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第二章 黒煙
第五十八話 リナージュ
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僕らはティリス様達の待つ村はずれに帰ってきた。ティリス様は腕組をして仁王立ちしています。遠巻きに見ても怒っているのが伺える。
「おそい!いつまで待たせる」
「ティリス様落ち着いてください」
ティリス様は憤りをみせて僕らに近づいてきた。ゼッバスチャンがそれを抑えているんだけど抑えられないようで僕は後ずさり。
「エルフの人達と話していたんだよ」
「それは知ってる。内容は?」
「それは言えないかな~」
「なんでじゃ!」
「だって僕はティリス様がどんな人か知らないし」
「そういえば名乗ってなかったわね」
そう言って、フンスと鼻息荒くしたティリス様は、小さい体を大きく見せる為にゼッバスチャンを四つん這いにさせてゼッバスチャンの背中に乗った。それでもぎりぎり僕の方が背が高いです。
「私はリナージュ・ティリス、リナージュ・バルトの次女よ。どう?言う気になった?」
「・・・」
僕はポカンとしています。リナージュって王都の名前でそれを名乗っているという事は貴族の人の可能性が高い、領主の方々も本来なら名乗ってもいいのだけどクルシュ様やルザーなんかは名乗ってなかった。
それはみんなが知っているからなんだ。街の名前が頭にきてそれからその人の名前が入る。それは僕でも知っている常識。
という事はこの人って王都の貴族の人って事になる。それも確か王都のリナージュを名乗るのを許されているのは王族だけだったような?
「ル、ルーク・・この人、現王の子供なんじゃ?」
「そうにゃ、確か、バルト様にはアリス様とティリス様の二人の子供がいるって聞いたにゃ。あまり表に出ないから顔は知らなかったにゃ」
モナーナとニャムさんもその事を思い出して声に出した。それを聞いて僕は更にポカン、王族の人に世界樹の話をして大丈夫なのか?否、絶対に英雄生活に及んでしまうでしょう。
ではどうするか?貴族の命令は絶対、ましてや王族です。逆らったらどうなっちゃうの?
「フンスッ、分かればいいのだ。それで何を言われたんだ?あんな世界樹を有しているエルフ達に何をお願いされたんだ。そもそも、なぜルークはエルフに呼ばれた?」
胸を張って話すティリス様。色々説明を要求されてしまった。僕は俯いて考える。正直に言っても理解されないだろう。
「それは私がご説明しましょう」
どうしようと考えているとエルフの村の方からルナさんがやってきた。
「私達は世界樹のレイン様からお話を聞く技を持っています。それによって、この地で一番、木の心を理解できる人を探した結果、ルークさんが見つかったのです。ルークさんの作った孤児院を見たでしょう。木々達は喜んで壁や柱になり聖なる波動で建物を守っていました。あんなことが出来るのはエルフの大工でも一人いるかいないかといったほどの者です。レイン様は彼にノーブルローズ様、大昔の世界樹の捜索をお願いしたのです」
「ノーブルローズ様?」
ルナさんは僕の凄さを極力抑えて話していく、ティリス様はうんうんといったように何度も頷いて話を聞いている。あの姿はとても可愛らしくてまだまだ子供なのが分かる。
「ノーブルローズ様が王都の方角にいるというのか?」
「そのようなのです。そして、地面に面していないというのも謎が多く、ぜひ、あなた方人族の王族にも協力して欲しいのです」
「う~む」
話を一通り聞くとティリス様は顎に手をあてて考え始めた。しかし、王族の人が同行者一人で出歩いて大丈夫なのかな?盗賊とかにあったら大変なんじゃないの?まあ、大丈夫ならいいんだけどね。
「わかった。私がお父様に言ってみよう」
「ありがとうございます」
話は順調に進んでティリス様は意気揚々と馬車に乗って行った。そして、ルナさんが僕に近づいてきて耳打ちをする。
「あなたが強い事は内緒なんですよね」
「出来ればお願いします」
「わかりました」
それだけ確認してルナさんは僕の馬車に乗り込んだ。あれ?まさかしてついてくるの?
