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第一章 始まり

第四十三話 お祭り

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 ワーウルフの群れとの戦いの後、街は夜なのに明かりが煌々とついていた。

 駆けつけてきた冒険者達は唖然としながらも後片付けに勤しんだ。クルシュの屋敷を襲ったワーウルフとの戦闘を終えて疲れていたのに彼らは献身的に片づけを頑張っている。彼らは欺かれた事に後ろめたさを感じている。
 しかし、致し方ない。ワーウルフをまとめる者がSランクとも言われているロードだったのだから、ロードとは街が滅んでいてもおかしくない災害級である。街が無事であっただけ奇蹟なのだ。だれも冒険者達を攻める事はできない。それが逆に冒険者達に後ろめたさを感じさせてしまう要因でもあったのだが。

 街の住人は冒険者達と一緒に後片付けを手伝っている。みんなの無事を確認しあって笑顔で掃除をしていた。掃除をしていると口ぐちにルークの名が出て大きく笑うのだった。

「そう言えばルークは見ないね・・」
「そうだね~。心配だよ」

 スリンと近所のおばさんがルークの心配を口にする。ルークがワーウルフの群れとの戦いに出たのは確認しているスリンは心底心配している。

「大丈夫さ、外の片付けに言ってるんだよ」
「そうだといいんだけどね~」
「お母さん、大丈夫だよ。ルークお兄ちゃんは強いもん」

 心配するスリンにルンが抱きついて安心させている。

 冒険者達も口ぐちにルークの話をしていた。ダッジがルークを探していたからだ。
 片づけをしている冒険者達に聞いては走り去っていくダッジ、何をそんなに急いでいるのかみんな首を傾げていた。

「あの街に設置されたポーションの木箱はルーク君の物だったんだ」

 ダッジのパーティーメンバーのクイナはルークのポーションによって全快した。それもあってダッジはポーション自販機を見た時ルークの物ではないだろうかと思っていた。まさかと否定したが今回の事でそれは確信に変わった。

 ダッジ達はクイナが全快したのを見届けて加勢の準備をしていた。思ったよりも早く来たワーウルフの群れとの戦いに遅れてしまったのだ。それは功を称してダッジ達の泊る宿屋を救う事となった。
 その時にダッジ達は見ていた。噴水広場のベンチの横に設置されたポーション自販機からポーションが出ていく光景を、夜空に舞っていく光り輝く液体は天の川のように街の空を覆って雨を降らせていた。そのポーションの色はルークのそれと同じで合った事でダッジは推測に至った。
 すぐにお礼を言いたいと駆けまわるダッジは息を切らせて今にも酸欠になってしまいそうになっている。

「ルーク君!」
「ダッジさん、どうしたんですか」

 ルークは外のワーウルフの死体を解体していた。一瞬で終わらせられる腕前を買われてギルドに雇われたのだ。

「ダッジさん、順番を守るにゃ」
「いや、解体は自分達で出来るんだがルーク君にどうしてもお礼が言いたくて」

 ダッジはそう言うと深くお辞儀をした。

「ありがとう、君のおかげでクイナの傷は癒えた。それに街を守ってくれてありがとう」

 ダッジの目に潤いが帯びて今にも泣きだしそうになっている。ルークを見る目がまるで神を崇めるかのような眼差しである。周りにいた冒険者達は固唾をのんで見守っている。

「よかった。クイナさん元気になったんですね」
「ああ、君のおかげだよ」

 否定しないルークの様子を見ていた冒険者達は首を傾げる。中にはルークの実力を知る物もいるのだが大半の者達は疑問に思うのだろう。

「ルーク、追加が来たよ」
「あ、は~い」
「あ、忙しい所すまなかった。本当にありがとう」
「はは、ダッジさん、そんなに畏まらないでください。また何かあったら言ってくださいね」

 少しずつ自分の在り方を見つけ始めたルークは笑顔でダッジに言った。ダッジはその言葉を聞いてパーティメンバーの元へと帰っていった。

 周りの冒険者達はヒソヒソと話をしている。1ルークと侮っていた者達も少しずつ彼の凄さに気付き始めているのだ。中にはジグとザグと仲間だった者もいたのだが彼らはあの頃からルークの怖さを知っていた。
 今はメイによって脅迫されているので関わっては来ないが今回の奇蹟を起こしたのがルークであることに気付き始めている、彼らは一番早くルークの奇蹟に気付いた住人となるだろう。

「俺の母ちゃんワーウルフに噛みつかれて腕がなくなりそうだったんだ」
「俺の親父は足だよ」
「1ルークのおかげでたすかったんだよな」
「・・・」
「1ルークってキングって意味なんじゃないか」

