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第一章 始まり

第三十六話 ある山の小屋

「何でこんな所に家が?」

 ある冒険者達が山に作ったルークの家に訪れた。冒険者達は何かに怯えているようだ。息を切らせて家の扉に手を掛けた。

「鍵がかかってない」
「早く入ろう。奴らが来る」

 ルークは鍵をかけていたのだが家が鍵を開けた。この家も付喪神が宿り用途に応じて対応したのだ。ルークの作るものはどれも異常なものである。

「気付かないでくれ!」

 冒険者達はある者から逃げていた。王国騎士団も逃げ帰るような大群のそれは鼻息荒く小屋の横を通っていく。

 その音に怯えながら冒険者達はガタガタと震えながら耐えていた。しばらくすると音がなくなりホッと胸をなで下ろした。

 ガシャガシャガシャ!

「ヒッ」

 通り過ぎていったと思った者達は通り過ぎたのではなく辺りをうかがっていたようだ。扉の取っ手が回される音が聞こえてきた。真っ暗な小屋に乱暴な音が鳴り響き冒険者達は恐怖を声にだしてしまう。

「グルルルルル!!」

 獣の声が小屋の周りを支配した。冒険者達の恐怖する声が聞こえてしまったのだ。冒険者達は生唾を飲み込む、気付かれている事に気付いたのだろう。涙を浮かべて幸運を祈った。

 ガリガリガリ! 

 一瞬静かになり激しい殴打音や爪をたてる音が全方向から聞こえてくるようになった。冒険者達は小屋が壊れると思い、身を寄せ合う。




「え?」

 しばらく続いた爪をたてる音が鳴りやんだ。小屋の様子は何一つ変化なく冒険者の一人が声をもらした。するとその声に反応するようにまた殴打音や爪をたてる音がなり始めた。

 ガリガリガリ!

 同じような音が不規則に鳴り響く、しかし、一向に小屋の様子が変わる気配がない。本来ならばこんな小屋が壊れるのは一瞬の出来事である。
 何故かと言うと外の魔物達は討伐ランクBランクのワーウルフ、この山の主として有名な魔物達である。知能も高くあまり人前にでない彼らはリーダーが変わった事で行動を変えた。人間を殺すという方針転換に至ったのだ。
 そして、今正に人間を殺そうとしているのだが小屋一つ壊せずにいる。何とも滑稽だろうか。

 しばらく続いた小屋への攻撃だったが諦めるようにワーウルフ達は立ち去っていく。骨は砕かれ牙はそがれ、爪は根元から折れている。ワーウルフのリーダーはこれを教訓に家を壊すなと伝えるようになったとか。

「助かったのか?」
「そうみたい・・」
「でも、しばらくは外に出るのをやめよう」
「ああ、そうだな。でもこの小屋は何なんだ?」

 この幸運な冒険者達は首を傾げながらも小屋に感謝した。小屋は歓迎を現すように明かりを灯して食べ物を冒険者達の前に出した。冒険者達は唖然としながらも感謝を伝えて夢のようなひと時を過ごしたのだった。

 この冒険者達がエリントスに帰ってくるとギルドからある依頼が全冒険者へと発せられた。
 ワーウルフ大量発生である。山からおりないと有名なワーウルフが大量に生息している事がわかり人を襲うリスクが高まったのだ。
 魔物が増えれば食料がいる、自給自足のできない魔物達は、大量にいる人族を襲うようになるのだ。ギルドとしては見逃せない案件であった。
 その傍らで山にある小屋の精霊の話が口ぐちに話された。困っている人を助けてくれる小屋があるという話しだ。小屋は食料をくれて魔物から守ってくれるそのおはなしは子供達の人気のお話になっていった。



 酒場やギルドではワーウルフの群れの話題でもちきりであった

「ワーウルフか、腕が鳴るな」
「Bランクの魔物だからな。それにそれを統率するリーダーがいるはずだ。そうなるとウォーリアは覚悟した方がいい」
「しかし、小屋も壊せないようなワーウルフなど恐れるだけ損では?」
「おいおい、あんな与太話を信じるのかよ。ワーウルフが小屋を壊せないわけないだろ」

 大半の者達は小屋の話は嘘だと思っている。木で出来た小屋がワーウルフに壊せないなどありえない話だからだ。ワーウルフの爪は鉄を壊す、木など裂けてしまうだろう。ワーウルフは他の冒険者にも目撃されているので本当だと確認は取れている、小屋が壊れないなど信じようがないのだった。

「バッツ、準備はいい?」
「ああ、大丈夫だ。このボーンアーマーを試す時が来た」

 シルクの輝きを放つボーンアーマーを着こんでバッツは粋こんでいる。今回の討伐にはエリントスの全冒険者が参加する予定だ。それもクルシュ様の出したおふれのお陰だ。
 クルシュ様は今回の魔物の群れに対してワーウルフ一匹の討伐報酬を金貨一枚と高値を付けた。ワーウルフの素材は肉は固くて売れないが毛皮や爪、牙は高く売れる。それとは別に討伐報酬が付くのでみんな意気込んでいるのだ。
 しかし、相手はBランクの魔物である。初心者冒険者である者達は徒党を組んで参加を目論んでいる。Cランク以下の冒険者達も何とか参加できるのもワーウルフだからである。ワーウルフは魔法を使わない魔物で近接しか能のない魔物、盾でちゃんと防げれば勝てる可能性が高いのだ。一攫千金を願って冒険者達は戦闘準備をしていく。

 しかし、ワーウルフの群れは一筋縄ではいかない。多くの死者がでるのは必須である。クルシュはそうならないように事前に準備をしていた。それがルークの金の指輪だったのだが、ルビリアが貰った一個のみとなっている。心許ないが何故かクルシュは余裕の顔であった。その理由は後にわかるがそれはこの世界の常識を覆す物になるだろう。

 ワーウルフとの戦争の前日、街は活気立ち明日の成功を祈るのだった。
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