「ルナさん?」
「レイン様の命令で手伝うように言われました。私の能力は知っているでしょ?役に立つと思いますよ」
「そうだけど・・・」
僕はモナーナとニャムさんを見ると微妙な表情をしている。歓迎していいんだか悪いんだかといった感じなのかな?最悪、孤児院のエルフの子達のお母さんになってもらおう。エルフの子も一人いるしね。
妙な空気のまま、僕らは馬車に乗り込むとミスリーは走り出した。ティリス様たちの馬車も一緒なので来た時と同じだけ時間がかかってしまった。ティリス様達がいなければ小屋も出せて快適だったんだけどね。でも、しょうがない、僕の能力がばれてしまうと英雄身削り生活がやってきてしまうから。
ルーク達が世界樹の麓についてすぐ、ワインプールではユアンが悲しみを背負いながらシャラを背負って王都リナージュへと向かった。
ユアンはルークが自分に何も言わずに出かけていた事に驚いて一日悲しみに暮れていた。その間にアレイストが王都のギルドに連絡をとりシャラを捕獲したことを伝えたのだ。王都のギルドからは捕まえた本人とシャラを王都へと送れと言う返事が返ってきて今に至る。
「何で兄さんは僕に言ってくれなかったんだ」
「お前はあのルークとか言う小僧から嫌われているんじゃないのか?」
「うるさいぞシャラ」
ユアンの不安をかきたてるようにシャラが口を挟んだ。ユアンがそんな言葉に耳を貸すはずもない。ユアンにとってルークは信仰の対象と言ってもいいほどの信頼がある。シャラ如きの言葉でユアンは揺るがない。
「では何故、お前は今、一人で王都に向かっているのだ?おかしいだろう。それにあの小僧はお前に英雄になって身を削れといっているんだぞ。おかしいだろう」
「それは違うよシャラ。僕は自分から英雄を目指しているんだ。兄さんの為とかそう言うんじゃない。それに僕だけだったら君を殺さずに捕獲なんて絶対に無理だった。君を殺して自分も無事じゃすまなかったよ。君も兄さんに感謝した方がいい。僕と君は兄さんに生かされたんだ。僕の一番大切な兄さんのおかげでね」
恋する乙女の表情をしてルークを思うユアン。そのユアンの言葉に歯軋りをするシャラ。シャラは負けたとは思っていない。龍達にとっての完璧な負けとは死を意味している、それを味わいもせずに彼女は負けを認める事はできないのだ。
「俺はあの小僧に負けた覚えはない。あの小娘の魔法でひれ伏しただけだ。油断しているときにやりおって。今度会ったら油断している隙に」
「無駄だよシャラ。彼女は兄さんの加護の元にいるんだ。僕が羨むほどの加護の中に。兄さんの作った武器をつけて兄さんの作った防具を身に着けている。それに・・・秘密を共有するのは彼女達が初めてだったからね」
シャラの殺気のこもった言葉にユアンは口を挟んだ。ユアンはモナーナへの嫉妬を語った。しかし、モナーナとニャムさんとは秘密を共有する仲、嫉妬はするものの憎みはしない。ユアンは密かにルークの武器や防具を欲していた。ユアンから欲しいと言うだけで彼は作ってくれるのだが、最近色々と忙しかったので言えずにいたのだった。
「早くお前を王都の牢獄に入れてすぐに戻らないと!」
「しかし、お前、早いな。俺を倒すというだけはある」
「そういえば、来るときよりも早いかもね。兄さんの指輪のおかげかな?」
ユアンの移動速度はエリントスからワインプールの時よりも更に早くなっている。これはルーク成分を多く確保できたから・・・ではなく、ルークの作った物を持っていたからである。付喪神の宿っているものはルークと会う事で魔力を補充できる。その魔力が満タンになった事で本来の力を発揮したのだ。その力がなくても十分な力を保有しているのだが魔力が満タンになった時の効力は更に凄い物になっているのだった。
