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第一章 神様からの贈り物

第十二話 煙突掃除

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『お~、そういえば深くは教えていなかったの~、すまんすまん』

 フェイブルファイア様は申し訳なさそうに話してくれた。ギフトはとてもいいものなので凄い感謝してるんだけどね。

『では改めて、お主のギフトについて話そう』

 コホンと気を取り直してフェイブルファイア様が言葉をつづけた。

『前に言った速度、完成度、スキル、この三つが重要なんじゃ。アレクは完成度が10になっておるからステータスもそれなりに上がっておるぞ』

「10でそんなに?」

『そうじゃな。上限を知らないと凄いのかわからないじゃろう。上限は100といった所じゃ。十分の一でそれだけ強力な物になっておる』

 100が最強って事か~、スキルとかも同じなのかな?

「じゃあ、スキルとか速度も?」

『そうじゃよ。速度の方は単純に服の作成時間じゃ。そして、一番重要なスキルじゃな。スキルは3上がるごとに作成した服に付与できるスキルの量がひとつずつ上がるんじゃ。今、言っておった格闘士で説明すると、反射神経が鋭くなったり、関節などの見極めが強くなったりするんじゃ』

「強力ですね・・。でも?」

 それだけで路地裏のチンピラを圧倒したのは驚きなんだけどな。

『ふむ、なるほどの~、少しアレクのギフトは強力になっているかもしれんな。今付けている格闘士の手袋を見てみたんじゃが、付けておるスキルがレベルマックスになっておる。達人の域じゃな』

「ええ~」

『フォッフォッフォ、まあ、強い分にはいいじゃろう。アレクならばうまく使ってくれるじゃろ? それにお主の両親には世話になったからの、恩返しという奴じゃよ』

「・・・」

 僕の両親にフェイブルファイア様は恩があるって前にも言っていたっけ、どんな事をすればこんなお礼をされるんだろうか? 気になるな~。

「僕のお父さんやお母さんはどんなことをしたんですか?」

『・・・おっと~、次の迷える子羊が別の町で呼んで居る。アレクや、お主の両親はとてもいい者達じゃった。それだけで儂はお主の味方になった。それでいいんじゃよ。深く考えずに正義に生きておくれ。また、何か困ったことがあればまた来るんじゃぞ~~・・・』

「・・誤魔化すように行っちゃった・・・」

 銅像はそのままだけど、声だけで何処かへ行ってしまったのが分かった。僕の両親はどんな良い事をしたんだろうか? 誤魔化さないといけないような凄い事なのかな?

「どうだった?」

「理由とかもろもろ分かったかな~」

「よかったね!」

 色々と腑に落ちないけれど、僕のこの力はお父さんお母さんのおかげって事は分かった。二人の顔に泥を塗らないように頑張らないといけないな~。

「じゃあ、依頼を達成してギルドに行こうか」

「うん!」

 シーナの手を取って僕らはシスターにお辞儀をして教会を後にした。






 宿屋の前に帰ってきた。帰ってくるときも冒険者ギルドの前を通ったんだけど、何も起こらなかった。やっぱり杞憂に終わったようです。
 
 ウサギの宿屋の隣、煙突が目立つ家の扉を叩く。

「ごめんくださ~い」

 全体的に茶色いお店の鍛冶屋さん。看板にはハンマーと盾が重なった物が描かれている。武器はやっていないのかな?

「なになに~?」

「あ・・」

 扉越しで中を覗いていると僕らの腰くらいの男の子がトコトコと歩いてきた。僕らを輝く目で見てきています。

「冒険者ギルドの依頼できたんだけど・・」

「あ~、煙突掃除だね~。上がって上がって~」

 僕の言葉を聞いて少年はブンブンと腕を回して入るように促してきた。僕らは苦笑いしつつ入っていく。少年の両親はいないのだろうか?

