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第一章
第10話 レベルアップ
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「ゴブリンゴブリン。どこですか~」
森に入ってニカが楽しそうに歌ってる。
「ニカ、そろそろ警戒していこう」
「は~い」
森深くまで入ってきたところでニカに声をかける。流石にそろそろ警戒しないといけないだろう。
「いないな~」
「いないな~……ん? ニカ!?」
「え?」
少し歩いているとニカが声をもらす。すると木の影がゆらっと揺れる。その影がなんだかわからなかったけど、何かがニカに向かって飛んできたものだから、ニカを庇うと背中に鈍い痛みが走った。
ゴトッと地面に落ちるものを見るとこん棒が転がっていた。
「ハヤト兄ちゃん!」
「大丈夫。全然痛くないよ。それよりも剣を構えて」
「はい!」
心配するニカに忠告すると剣を抜いて返事をする。こん棒の飛んできた方向を見据えていると木陰から緑の小人がよだれを垂らして現れた。
「ゴブリン!」
想っていた通りのゴブリンの姿に思わず名前を叫んでしまう。
ゴブリンはその声にびっくりして後ろに倒れてしりもちをつく。圧倒的弱者感、これは余裕っぽいな。
「隙あり!」
「ギャ!?」
しりもちをついている隙にニカが切りかかる。ニカの剣が何の抵抗もなくゴブリンの頭を両断。ドロップアイテムを残して消えていった。
「やった~!」
「ニカ凄いな~」
「えへへ」
喜ぶニカの頭を撫でて褒める。嬉しそうに目を細めてる。
ニカは結構ネズミで鍛えられたみたいで難なく戦えてるな。僕も見習わないとな。
「ハヤト兄ちゃん! 次が来たよ!」
ニカが視線を向ける先にゴブリンが5匹も現れた。全員こん棒を持っていてやる気満々だ。
「僕が先に行く。援護して」
「はい!」
ニカからもらった短剣と更に買い足した剣を両手に持って切り込む。先頭のゴブリンを切り伏せると続けて二匹目も屠る。
ニカも続いて切り込んでくると三匹、四匹と難なく絶命させていく。
「これで終わりだ!」
生き残った最後の一匹もこん棒ごと切り伏せ屠ると他と同じようにドロップアイテムを落として消えていく。
そして、声が聞こえてきた。
『レベルが上がりました』
この世界ではパーティーシステムがあるのかわからないけど、ニカの倒した魔物でも経験値をもらっている気がする。そうしないとスライムとゴブリン三匹の経験値でレベルが上がったことになるから簡単すぎると思う。
4レベルになったからと言って特別変わったことはないみたいだ。異世界商店みたいなスキルが手に入ると嬉しいんだけどな。
『二刀流を習得しました』
おっと、そうか、二刀流で攻撃したのはこれが初めてだった。これで更に貴重なスキルが手に入ったな。
スライムみたいな魔法しか効かない魔物と会うこともあるだろうから魔法も覚えたいところだ。
ニカのお父さんが魔法使いだったとか言っていたけど、魔導書みたいなものはないのかな? あればそれで魔法を覚えたいんだけどな。
「ゴブリンさんも弱かったね」
「ん~、そうだね。まあ、ニカが強いってことかもよ」
「えへへ、そうかな?」
ニカの呟きに同意して褒めると嬉しそうに照れてる。ネズミみたいに逃げの一手じゃないのは恐怖だったけど、動きも遅いし先手を取れば余裕。これなら他の魔物も行けるかもな。
そんな考えを巡らしていると変な匂いが立ち込めてきた。
「ん? 変な匂いだな。路地や下水とはまた違った匂いだ」
路地とかのゴミの匂いとは違った匂い。森には似つかわしくない匂いに鼻を摘まむ。ニカも真似して摘まんでる。僕と違うのは楽しそうってところだ。
「オォォォォ」
「な、なんだ!」
変な唸り声が聞こえてきて声のする方に向かうと真っ黒な人が声をあげていた。
「グール!?」
「ええ、あれが?」
ニカの声に気付かされる。ゾンビと同じくらい有名な魔物の一種だ。人の死体を放置すると出来るってゲームの本に書いてあった。この世界もそんな感じかな?