「これなら四日で着くかな~。たぶん、王様に謁見してまたお金をたくさんもらって困るんだろうな」
「ふんっ」
ユアンの言葉にシャラは苛立ちを見せた。早く着けばつくほどにシャラが牢に入れられるのが早まるのだから苛立つのもわかる。災厄の龍として世界に名を轟かせたシャラ、最後の外での生活も近いだろう。
ユアン達が向かう、王都リナージュのある屋敷では酒におぼれた大人が一人黄昏ていた。
「豪華な屋敷にお金と私・・・あの人が生きていれば、もっと幸せだったのに」
王城の横に建設されたユアンの屋敷。外観はまるで宮殿、その屋敷のテラスから夜空を見上げて呟いている女性。彼女はユアンの実の母、カテジナだった。
カテジナは王都に来てからずっと悠々自適な生活を送っていた。流石に男を買う事は出来ずにいたので酒だけが彼女の楽しみになっていった。
「お金、ふふふ。お金がいっぱいあってもそれ目当ての男ばかり。私を見てくれない。子供達だって私からいなくなった。私って何なんだろう」
今になってカテジナは子供達の大切さを思い出し始めた。酒の何とも言えない喪失感がそうさせるのかもしれないがウスウス彼女は気付き始めていた。血のつながりとは何物にも劣らないという事に。
「あの子は今どこにいるのかしら。龍を追いかけていったって言っていたけど、まさか、行方不明に。いえ、大丈夫、ギルドに連絡があったっていっていたわ。災厄の龍を捕獲したって。エリントスの方角の街、ワインプールとか言ったかしら、そこに行ったのよね。ルークも元気にしているのかしら、同じワインプールって事は兄妹水入らず...今更私は不要よね」
彼女は後悔を口にした。ルークに冷たい態度をとっていた自分に後悔を感じたのだ。当の本人ルークは健気に仕送りを送っている。カテジナの事を悪く思わなくなったルークにとって昔の事など関係ないのだった。
「早くユアンに会いたいわ」
一人寂しくお酒を飲んで寝るだけの生活に飽き飽きしたカテジナはユアンを待ち遠しく思うのだった。
「おそい!いつまで待たせる」
「ティリス様落ち着いてください」
ティリス様は憤りをみせて僕らに近づいてきた。ゼッバスチャンがそれを抑えているんだけど抑えられないようで僕は後ずさり。
「エルフの人達と話していたんだよ」
「それは知ってる。内容は?」
「それは言えないかな~」
「なんでじゃ!」
「だって僕はティリス様がどんな人か知らないし」
「そういえば名乗ってなかったわね」
そう言って、フンスと鼻息荒くしたティリス様は、小さい体を大きく見せる為にゼッバスチャンを四つん這いにさせてゼッバスチャンの背中に乗った。それでもぎりぎり僕の方が背が高いです。
「私はリナージュ・ティリス、リナージュ・バルトの次女よ。どう?言う気になった?」
「・・・」
僕はポカンとしています。リナージュって王都の名前でそれを名乗っているという事は貴族の人の可能性が高い、領主の方々も本来なら名乗ってもいいのだけどクルシュ様やルザーなんかは名乗ってなかった。
それはみんなが知っているからなんだ。街の名前が頭にきてそれからその人の名前が入る。それは僕でも知っている常識。
という事はこの人って王都の貴族の人って事になる。それも確か王都のリナージュを名乗るのを許されているのは王族だけだったような?
「ル、ルーク・・この人、現王の子供なんじゃ?」
「そうにゃ、確か、バルト様にはアリス様とティリス様の二人の子供がいるって聞いたにゃ。あまり表に出ないから顔は知らなかったにゃ」
モナーナとニャムさんもその事を思い出して声に出した。それを聞いて僕は更にポカン、王族の人に世界樹の話をして大丈夫なのか?否、絶対に英雄生活に及んでしまうでしょう。
ではどうするか?貴族の命令は絶対、ましてや王族です。逆らったらどうなっちゃうの?
