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第九話 うちでは『膝枕される』ことが一つのノルマですので
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「おにーちゃん、こっち来てよー」
真ん中の布団に寝るよう言われたので、そのまま寝転がってみる。
すると、すぐにサキちゃんがくっついてきた。
「パパといっしょ! えへへ~」
だらしない笑顔は無邪気で愛らしく、この子のためなら気恥ずかしさにも耐えられると思えた。
正直なところ、俺は女性に慣れていない。
ずっと旅ばかりだったので異性と付き合ったこともないし、身近にそういう女性もいなかった。
サキュバスの村に行った時はとても緊張したものである。
露出の多い大人サキュバスとは緊張してあんまり話せなかったので、ずっとサキちゃんに構ってもらっていたくらいだ。
四人は子供だから多少マシとは言え、くっつき合うのはまだちょっと照れくさい。
しかし、これからは慣れていかないといけないだろう。
「むぎゅ~っ。やっぱり、おにーちゃんの近くにいると安心するなぁ。おにーちゃんがいなかったら、不安で世界滅ぼしてたかも」
「……マニュ、冗談でも笑えないから」
邪神なのでやろうと思えばいつでも世界を滅ぼせるはずだ。
それくらいアンラ・マンユはやばい。
「いくらでもくっついていいから……大人しくしててくれよ?」
「はーい! ねぇねぇ、……おっぱい当たってる?」
「当たってないよ」
「当ててるよ!? もうっ、おにーちゃんの鈍感! すぐに成長して見せるんだからっ」
いや、まぁそれっぽい感触はなくもないが、意識したら自分を嫌いになりそうなのであえて無視している。
みんなはまだ小さいので、俺が過剰に反応するのも良くないかもしれない――ということを、ふと思った。
お風呂に入った時はかなり動揺してしまったが、これからはあまり動じないよう心掛けていきたい。
「あら? サキはもう寝たのね」
「え? あ、本当だ……さっきまで起きてたのに」
エレオノーラに言われてサキちゃんを見ると、彼女はいつの間にかぐっすりと寝ていた。
「むにゃむにゃ……」
俺の腕を抱きながら、幸せそうに寝息を立てている。
「なんだかんだ、はしゃいでいたみたいね……ここ数日、下僕が来るかもしれないって、サキはとっても楽しみにしていたみたいだし」
「そう言うエレオノーラ様も……何度も何度もお風呂に入って、そわそわしていたように見えましたが?」
「……いいじゃない。綺麗なわたしを見せたかったのよ」
「左様でございますか」
さっき食事の席でからかわれた反撃なのか、ルーラはどこか満足気な顔をしていた。
「では、サキ様も寝ておりますので……わたくし達も、眠りましょうか」
そう言ってルーラは電気を消した。
それから彼女は俺の枕元に来て膝をついた。
「ご主人様、少し頭を上げてくださいませ」
「ん? ああ、これでいい?」
「はい……よいしょ、っと」
ルーラは俺が頭を上げたことで生まれた隙間に、自分の膝を滑り込ませた。
そうなると必然、俺はルーラの膝に頭を置くことになる。
うん……これはいわゆる、膝枕だった。
「えっと、ルーラ?」
「ご主人様が眠るまで膝枕したいと思います。わたくしのことは気にしないでくださいませ」
「いや、足が痺れると思うんだけど?」
「そう心配なさっているのなら、早く眠るよう努力してください」
ルーラはこのまま膝枕を続けるつもりのようだった。
「うちでは『膝枕される』ことが一つのノルマですので」
「……ノルマもあるんだ」
「ノルマを達成しないと更にお仕事増やしますよ? 過激な方向性で」
「……健全な仕事がいいです」
口答えしてもルーラには敵いそうになかった。
大人しく、膝枕されて眠ることに。
「おやすみなさい、ご主人様」
「明日はいっぱい遊ぼうね、おにーちゃんっ」
「……下僕、今日は御苦労様。しっかり寝て疲れをとりなさいね?」
「うん。みんな、お休み」
おやすみの挨拶も交わして、俺たちは本格的に就寝することにする。
頭の後ろにある太ももは、感触が優しくて心地良かった。
「…………」
しばらくは無言で、目を閉じる。
少しすると、寝息が一つずつ増えて行った。
目を開けて確認してみると、エレオノーラとマニュもぐっすり寝ていた。
二人は子供らしからぬ一面も多々あるが、寝顔はやっぱり子供だった。
サキちゃんと同様、幸せそうに寝ていた。
彼女たちがぐっすり寝ているのは喜ばしいことである。
しかし俺は眠れなかった……おかしい。ここ数日は野宿ばっかりだったし、食事もまともにできなかったので、疲労は溜まっているはずなのに。
なんだか眠れなかった。
「……ご主人様、眠れないのですか?」
そんな俺にルーラは気付いていたようだ。
「眠れないのなら、無理に眠る必要はありませんよ?」
「でも、眠るのも仕事だろうし……」
「無理をするのは業務違反です。わたくしたちとしては、もちろんぐっすり眠ってほしいですが……眠れないのはしょうがありませんので」
そう言って彼女は、俺に立ち上がるよう促した。
「お飲み物をご用意いたします。皆さまも眠ったところですし、少し気分転換でもいたしましょうか」
