社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 新しき世界

第22話 あらがう魔物たち

「あれだけの攻撃で壊れない……」

 ドラゴンゾンビの牙や爪を受けても傷一つつかない見えない壁。ドラゴンゾンビが動いてから丸一日程たっているというのに。

「マモルさん! ドラゴンゾンビが!」

 ドラゴンゾンビの体が崩れて行く。腐肉の塊が動いているだけでも驚きでしたが限界が来たようですね。

『無念。自由なる世界へ行きたかった』

「「え?」」

 ドラゴンゾンビの最後の声が聞こえてくる。やはり自由を求めてやってきた魔物達の成仏しきれない心がドラゴンゾンビを作ったようです。

「アンデッドが喋るなんて……」

「普通ではないんですか?」

「聞いたことはないです。人も死体を放置すると動き出すこともあると聞いたことがありましたけど、喋るなんて」

 ドラゴンゾンビはそれだけ未練が強かったのでしょう。そんな強い気持ちをもってしても越えられない壁、流石は神の作りし壁ですね。……神?

「少し試してみましょうか。シーサーペント、壁に近づいてください」

「キュン!」

 壁に近づいて触れる。そして、半神となった時に得た力、【言葉】を唱える。

「【開け】」

 シュウという空気が抜けるような音が聞こえ、見えない壁が私達の周囲だけなくなっていく。先ほどまでの空気と違う香りが入ってくる、この場合は出て行るが正解でしょうか。

「今のうちに入りましょう」

「キュン!」

 シーサーペントに声をあげると素直に見えない壁をくぐる。ほかの魔物を通すと大変なことになりそうなので急いだのですが、見渡す限りいませんね。

「えっと、【閉じろ】でいいんでしょうかね」

「マモルさんってっほんとに凄いですね……」

 私の声に反応するように見えない壁が閉じていく。ヴィスさんが呆れながらも褒めてくれました。呆れなくてもいいと思うんですけどね。

「陸地は……見えませんが何か見えますね」

 壁から陸地が見える程近いわけもない。ケセルセスさんが言っていたゲートが見えます、海に浮かぶ鳥居のようですね。結界の中にあるということは結界を私が通れることを知っていたようですね。シーサーペントの背に乗って通りますか。

「キュンキュン!」

「あ~はいはい。お肉ですね」

「キュ~ン!」

 シーサーペントにお肉を渡す。美味しそうに食べるもので私達もお腹が空いてきてしまいました。

「マモルさん……」

「分かっています。お腹が空いたんでしょう。ベヘモスも」

「キャン!」

 二人にもお肉やパンを手渡す。美味しそうに平らげていく。ジェネラルオークの肉は普通のオークよりも美味しいもの、ついついおかわりをしてしまう。太ってしまいますね~。
 シーサーペントの背に乗ってゲートをくぐる。すると一瞬で景色が変わる……と思ったら。

「陸地は見えませんね。どのくらいかかるのかなマモルさん?」

「中央大陸のどこかへ着くとケセルセスさんは言っていたんですけどね。死の大陸よりは近いと思うのですが」

 ゲートをくぐったのに下は海です。仕方ないのでシーサーペントに乗って海の旅ですね。まあ、ランダムと言っていたのでこういうこともあるのでしょう。
 壁は円の形になっているはず、そう考えると内陸の方が近くなる。絶対とは言い切れないですがそうだと思うんですよね~。
 不確かな推測をしながら毎日海を進んでいく。
 一日一日を数えるのが億劫になってくる。
 そんな毎日を送っているとやっと陸地が見えてきた。

「木? あれって木って言うんですよね?」

「そうですよ! 木です! やっと陸地が見えてきましたね~。木が沢山で森ですよ~」

 ヴィスさんは死の大陸で生まれたので木を見たことないようですね。嬉しそうに話す彼につられて私も嬉しくて声が弾んでしまいます。

「髭もそっておきましょう。【綺麗にしてください】。ふう、本当に便利な魔法ですね」

 ヴィスさんしか見せる相手もいないので髭は伸びっぱなしでした。綺麗にしてくださいと魔法を唱えるとさっぱりと髭や服が綺麗になって行く。みんなにもかけてあげるとさっぱりしました。ヴィスさんはそんなに髭は生えない子みたいだったから服だけで充分ですね。
 しかし、本当にこの魔法は便利、来たばかりの時はナイフで剃っていて怪我もしましたが今ではそんなものも必要ありません。
 これだけは半神になって良かったところですね。

「森が凄い大陸ですね……」

「マモルさんが暮らしていた土地はこんなに木はないの?」

「あるにはあるのですがここまでではありませんでしたよ」

 見える陸地すべてが木に覆われている大地。それだけで私がいた土地とは違うのが分かります。そもそも海は近くにありませんでしたからすぐには帰れないでしょうね。

「とにかく、情報収集しなくちゃいけませんね。おっと、シーサーペントは中に入れないでしょうから海で待っていてください」

「キュン?」

「無理なんですよ。魔物と言うだけで皆さん目の色を変えるはずです。危険だとね」

 シーサーペントはベヘモスと違い体の大きさを変えられない。町に入ることは難しいでしょう。
 そう声をかけると首を可愛らしく傾げて私達を陸地に送り届けてくれる。

「では待っていてくださいね」

「キュ~ン!」

「「え?」」

 シーサーペントに待ってもらおうと振り返ると謎の光を作り出して小さくなっていくシーサーペント。ベヘモスもそうですが小さくなるのは魔物達の常識なんでしょうか?

「キュン!」

「これなら連れていけますねマモルさん」

「そ、そうですね」

 ヴィスさんの首に乗るシーサーペント。ベヘモスも抱き上げると先に歩いていくヴィスさん、私は少し呆れてしまいました。私も大概ですが彼らも規格外ですね。

「止まれ! 褐色の人族と黄色の人族か。どこから来た」

 森の中に突如として現れた城門、それを守る兵士さんが槍を向けてきて声をあげる。
 森が生い茂っていると思ったらエルフさん達の国でしたか。蔑むような視線を向けてくるエルフの兵士さん達。この世界のエルフさんは人族を嫌っている様子ですね。それにしてはギリルさんのご友人は私を欲しがっていましたけど。やはり貴重な能力だけで欲しがったのかもしれませんね。

「おかしな動物を連れているな。それは魔物じゃないのか?」

「大人しいから大丈夫ですよ。それよりも町に入れてもらえませんか?」

 警戒する兵士さんに優しく声をかける。一応、冒険者カードも見せると渋々といった様子で入れてくれました。

「面倒を起こすなよ人族」

「はい。大丈夫ですよ。ご迷惑はおかけしません」

 門をくぐると大きな切り株で出来た家々が街並みを作っています。おとぎ話に出てきそうな街並みですね。

「ヒカールス名物のきのこ焼きだよ~。買っておくれ~」

 カシムさんの出店のような声が聞こえてきます。ヒカールスという国のようですね。久しぶりのお肉以外の食べ物です。色々と買い食いをしながら情報を仕入れましょうかね。

 
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