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第十話 業務内容には『幸せになること』も含まれております
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夜。小屋の外に出ると、ルーラがティーテーブルの設置された場所に案内してくれた。
「エレオノーラ様がここでよくお茶を飲んでおります。少し、場所をお借りしましょう」
席に座ると、彼女は持ってきてくれた飲み物を差し出してくれる。
「ありがとう」
温かい飲み物を口に含むと、心が落ち着いていくような感じがした。
「サキ様も大好きなホットミルクでございます。お口に合ったでしょうか?」
「うん、美味しいよ」
「それは何よりです」
笑いかけると、ルーラは微笑みを返してくれる。
俺のそばに立って彼女はこっちをジッと見ていた。
「……座らないの?」
「いえ、このままで構いません。正面に座ってしまったら、きっとだらしない顔を見せてしまいますから」
恥ずかしいとのことだ。そう言う割には距離感が近かった。
肌と肌が触れあうほどの近さである。
今はあまり寒い時期ではないが、夜は少し冷える。
彼女の温もりから離れるのには少しためらいがあった。
「そっか」
だからこのままで、俺とルーラは夜の時間を過ごすことに。
「……本日はどうでしたか? わたくしたちのお家は、何か嫌なところなどありませんか?」
「嫌なところ……うーん、女の子が裸を見せるのは良くない気がする」
「?」
「いや、そんなにキョトンとされても困るんだけど……」
「裸は、お嫌いですか?」
「き、嫌いっていうか、その……まぁいいや。なんでもない」
説明しようとしたが、ルーラを納得させる自信がなかったのでこれ以上は言わないことに。
もしかしたらこの子は男女の肉体的なあれを分かってないのかもしれない。
どう説明していいのかも分からなかった。『子供ってどうやったらできるの?』という質問と同じように、なかなか答えにくい問題である。
「裸に何か思うところがあれば、遠慮なくお申し付けください。改善する努力をいたします」
「だ、大丈夫。気にしないでいいよ」
「……ご主人様がそう言うのなら」
ルーラは詳しく聞きたそうにしていたが、これ以上の言及はやめてくれた。
それよりも、彼女には聞きたいことがあるらしい。
「他に、わたくしたちのことで嫌なところはありませんか? その……迷惑、だったりしませんか?」
たぶん、ルーラはこれを気にしていたのだと思う。
「皆さま、ご主人様が来てくれてとてもはしゃいでおりますが、本当はお邪魔だったりしませんか? わたくしも含めて――ご主人様のことを不快にはしてないでしょうか」
もしかしたら、ルーラは後ろめたさを感じているのかもしれない。
「ご主人様は……本当は、このお家に住みたくないと思っていますか?」
ここに来たのは成り行きだった。
働けず、お金もなくて、道端で倒れていた俺を、ルーラは食事と仕事を餌に連れ込んだ――と、言えなくもないだろう。
だから俺が本当は嫌がっているのかもしれないと、ルーラは考えているみたいだった。
そんなこと、ありえないのに。
「みんなのことは、迷惑でも邪魔でもない。むしろ、俺の方が迷惑かと思ってるくらいだから」
本心だった。
迷惑で邪魔と言うのなら、彼女たちよりも俺の方がそうに決まっている。
「迷惑だなんてありえません」
でも、ルーラは俺の言葉を否定してくれた。
どこまでも俺のことを思っている彼女を……いや、彼女たちを、悪く思うなんてありえない。
「ありがとう。助けてくれたことも、俺を受け入れてくれたことも……本当に感謝してる。迷惑だなんて、とんでもない」
そう伝えると、ルーラは安堵したように表情を緩めてくれた。
「それなら、良かったです……嫌がっていたら、どうしようかなって思っておりました、悪いところはいくらでも改善します。ご主人様が求めるのなら、何だってやります。だからどうか、ここにいてくださいませ」
