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第一章
第9話 外へ
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「今日も頑張るぞ~」
剣士の服をプレゼントして次の日。
ニカに起こされてすぐにギルドへと向かった。朝ごはんを食べている時も剣士の服を着てて嬉しそうにしてた。こんなに喜ばれると嬉しいな。
宿屋から出てぴょんぴょん跳ねて意気込みを話すニカ。今日は汚れないところに行ったほうが良いかな。
「鉄の冒険者証か」
登録をしたときに受け取ったネックレス。これで身分を証明できるわけだな。この町に生まれない僕もこれで町の出入りが出来るわけだ。異世界言ったら冒険者ギルドって言うのは当たってるな。
「僕も早くほしいな」
「すぐだよ」
「は~、早く大人になりたいな~」
はは、子供は大人になりたくて、大人は子供に戻りたい。一生終わらない苦悩だな。
ニカと話しながらギルドに到着。すると昨日と違って人がいて視線が刺さる。
「子供を使ってバルバトスさんに目をつけてもらってるやつが来たぞ」
陰口が聞こえてくる。やっぱり、有名人に注目されるとこういうことになるんだよな。この世界も結構分かりやすい。
気にせずに受付に歩き出すとニカがいないことに気が付く。周りをキョロキョロ見るとさっき陰口を言って来た男の元にずかずかと歩いていくのが見えた。
「ハヤト兄ちゃんの悪口言うな!」
ニカは大きな声で言い放つ。すかさず僕が男との間に入って愛想笑いを浮かべる。
「てめ~、恥ずかしくないのか?」
「ははは、依頼を受けないといけないのでそれでは~」
愛想笑いをうかべながらニカの手を引っ張って受付に向かう。ヴェインさんが苦笑いで迎えてくれた。
「ハヤトさん。あんまり気にしなくていいよ」
「あっ、はい。大丈夫ですよ。それよりもニカ」
「え? 僕?」
ニカと共に受付の椅子に座ってヴェインに答えるとニカに振り向いた。
「陰口を聞こえるように言ってくるやつは言い返されることを望んでいるやつだ。陰口を言うようなやつの望みをかなえてやる必要はない。そう思わないか?」
「う、うん」
「はは、でも、嬉しいよ。ニカに認めてもらえてるみたいでさ」
忠告して頭をガシガシ撫でる。頬を赤く染めるニカは恥ずかしそうにしてるな。
「ニカは今日カッコいい服着てるな」
「うん! ハヤト兄ちゃんがくれたんだ。初依頼達成のお祝いってことで」
「そうなのか~。良かったな」
ヴェインに褒められると嬉しそうに報告するニカ。ヴェインも嬉しそうに褒めるな。子供好きなのかな?
「さあ、今日はどんな依頼にする? 下水はやめるよな」
「そうそう、下水はいけないかな」
ヴェインが怪訝な表情でダメだというと肯定する。彼も僕と同じように綺麗な服になったのに下水はないよね。
「え~。下水もいいと思うけどな~」
二人で同意しているとニカが残念そうに声をもらした。まあ、初めての場所って特別だからな。行きたくなるのもわかる気はする。
「……まあ、無難に町からでてすぐの森の依頼がいいかもな。ゴブリンを五匹だ」
「ゴブリン……」
ファンタジー物の定番の魔物だな。やっぱりこっちのゴブリンも緑の小人なのかな?
「緑の小人で大体木のこん棒を持ってる魔物だ。普通のやつは頭悪いからな。勝手に突っ込んできて壁に頭ぶつけて死ぬやつもいるとか」
ヴェインの話を聞いて、やっぱりこの世界のゴブリンも最弱なようだ。それならやっても大丈夫かな。
「じゃあ、それで」
「よし。決まりだな」
ヴェインが依頼の羊皮紙を手渡してくる。予め用意してくれてたのかもしれないな。
「ここは孤児院じゃねえぞ!」
ギルドから出ようとするとそんな声がかけられた。はぁ、バルバトスって言う人はまだいないみたいだな。あの人がいればこんな声もかけられないんだろうけど。
「もう! あの人たちなんなんだろう。ハヤト兄ちゃんに嫉妬してるのかな?」
「ははは、そうかもね」
ニカの指摘に笑って答える。まあ、言いたくなるのも仕方ないのかな。僕は気になる人がいても言わないけどね。
「ハヤト兄ちゃんも言われてばかりじゃダメだよ。舐められちゃう」
「僕はいいよ。言いたい人には言わせておくさ」
「ん~。お兄ちゃんは優しいな~」
ニカは笑いながら話すと僕の手を取ってブンブン振り回す。そのまま、町の出口に向かうもんだから横いくみんなにクスクス笑われてしまった。まあ、ニカが楽しそうだからいいんだけどね。
町の出口に着くと町から外に出るのは調べられないみたいで自由に出れる。外からの馬車や人はみんな列を作って、入るための順番待ちをしてる。
「町の外初めて! ワクワク」
町の外に出て目的の森を見る。北門から出てすぐに森があるって言っていたけど、結構距離がある。街道をまっすぐ進んだ先に見えるな。
「ん、魔物が見えるな」
「狼の魔物かな?」
街道を少し外れた草原に狼の魔物が見える。寝そべっているから気づかれないと思うけど、そのうちに倒すのも手かな?
