一瞥する。
「ラッセルさんを見た時にさ。なんだか知らないけど、この人の匂い知ってるってなったんだ。それで何度か会って見てたらさ。勝手に涙が出てきて。これっておかしいだろ? 病気なのかなって思ってネネさんに聞いたら『ラッドの両親はどこにいるの?』ってなってさ」
ラッドがつらつらと語る。ネネさんには話していたんだ。……少しショック。ラッドの教育者として失格かな。
「その【両親】って言葉を聞いてさ。ラッセルさんと再度あったらさ。あ、お父さんだ。ってなって……。それから貯めてた水が溢れるように涙がブアッて出てきて」
「……ラッセルは知ってるの?」
「いや……。言ってないよ。だって、俺を捨てた人なんだぜ? それに、知ってショックを感じてほしくないし。拒絶されるのが怖いんだ」
ラッドはうつむいたまま話すと立ち上がった。みんなに後ろめたいっていうのは親が居たってことなのね。
「ラッドはどうしたいの?」
「どうもしないよ。捨てたことに変わりはないし。今はネネさんとトトさんが俺達の親みたいなものだしさ。だから、生きるコツみたいなのを盗んでいこうと思って。ラッセルさんも苦労してリーダーになったみたいだから」
私の問いかけにラッドはそう言って大剣を握って素振りを始める。ラッセルの過去の話も聞いてるのね。もしかしたら彼も気が付いてる? そういえば、ラッセルも見たことがあるとかいっていたっけ?
まあ、彼も言い出せないのかも。親子だから似てしまうものだし。
「ラッド兄さん。僕たちは兄さんが幸せになってくれればいいと思ってるよ。親がいてもいなくても」
「俺もそうだよ。みんなが幸せになれればいいんだ。だから、別に言わなくても」
ユマ君の言葉に答えるラッド。
共に幸せを願ってる兄弟。血のつながりなんて関係ない。ここには本当の兄弟愛があるんだ。こんなに綺麗なものは他にない。
「僕の親もどこかで生きてるんだろうな~」
ユマ君がそう言って遠くを見つめる。彼らの数だけ親がいる。私の両親のように死んでいる可能性もあるけれどね。
「俺達が強くなって有名にでもなったら迎えに来るかもな。金に目がくらんで」
「兄さん。そんな想像やめてよ。もっと前向きな想像にして」
ラッドがニカッと笑って想像を口にするとユマ君は顔を青ざめさせた。
有名人になった子役の子みたいな話ね。急に知り合いが増えて、お金を狙ってくる。借金地獄まで追い込まれる話を聞いたことあるわ。私はそんなことにはさせないけどね。
「よし! みんなのためにももっと強くなってやるぞ!」
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