「フンスッ、分かればいいのだ。それで何を言われたんだ?あんな世界樹を有しているエルフ達に何をお願いされたんだ。そもそも、なぜルークはエルフに呼ばれた?」
胸を張って話すティリス様。色々説明を要求されてしまった。僕は俯いて考える。正直に言っても理解されないだろう。
「それは私がご説明しましょう」
どうしようと考えているとエルフの村の方からルナさんがやってきた。
「私達は世界樹のレイン様からお話を聞く技を持っています。それによって、この地で一番、木の心を理解できる人を探した結果、ルークさんが見つかったのです。ルークさんの作った孤児院を見たでしょう。木々達は喜んで壁や柱になり聖なる波動で建物を守っていました。あんなことが出来るのはエルフの大工でも一人いるかいないかといったほどの者です。レイン様は彼にノーブルローズ様、大昔の世界樹の捜索をお願いしたのです」
「ノーブルローズ様?」
ルナさんは僕の凄さを極力抑えて話していく、ティリス様はうんうんといったように何度も頷いて話を聞いている。あの姿はとても可愛らしくてまだまだ子供なのが分かる。
「ノーブルローズ様が王都の方角にいるというのか?」
「そのようなのです。そして、地面に面していないというのも謎が多く、ぜひ、あなた方人族の王族にも協力して欲しいのです」
「う~む」
話を一通り聞くとティリス様は顎に手をあてて考え始めた。しかし、王族の人が同行者一人で出歩いて大丈夫なのかな?盗賊とかにあったら大変なんじゃないの?まあ、大丈夫ならいいんだけどね。
「わかった。私がお父様に言ってみよう」
「ありがとうございます」
話は順調に進んでティリス様は意気揚々と馬車に乗って行った。そして、ルナさんが僕に近づいてきて耳打ちをする。
「あなたが強い事は内緒なんですよね」
「出来ればお願いします」
「わかりました」
それだけ確認してルナさんは僕の馬車に乗り込んだ。あれ?まさかしてついてくるの?
「ルナさん?」
「レイン様の命令で手伝うように言われました。私の能力は知っているでしょ?役に立つと思いますよ」
「そうだけど・・・」
僕はモナーナとニャムさんを見ると微妙な表情をしている。歓迎していいんだか悪いんだかといった感じなのかな?最悪、孤児院のエルフの子達のお母さんになってもらおう。エルフの子も一人いるしね。
妙な空気のまま、僕らは馬車に乗り込むとミスリーは走り出した。ティリス様たちの馬車も一緒なので来た時と同じだけ時間がかかってしまった。ティリス様達がいなければ小屋も出せて快適だったんだけどね。でも、しょうがない、僕の能力がばれてしまうと英雄身削り生活がやってきてしまうから。
ルーク達が世界樹の麓についてすぐ、ワインプールではユアンが悲しみを背負いながらシャラを背負って王都リナージュへと向かった。
ユアンはルークが自分に何も言わずに出かけていた事に驚いて一日悲しみに暮れていた。その間にアレイストが王都のギルドに連絡をとりシャラを捕獲したことを伝えたのだ。王都のギルドからは捕まえた本人とシャラを王都へと送れと言う返事が返ってきて今に至る。
「何で兄さんは僕に言ってくれなかったんだ」
「お前はあのルークとか言う小僧から嫌われているんじゃないのか?」
「うるさいぞシャラ」
ユアンの不安をかきたてるようにシャラが口を挟んだ。ユアンがそんな言葉に耳を貸すはずもない。ユアンにとってルークは信仰の対象と言ってもいいほどの信頼がある。シャラ如きの言葉でユアンは揺るがない。
「では何故、お前は今、一人で王都に向かっているのだ?おかしいだろう。それにあの小僧はお前に英雄になって身を削れといっているんだぞ。おかしいだろう」
「それは違うよシャラ。僕は自分から英雄を目指しているんだ。兄さんの為とかそう言うんじゃない。それに僕だけだったら君を殺さずに捕獲なんて絶対に無理だった。君を殺して自分も無事じゃすまなかったよ。君も兄さんに感謝した方がいい。僕と君は兄さんに生かされたんだ。僕の一番大切な兄さんのおかげでね」