「ハヤト兄ちゃんやっちゃう?」
「そうだな~」
「あっ」
「ん?」
ニカが戦いたそうに言うから考え込んでいるとニカが狼のいる方向を見て声をあげた。僕も振り返ってみると馬に乗った白銀の騎士が狼を退治し始めていた。
「これで全部か。弱いな」
馬に乗ったまま槍を操って狼を屠っていく。最後の一匹を蹴散らすと僕らの方向へと歩いてきた。
「やあ、エンプレスの町の冒険者かな?」
「はい! 僕はまだですけど」
「ははは、そうか。まだ登録できない年齢ってことね」
フルフェイスの白銀の騎士が声をかけてくる。ニカが答えてくれる。そうか、この町はエンプレスって言うのか。そういえば聞いてなかったな。
「じゃあ、そっちのお兄さんが冒険者かな?」
「あ、はい」
白銀の騎士はそういって馬から降りて近づいてくる。兜の中の表情は読めないけど、楽しそうな感じに顔を左右に振っている。
「ふむふむ、中々強そうかな。まあ、これからって感じか」
「え?」
「ううん。こっちの話~。これから私もこのエンプレスの町で冒険者をするから、よろしくね」
白銀の騎士はそういって馬に乗ると町への列に並んだ。声からして女性っぽいな。
「強そうなお姉さんだったね」
「うん。たぶん、僕よりもはるかに強いと思う」
僕よりはなんて言えるほどレベルも上がってないけどね。ニカに答えた自分に少し恥ずかしさを覚えて歩き出す。さあ、外の魔物はどんな感じだろうか? ニカじゃないけど、ワクワクが止まらない。
剣士の服をプレゼントして次の日。
ニカに起こされてすぐにギルドへと向かった。朝ごはんを食べている時も剣士の服を着てて嬉しそうにしてた。こんなに喜ばれると嬉しいな。
宿屋から出てぴょんぴょん跳ねて意気込みを話すニカ。今日は汚れないところに行ったほうが良いかな。
「鉄の冒険者証か」
登録をしたときに受け取ったネックレス。これで身分を証明できるわけだな。この町に生まれない僕もこれで町の出入りが出来るわけだ。異世界言ったら冒険者ギルドって言うのは当たってるな。
「僕も早くほしいな」
「すぐだよ」
「は~、早く大人になりたいな~」
はは、子供は大人になりたくて、大人は子供に戻りたい。一生終わらない苦悩だな。
ニカと話しながらギルドに到着。すると昨日と違って人がいて視線が刺さる。
「子供を使ってバルバトスさんに目をつけてもらってるやつが来たぞ」
陰口が聞こえてくる。やっぱり、有名人に注目されるとこういうことになるんだよな。この世界も結構分かりやすい。
気にせずに受付に歩き出すとニカがいないことに気が付く。周りをキョロキョロ見るとさっき陰口を言って来た男の元にずかずかと歩いていくのが見えた。
「ハヤト兄ちゃんの悪口言うな!」
ニカは大きな声で言い放つ。すかさず僕が男との間に入って愛想笑いを浮かべる。
「てめ~、恥ずかしくないのか?」
「ははは、依頼を受けないといけないのでそれでは~」
愛想笑いをうかべながらニカの手を引っ張って受付に向かう。ヴェインさんが苦笑いで迎えてくれた。
「ハヤトさん。あんまり気にしなくていいよ」
「あっ、はい。大丈夫ですよ。それよりもニカ」
「え? 僕?」
ニカと共に受付の椅子に座ってヴェインに答えるとニカに振り向いた。
「陰口を聞こえるように言ってくるやつは言い返されることを望んでいるやつだ。陰口を言うようなやつの望みをかなえてやる必要はない。そう思わないか?」
「う、うん」
「はは、でも、嬉しいよ。ニカに認めてもらえてるみたいでさ」
忠告して頭をガシガシ撫でる。頬を赤く染めるニカは恥ずかしそうにしてるな。
「ニカは今日カッコいい服着てるな」
「うん! ハヤト兄ちゃんがくれたんだ。初依頼達成のお祝いってことで」
「そうなのか~。良かったな」
ヴェインに褒められると嬉しそうに報告するニカ。ヴェインも嬉しそうに褒めるな。子供好きなのかな?