 悪ガキから冒険者へとなった彼らは口々にルークへの感謝をヒソヒソと話していた。そして、1ルークはいつしか一番という意味の言葉へと変わっていく。これを本人が知る事はない、本人が目立つことを嫌うのはみんな知っているからであった。

 後片付けが終ると一斉に火の魔法が空へと向けられた。夜も深まろうとしているにもかかわらず街の明かりは強くなっていく。
 Sランクの襲撃に勝った街、エリントスは今日という日を祝って祭りを開催するらしい。クルシュも珍しく街へと降り立ち音頭を取った。

「みな、すまなかった。そしてありがとう。今回の襲撃は街の存続に関わるほどの危機だった。しかし、奇蹟がおこり我々は勝った。これも全て・・・・みんなのおかげだ」

 クルシュは口ごもり話した。本当はクルシュもルークの名を告げたいのだ。しかし、彼の目立ちたくないという言葉を思い出して思い返した。

「クルシュ様これを」
「ああプラム、すまない」

 涙ぐんだクルシュへプラムがハンカチを渡した。その姿を見ていた街の人達はある一点を見つめた。そこには少年が立っている、若干十五歳でレベル1、ポーションを作り最高級の骨細工を作る少年、掃除が大好きでだけど自室はすぐに汚す天才、お母さん恋しくて宿屋の女将さんをお母さんって言っちゃう少年。
 微笑ましく見つめる視線に気付いた少年は驚いてコップを落した。

「ええ、どうしたんですか。皆さん」

 少年は間の抜けた声で疑問を口に出した。見ていた人達はヤレヤレといった様子で少年を担ぎ上げる。
 
「あんたのおかげでみんな無事なんだよ」
「知らないと思ってたのかい?」
「全く、こんな骨細工作っておいて」
「みんな感謝してんだよ。なんせ、今じゃゴブリンやコボルト何て誰でも倒せるようになったんだからね」

 少年へと声をかけながらクルシュのいる壇上へと運ばれて行く少年、少し困った顔の少年はどんどん頬を染められていき照れ始めた。

「・・・皆知ってしまっていたんだな」
「隠せていると思っていたのは本人だけですけどね」

 クルシュ達も実質隠せているとは思ってもいなかった。骨細工の凄さは誰もが知る事だったし、木箱を設置した時にも見られていただろうし。
 少年は申し訳なさそうに頬をポリポリと掻いている。

「ルーク、なんか言ってよ」
「ええ」

 モナーナが壇上の下からそんな事を言ってきた。だけど僕なんかがクルシュ様にかわっていうわけには。

「ルーク君、私の事は気にせずに」
「思った事を言えばいいんですよ」

 クルシュ様とプラムさんが優しくそう言ってくれた。といわれても僕に言えることなんてないし、と思っていると、

「よっ、1レベルの英雄!」
「今日からは1ルークなんて呼べねえな」
「いや、1レベルなんだからそのままでいいんじゃねえか?」
「ええ~」

 冒険者っぽい人達がそんなヤジを飛ばしてきた。でも、そうか。僕は今みんなから英雄として見られているんだね。何だか独りでに涙がこみあげてくる。

「あれ、おかしいな。ははは、嬉しいはずなのに涙が出る」
「ふふ、泣き虫な英雄さんだ事」
「この方がルビリア姉さんの命の恩人、可愛らしいですね」

 ルビリア様と青い髪の少女が僕の涙を拭ってくれた。甘い香りで何だか落ち着いてきた。冷静になってみてみるとモナーナといつの間にかいるニャムさんが膨れていてジト目で見てきています。

「最後まで聞いていますから何かおっしゃってください」
「そうよ。英雄なんだからハッキリと何か言わないと」

 そう言われて僕は壇上からみんなへ今までの事を話した。1ルークと蔑まれていた村での事、自分への卑屈な考え、あまり目立ちたくないって事も。そうするとみんな分かってくれたように頷いてくれた。

「では英雄さんには私達からプレゼントがあるわよ」
「えっ」
「私とサファリアからのキスよ」

 チュ!

「助けてくれてありがとう」
「これからもよろしくね」

 ルビリア様と青い髪の少女、サファリア様はクルシュ様の後ろに下がっていった。僕は柔らかい感触を頬に感じて惚けていると視線を感じました。振り向くとそこにはモナーナとニャムさんがすっごい微妙な顔して睨んでいます。喜んでいるんだか怒っているんだか、わかりません。

 こうして、ワーウルフとの戦いは勝利で幕を閉じた。祭りは朝を通り過ぎて次の日の夜まで続きどんちゃん騒ぎになるのだった。


 
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