恋する乙女の表情をしてルークを思うユアン。そのユアンの言葉に歯軋りをするシャラ。シャラは負けたとは思っていない。龍達にとっての完璧な負けとは死を意味している、それを味わいもせずに彼女は負けを認める事はできないのだ。
「俺はあの小僧に負けた覚えはない。あの小娘の魔法でひれ伏しただけだ。油断しているときにやりおって。今度会ったら油断している隙に」
「無駄だよシャラ。彼女は兄さんの加護の元にいるんだ。僕が羨むほどの加護の中に。兄さんの作った武器をつけて兄さんの作った防具を身に着けている。それに・・・秘密を共有するのは彼女達が初めてだったからね」
シャラの殺気のこもった言葉にユアンは口を挟んだ。ユアンはモナーナへの嫉妬を語った。しかし、モナーナとニャムさんとは秘密を共有する仲、嫉妬はするものの憎みはしない。ユアンは密かにルークの武器や防具を欲していた。ユアンから欲しいと言うだけで彼は作ってくれるのだが、最近色々と忙しかったので言えずにいたのだった。
「早くお前を王都の牢獄に入れてすぐに戻らないと!」
「しかし、お前、早いな。俺を倒すというだけはある」
「そういえば、来るときよりも早いかもね。兄さんの指輪のおかげかな?」
ユアンの移動速度はエリントスからワインプールの時よりも更に早くなっている。これはルーク成分を多く確保できたから・・・ではなく、ルークの作った物を持っていたからである。付喪神の宿っているものはルークと会う事で魔力を補充できる。その魔力が満タンになった事で本来の力を発揮したのだ。その力がなくても十分な力を保有しているのだが魔力が満タンになった時の効力は更に凄い物になっているのだった。
「これなら四日で着くかな~。たぶん、王様に謁見してまたお金をたくさんもらって困るんだろうな」
「ふんっ」
ユアンの言葉にシャラは苛立ちを見せた。早く着けばつくほどにシャラが牢に入れられるのが早まるのだから苛立つのもわかる。災厄の龍として世界に名を轟かせたシャラ、最後の外での生活も近いだろう。
ユアン達が向かう、王都リナージュのある屋敷では酒におぼれた大人が一人黄昏ていた。
「豪華な屋敷にお金と私・・・あの人が生きていれば、もっと幸せだったのに」
王城の横に建設されたユアンの屋敷。外観はまるで宮殿、その屋敷のテラスから夜空を見上げて呟いている女性。彼女はユアンの実の母、カテジナだった。
カテジナは王都に来てからずっと悠々自適な生活を送っていた。流石に男を買う事は出来ずにいたので酒だけが彼女の楽しみになっていった。
「お金、ふふふ。お金がいっぱいあってもそれ目当ての男ばかり。私を見てくれない。子供達だって私からいなくなった。私って何なんだろう」
今になってカテジナは子供達の大切さを思い出し始めた。酒の何とも言えない喪失感がそうさせるのかもしれないがウスウス彼女は気付き始めていた。血のつながりとは何物にも劣らないという事に。
「あの子は今どこにいるのかしら。龍を追いかけていったって言っていたけど、まさか、行方不明に。いえ、大丈夫、ギルドに連絡があったっていっていたわ。災厄の龍を捕獲したって。エリントスの方角の街、ワインプールとか言ったかしら、そこに行ったのよね。ルークも元気にしているのかしら、同じワインプールって事は兄妹水入らず...今更私は不要よね」
彼女は後悔を口にした。ルークに冷たい態度をとっていた自分に後悔を感じたのだ。当の本人ルークは健気に仕送りを送っている。カテジナの事を悪く思わなくなったルークにとって昔の事など関係ないのだった。
「早くユアンに会いたいわ」
一人寂しくお酒を飲んで寝るだけの生活に飽き飽きしたカテジナはユアンを待ち遠しく思うのだった。
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