「この近くにお墓はないと思うから、流れてきたのかな?」
ニカが呟くと僕は考え込む。
やっぱり、人の死体からグールになる傾向なのかもしれない。でも、お墓に入れても出てくるんじゃ防ぎようがないよな~。
「お墓は土葬?」
「え? うん。普通そうでしょ?」
「そ、そっか」
疑問を投げかけるとさも当たり前といった様子に答えてくれた。ということは特別お祈りをしたりとかはしていないみたいだな。そりゃ、ゾンビやグールになるな。
「お兄ちゃんどうする? グールはゾンビの上位種だから結構強いと思うよ」
「グールのが強いのか……。噛まれたら僕らもあれになるのかな?」
地球の知識ではだいたいそうだ。噛まれたら感染してゾンビになる。こっちではどうなのかな。かなり怖いんですけど。
「僕らがグールに? なにそれ、聞いたことないよ。毒にはなるらしいけど」
「そ、そうなのか。よかった」
「ハヤト兄ちゃん変なの~。噛まれて魔物の仲間になってたら今頃世界はグールだらけになってると思うよ」
ふむ、ニカに笑われてしまった。そうか、あのゲームの世界はおかしな世界なんだな。なんだかホッとしたぞ。
「じゃあ、毒消しポーションを準備して」
「やるんだね!」
「ああ、一匹なら試す価値はある」
早くレベル上げたいし、グールの実力を見ることもこの後のことを考えると必要だろう。魔物の1ランク上の強さを見せてもらおう。
「はっ!」
こちらに気づいたグールが近づいてくるとニカが剣を振り下ろす。
ゾンビ特有のゆっくりとした動きなので簡単に剣が当たった。
「グオォォォ」
「えっ!?」
「ニカ! 危ない!」
剣が確かにグールの腕を切り落とした。だけど、グールはそんなこと気にも留めずにニカに食いつこうとしてくる。
僕はすかさずグールの胴体を横なぎに切りつけてグールを二つに両断した。
「ハヤト兄ちゃんありがとう」
「ああ。凄い生命力だな」
「オォォォォ」
ニカのお礼に答えてグールを見やる。
上半身と下半身に分かれているって言うのにまだ僕らへと手を伸ばしてくる。ネズミやゴブリンなんかよりも魔物って感じがするよ。正直怖い。
「HPが続く限り消えないのかな?」
「そうかもね。それか頭を破壊しない限りかもな」
ニカの言葉に考え込んで答える。
この手の魔物って頭が弱点のはず、大体の生き物は頭を破壊すれば死ぬだろう。
「よし。やっぱり頭だな」
グールの頭を切りつけると死体が消えていく。ドロップアイテムはグールの着ていた服の切れ端と魔石だった。グールの魔石はゴブリン達よりは高いだろうな。
「よし、とりあえず報告に戻ろう」
「うん!」
ドロップアイテムを回収してニカに声をかける。元気に答えたニカと並んで帰路にたつ。
町はすぐそこ、なんの問題もなく帰れる。
森に入ってニカが楽しそうに歌ってる。
「ニカ、そろそろ警戒していこう」
「は~い」
森深くまで入ってきたところでニカに声をかける。流石にそろそろ警戒しないといけないだろう。
「いないな~」
「いないな~……ん? ニカ!?」
「え?」
少し歩いているとニカが声をもらす。すると木の影がゆらっと揺れる。その影がなんだかわからなかったけど、何かがニカに向かって飛んできたものだから、ニカを庇うと背中に鈍い痛みが走った。
ゴトッと地面に落ちるものを見るとこん棒が転がっていた。
「ハヤト兄ちゃん!」
「大丈夫。全然痛くないよ。それよりも剣を構えて」
「はい!」
心配するニカに忠告すると剣を抜いて返事をする。こん棒の飛んできた方向を見据えていると木陰から緑の小人がよだれを垂らして現れた。
「ゴブリン!」
想っていた通りのゴブリンの姿に思わず名前を叫んでしまう。
ゴブリンはその声にびっくりして後ろに倒れてしりもちをつく。圧倒的弱者感、これは余裕っぽいな。
「隙あり!」
「ギャ!?」
しりもちをついている隙にニカが切りかかる。ニカの剣が何の抵抗もなくゴブリンの頭を両断。ドロップアイテムを残して消えていった。
「やった~!」
「ニカ凄いな~」
「えへへ」
喜ぶニカの頭を撫でて褒める。嬉しそうに目を細めてる。
ニカは結構ネズミで鍛えられたみたいで難なく戦えてるな。僕も見習わないとな。
「ハヤト兄ちゃん! 次が来たよ!」
ニカが視線を向ける先にゴブリンが5匹も現れた。全員こん棒を持っていてやる気満々だ。
「僕が先に行く。援護して」
「はい!」
ニカからもらった短剣と更に買い足した剣を両手に持って切り込む。先頭のゴブリンを切り伏せると続けて二匹目も屠る。
ニカも続いて切り込んでくると三匹、四匹と難なく絶命させていく。
「これで終わりだ!」
生き残った最後の一匹もこん棒ごと切り伏せ屠ると他と同じようにドロップアイテムを落として消えていく。