そういうわけで、俺はひとまず布団から出ることにする。
俺にくっついていた三人を起こさないようどかして外へと出た。
真ん中の布団に寝るよう言われたので、そのまま寝転がってみる。
すると、すぐにサキちゃんがくっついてきた。
「パパといっしょ! えへへ~」
だらしない笑顔は無邪気で愛らしく、この子のためなら気恥ずかしさにも耐えられると思えた。
正直なところ、俺は女性に慣れていない。
ずっと旅ばかりだったので異性と付き合ったこともないし、身近にそういう女性もいなかった。
サキュバスの村に行った時はとても緊張したものである。
露出の多い大人サキュバスとは緊張してあんまり話せなかったので、ずっとサキちゃんに構ってもらっていたくらいだ。
四人は子供だから多少マシとは言え、くっつき合うのはまだちょっと照れくさい。
しかし、これからは慣れていかないといけないだろう。
「むぎゅ~っ。やっぱり、おにーちゃんの近くにいると安心するなぁ。おにーちゃんがいなかったら、不安で世界滅ぼしてたかも」
「……マニュ、冗談でも笑えないから」
邪神なのでやろうと思えばいつでも世界を滅ぼせるはずだ。
それくらいアンラ・マンユはやばい。
「いくらでもくっついていいから……大人しくしててくれよ?」
「はーい! ねぇねぇ、……おっぱい当たってる?」
「当たってないよ」
「当ててるよ!? もうっ、おにーちゃんの鈍感! すぐに成長して見せるんだからっ」
いや、まぁそれっぽい感触はなくもないが、意識したら自分を嫌いになりそうなのであえて無視している。
みんなはまだ小さいので、俺が過剰に反応するのも良くないかもしれない――ということを、ふと思った。
お風呂に入った時はかなり動揺してしまったが、これからはあまり動じないよう心掛けていきたい。
「あら? サキはもう寝たのね」
「え? あ、本当だ……さっきまで起きてたのに」
エレオノーラに言われてサキちゃんを見ると、彼女はいつの間にかぐっすりと寝ていた。
「むにゃむにゃ……」
俺の腕を抱きながら、幸せそうに寝息を立てている。
「なんだかんだ、はしゃいでいたみたいね……ここ数日、下僕が来るかもしれないって、サキはとっても楽しみにしていたみたいだし」
「そう言うエレオノーラ様も……何度も何度もお風呂に入って、そわそわしていたように見えましたが?」
「……いいじゃない。綺麗なわたしを見せたかったのよ」
「左様でございますか」
さっき食事の席でからかわれた反撃なのか、ルーラはどこか満足気な顔をしていた。
「では、サキ様も寝ておりますので……わたくし達も、眠りましょうか」
そう言ってルーラは電気を消した。
それから彼女は俺の枕元に来て膝をついた。
「ご主人様、少し頭を上げてくださいませ」
「ん? ああ、これでいい?」
「はい……よいしょ、っと」
ルーラは俺が頭を上げたことで生まれた隙間に、自分の膝を滑り込ませた。
そうなると必然、俺はルーラの膝に頭を置くことになる。
うん……これはいわゆる、膝枕だった。
「えっと、ルーラ?」
「ご主人様が眠るまで膝枕したいと思います。わたくしのことは気にしないでくださいませ」
「いや、足が痺れると思うんだけど?」
「そう心配なさっているのなら、早く眠るよう努力してください」
ルーラはこのまま膝枕を続けるつもりのようだった。
「うちでは『膝枕される』ことが一つのノルマですので」
「……ノルマもあるんだ」
「ノルマを達成しないと更にお仕事増やしますよ? 過激な方向性で」
「……健全な仕事がいいです」
口答えしてもルーラには敵いそうになかった。
大人しく、膝枕されて眠ることに。
「おやすみなさい、ご主人様」
「明日はいっぱい遊ぼうね、おにーちゃんっ」
「……下僕、今日は御苦労様。しっかり寝て疲れをとりなさいね?」
「うん。みんな、お休み」
おやすみの挨拶も交わして、俺たちは本格的に就寝することにする。
頭の後ろにある太ももは、感触が優しくて心地良かった。
「…………」
しばらくは無言で、目を閉じる。
少しすると、寝息が一つずつ増えて行った。
目を開けて確認してみると、エレオノーラとマニュもぐっすり寝ていた。
二人は子供らしからぬ一面も多々あるが、寝顔はやっぱり子供だった。
サキちゃんと同様、幸せそうに寝ていた。
彼女たちがぐっすり寝ているのは喜ばしいことである。
しかし俺は眠れなかった……おかしい。ここ数日は野宿ばっかりだったし、食事もまともにできなかったので、疲労は溜まっているはずなのに。
なんだか眠れなかった。
「……ご主人様、眠れないのですか?」
そんな俺にルーラは気付いていたようだ。
「眠れないのなら、無理に眠る必要はありませんよ?」
「でも、眠るのも仕事だろうし……」
「無理をするのは業務違反です。わたくしたちとしては、もちろんぐっすり眠ってほしいですが……眠れないのはしょうがありませんので」
そう言って彼女は、俺に立ち上がるよう促した。
「お飲み物をご用意いたします。皆さまも眠ったところですし、少し気分転換でもいたしましょうか」
そういうわけで、俺はひとまず布団から出ることにする。
俺にくっついていた三人を起こさないようどかして外へと出た。
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