「さあ、今日はどんな依頼にする? 下水はやめるよな」
「そうそう、下水はいけないかな」
ヴェインが怪訝な表情でダメだというと肯定する。彼も僕と同じように綺麗な服になったのに下水はないよね。
「え~。下水もいいと思うけどな~」
二人で同意しているとニカが残念そうに声をもらした。まあ、初めての場所って特別だからな。行きたくなるのもわかる気はする。
「……まあ、無難に町からでてすぐの森の依頼がいいかもな。ゴブリンを五匹だ」
「ゴブリン……」
ファンタジー物の定番の魔物だな。やっぱりこっちのゴブリンも緑の小人なのかな?
「緑の小人で大体木のこん棒を持ってる魔物だ。普通のやつは頭悪いからな。勝手に突っ込んできて壁に頭ぶつけて死ぬやつもいるとか」
ヴェインの話を聞いて、やっぱりこの世界のゴブリンも最弱なようだ。それならやっても大丈夫かな。
「じゃあ、それで」
「よし。決まりだな」
ヴェインが依頼の羊皮紙を手渡してくる。予め用意してくれてたのかもしれないな。
「ここは孤児院じゃねえぞ!」
ギルドから出ようとするとそんな声がかけられた。はぁ、バルバトスって言う人はまだいないみたいだな。あの人がいればこんな声もかけられないんだろうけど。
「もう! あの人たちなんなんだろう。ハヤト兄ちゃんに嫉妬してるのかな?」
「ははは、そうかもね」
ニカの指摘に笑って答える。まあ、言いたくなるのも仕方ないのかな。僕は気になる人がいても言わないけどね。
「ハヤト兄ちゃんも言われてばかりじゃダメだよ。舐められちゃう」
「僕はいいよ。言いたい人には言わせておくさ」
「ん~。お兄ちゃんは優しいな~」
ニカは笑いながら話すと僕の手を取ってブンブン振り回す。そのまま、町の出口に向かうもんだから横いくみんなにクスクス笑われてしまった。まあ、ニカが楽しそうだからいいんだけどね。
町の出口に着くと町から外に出るのは調べられないみたいで自由に出れる。外からの馬車や人はみんな列を作って、入るための順番待ちをしてる。
「町の外初めて! ワクワク」
町の外に出て目的の森を見る。北門から出てすぐに森があるって言っていたけど、結構距離がある。街道をまっすぐ進んだ先に見えるな。
「ん、魔物が見えるな」
「狼の魔物かな?」
街道を少し外れた草原に狼の魔物が見える。寝そべっているから気づかれないと思うけど、そのうちに倒すのも手かな?
「ハヤト兄ちゃんやっちゃう?」
「そうだな~」
「あっ」
「ん?」
ニカが戦いたそうに言うから考え込んでいるとニカが狼のいる方向を見て声をあげた。僕も振り返ってみると馬に乗った白銀の騎士が狼を退治し始めていた。
「これで全部か。弱いな」
馬に乗ったまま槍を操って狼を屠っていく。最後の一匹を蹴散らすと僕らの方向へと歩いてきた。
「やあ、エンプレスの町の冒険者かな?」
「はい! 僕はまだですけど」
「ははは、そうか。まだ登録できない年齢ってことね」
フルフェイスの白銀の騎士が声をかけてくる。ニカが答えてくれる。そうか、この町はエンプレスって言うのか。そういえば聞いてなかったな。
「じゃあ、そっちのお兄さんが冒険者かな?」
「あ、はい」
白銀の騎士はそういって馬から降りて近づいてくる。兜の中の表情は読めないけど、楽しそうな感じに顔を左右に振っている。
「ふむふむ、中々強そうかな。まあ、これからって感じか」
「え?」
「ううん。こっちの話~。これから私もこのエンプレスの町で冒険者をするから、よろしくね」
白銀の騎士はそういって馬に乗ると町への列に並んだ。声からして女性っぽいな。
「強そうなお姉さんだったね」
「うん。たぶん、僕よりもはるかに強いと思う」
僕よりはなんて言えるほどレベルも上がってないけどね。ニカに答えた自分に少し恥ずかしさを覚えて歩き出す。さあ、外の魔物はどんな感じだろうか? ニカじゃないけど、ワクワクが止まらない。
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