そして、声が聞こえてきた。
『レベルが上がりました』
この世界ではパーティーシステムがあるのかわからないけど、ニカの倒した魔物でも経験値をもらっている気がする。そうしないとスライムとゴブリン三匹の経験値でレベルが上がったことになるから簡単すぎると思う。
4レベルになったからと言って特別変わったことはないみたいだ。異世界商店みたいなスキルが手に入ると嬉しいんだけどな。
『二刀流を習得しました』
おっと、そうか、二刀流で攻撃したのはこれが初めてだった。これで更に貴重なスキルが手に入ったな。
スライムみたいな魔法しか効かない魔物と会うこともあるだろうから魔法も覚えたいところだ。
ニカのお父さんが魔法使いだったとか言っていたけど、魔導書みたいなものはないのかな? あればそれで魔法を覚えたいんだけどな。
「ゴブリンさんも弱かったね」
「ん~、そうだね。まあ、ニカが強いってことかもよ」
「えへへ、そうかな?」
ニカの呟きに同意して褒めると嬉しそうに照れてる。ネズミみたいに逃げの一手じゃないのは恐怖だったけど、動きも遅いし先手を取れば余裕。これなら他の魔物も行けるかもな。
そんな考えを巡らしていると変な匂いが立ち込めてきた。
「ん? 変な匂いだな。路地や下水とはまた違った匂いだ」
路地とかのゴミの匂いとは違った匂い。森には似つかわしくない匂いに鼻を摘まむ。ニカも真似して摘まんでる。僕と違うのは楽しそうってところだ。
「オォォォォ」
「な、なんだ!」
変な唸り声が聞こえてきて声のする方に向かうと真っ黒な人が声をあげていた。
「グール!?」
「ええ、あれが?」
ニカの声に気付かされる。ゾンビと同じくらい有名な魔物の一種だ。人の死体を放置すると出来るってゲームの本に書いてあった。この世界もそんな感じかな?
「この近くにお墓はないと思うから、流れてきたのかな?」
ニカが呟くと僕は考え込む。
やっぱり、人の死体からグールになる傾向なのかもしれない。でも、お墓に入れても出てくるんじゃ防ぎようがないよな~。
「お墓は土葬?」
「え? うん。普通そうでしょ?」
「そ、そっか」
疑問を投げかけるとさも当たり前といった様子に答えてくれた。ということは特別お祈りをしたりとかはしていないみたいだな。そりゃ、ゾンビやグールになるな。
「お兄ちゃんどうする? グールはゾンビの上位種だから結構強いと思うよ」
「グールのが強いのか……。噛まれたら僕らもあれになるのかな?」
地球の知識ではだいたいそうだ。噛まれたら感染してゾンビになる。こっちではどうなのかな。かなり怖いんですけど。
「僕らがグールに? なにそれ、聞いたことないよ。毒にはなるらしいけど」
「そ、そうなのか。よかった」
「ハヤト兄ちゃん変なの~。噛まれて魔物の仲間になってたら今頃世界はグールだらけになってると思うよ」
ふむ、ニカに笑われてしまった。そうか、あのゲームの世界はおかしな世界なんだな。なんだかホッとしたぞ。
「じゃあ、毒消しポーションを準備して」
「やるんだね!」
「ああ、一匹なら試す価値はある」
早くレベル上げたいし、グールの実力を見ることもこの後のことを考えると必要だろう。魔物の1ランク上の強さを見せてもらおう。
「はっ!」
こちらに気づいたグールが近づいてくるとニカが剣を振り下ろす。
ゾンビ特有のゆっくりとした動きなので簡単に剣が当たった。
「グオォォォ」
「えっ!?」
「ニカ! 危ない!」
剣が確かにグールの腕を切り落とした。だけど、グールはそんなこと気にも留めずにニカに食いつこうとしてくる。
僕はすかさずグールの胴体を横なぎに切りつけてグールを二つに両断した。
「ハヤト兄ちゃんありがとう」
「ああ。凄い生命力だな」
「オォォォォ」
ニカのお礼に答えてグールを見やる。
上半身と下半身に分かれているって言うのにまだ僕らへと手を伸ばしてくる。ネズミやゴブリンなんかよりも魔物って感じがするよ。正直怖い。
「HPが続く限り消えないのかな?」
「そうかもね。それか頭を破壊しない限りかもな」
ニカの言葉に考え込んで答える。
この手の魔物って頭が弱点のはず、大体の生き物は頭を破壊すれば死ぬだろう。
「よし。やっぱり頭だな」
グールの頭を切りつけると死体が消えていく。ドロップアイテムはグールの着ていた服の切れ端と魔石だった。グールの魔石はゴブリン達よりは高いだろうな。
「よし、とりあえず報告に戻ろう」
「うん!」
ドロップアイテムを回収してニカに声をかける。元気に答えたニカと並んで帰路にたつ。
町はすぐそこ、なんの問題もなく帰れる。
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