「お父さんかお母さんはいないの?」

「ん? あれ~、もしかして僕が子供だと思った?」

「え?」

 僕とシーナは顔を見合った。圧倒的少年感を醸し出している少年を見て、子供じゃないと思う人がいるのだろうか? 

「という事は君たち田舎者だな~。なるほどなるほど、それで僕の依頼を取ったわけね~」

 少年は何か納得したように頷いて歩いて行く。煙突の下、カマドに着くと少年はぴょんと飛んでカマドのふっくらした部分に着地をして僕らを見下ろす。

「おいらの種族はコロボックル、名前はソルトさ、少年少女!」

「「コロボックル?」」

 僕とシーナは首を傾げた。コロボックルってなんだろう?

「ありゃりゃ、こんなにカッコつけたのに知らないのね・・・、まあいいや」

 ソルトと名乗った少年はガクンと肩を落としてカマドから降りた。残念そうにしている姿はやはり子供といった感じ。

「この町には色々な種族の人がいるんだよ。冒険者ギルドにはそんなにいないかもしれないけれどね」

「広場とか通ったけどいなかったよ?」

「う~んそれは偶々か、人族と変わらない格好していたか、だね」

「ああ~」

 ソルト君のように少年みたいな見た目の人とかいたらわからないね、確かに。

「その様子じゃ、獣人とかも見たことない感じだね」

「獣人?」

「そうそう、色々な獣の顔をした人達だよ。ハーフは人に近いんだけどね」

 この町には色々な種族がいたんだな~。そう言えば、冒険者ギルドの前とか通った時に耳の尖った人もいたな~。もしかしてそれってエルフさんだったのかな?

「雑談は以上! 依頼の煙突掃除をしてくれるかな?」

「あ~すいません。すぐに掃除していきますね」

 雑談を楽しんでしまいました。僕とシーナは焦りながらアイテムバッグから布を取り出してゴシゴシゴシゴシ。

「こっちにブラシもあるからね・・・えっと? いらない感じだね」

「すぐに終わります[ホーリー]」

「・・・」

 シーナと僕は水を入れた桶に聖なる波動の魔法を入れる。[ホーリー]は通常ユラユラ揺れる光の玉を生み出すもので松明代わりにしたり、その玉を投げたりして攻撃に使うんだけど、村では水に入れて掃除に使ったりしていたんだ。聖水になった水は汚れを落としやすいんです。

「そんな使い方があったんだね~。田舎って凄いな~」

「田舎とか関係ないですよ」

 感心していたソルト君に苦笑いで答えた。田舎田舎ってちょくちょく揶揄ってくるな~。

「じゃあブラシお借りしますね」

「うん! どうぞ」

 煙突を登って上から掃除しようとブラシを手に取って上昇、そこそこ登りやすい煙突の中、僕はスイスイ登っていく。

「アレク大丈夫?」

「ああ、登りやすいよ」

 頂上が見えてきてシーナの声が下から聞こえてくる。ホーリーの光でシーナの顔が見えて答えるとシーナは笑っていた。

「わ~、高いな~」

 頂上に着いて周りを見渡すとレンガ造りの街並みが見える。上から見る街並みは整列されていて、どの道も広場に集まっていくのが見える。

「アレク!」

「シーナ」

 街並みを見ているとシーナが煙突を登ってきた。手を貸して引き上げてあげると自然と抱き合った。柔らかな香りが鼻をくすぐっていく。

「ありがと・・」

 シーナは耳元でお礼を言ってきた、こそばゆい。

「綺麗な街並み・・・」

「そうだね」

「私達、村を出てきたんだね」

 シーナは街並みに目を奪われながらつぶやいた。町を見て、感慨深くなったのかもしれない。

 シーナは少し涙ぐんでいる。町の風景を見て実感したんだろうな、自分は村を離れたんだって。
 僕も街並みを見て、少しだけ寂しさみたいなものを感じた、故郷は遠い所にあるんだよな~。

「じゃあ、やろうか」

「うん!」

 僕らは気を取り直して煙突を掃除していった。

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