信じられないくらいに、ルーラは俺のことを大切にしてくれていた。
その思いがとても嬉しかった。
「嫌がってなんかないよ。悪いところもない。そんなに、気を遣わなくていいよ?」
「いえ、ご主人様が幸せになることも業務内容に含まれおります。そうなるように、職場の環境を整えるのは、雇用主であるわたくしたちの義務なので」
直後、ルーラは後ろから俺に抱き着いてきた。
「それに、わたくしはこう言いました。ご主人様の仕事は『甘やかされること』だと」
何も気にしなくていいと彼女は言ってくれるのだ。
「どうか存分に、幸せになってくださいませ……わたくしたちは、ご主人様のために何でもやりますから」
狂おしいほどの愛情が、触れた肌を通して伝わってくる。
なんだか、力が抜けたような気分だった。
もしかした俺は緊張していたのかもしれない。
押しかけたように俺はこの家に来たので、彼女たちに気後れしていたのだ。
だから寝つきも悪かったのだろう。
でも、ルーラが俺を安心させてくれたおかげで、気持ちが落ち着いたのだ。
俺が新しく来た家は――俺が思っていた以上に、温かい場所だったのである。
「エレオノーラ様がここでよくお茶を飲んでおります。少し、場所をお借りしましょう」
席に座ると、彼女は持ってきてくれた飲み物を差し出してくれる。
「ありがとう」
温かい飲み物を口に含むと、心が落ち着いていくような感じがした。
「サキ様も大好きなホットミルクでございます。お口に合ったでしょうか?」
「うん、美味しいよ」
「それは何よりです」
笑いかけると、ルーラは微笑みを返してくれる。
俺のそばに立って彼女はこっちをジッと見ていた。
「……座らないの?」
「いえ、このままで構いません。正面に座ってしまったら、きっとだらしない顔を見せてしまいますから」
恥ずかしいとのことだ。そう言う割には距離感が近かった。
肌と肌が触れあうほどの近さである。
今はあまり寒い時期ではないが、夜は少し冷える。
彼女の温もりから離れるのには少しためらいがあった。
「そっか」
だからこのままで、俺とルーラは夜の時間を過ごすことに。
「……本日はどうでしたか? わたくしたちのお家は、何か嫌なところなどありませんか?」
「嫌なところ……うーん、女の子が裸を見せるのは良くない気がする」
「?」
「いや、そんなにキョトンとされても困るんだけど……」
「裸は、お嫌いですか?」
「き、嫌いっていうか、その……まぁいいや。なんでもない」
説明しようとしたが、ルーラを納得させる自信がなかったのでこれ以上は言わないことに。
もしかしたらこの子は男女の肉体的なあれを分かってないのかもしれない。
どう説明していいのかも分からなかった。『子供ってどうやったらできるの?』という質問と同じように、なかなか答えにくい問題である。
「裸に何か思うところがあれば、遠慮なくお申し付けください。改善する努力をいたします」
「だ、大丈夫。気にしないでいいよ」
「……ご主人様がそう言うのなら」
ルーラは詳しく聞きたそうにしていたが、これ以上の言及はやめてくれた。
それよりも、彼女には聞きたいことがあるらしい。
「他に、わたくしたちのことで嫌なところはありませんか? その……迷惑、だったりしませんか?」
たぶん、ルーラはこれを気にしていたのだと思う。
「皆さま、ご主人様が来てくれてとてもはしゃいでおりますが、本当はお邪魔だったりしませんか? わたくしも含めて――ご主人様のことを不快にはしてないでしょうか」
もしかしたら、ルーラは後ろめたさを感じているのかもしれない。
「ご主人様は……本当は、このお家に住みたくないと思っていますか?」
ここに来たのは成り行きだった。
働けず、お金もなくて、道端で倒れていた俺を、ルーラは食事と仕事を餌に連れ込んだ――と、言えなくもないだろう。
だから俺が本当は嫌がっているのかもしれないと、ルーラは考えているみたいだった。
そんなこと、ありえないのに。
「みんなのことは、迷惑でも邪魔でもない。むしろ、俺の方が迷惑かと思ってるくらいだから」
本心だった。
迷惑で邪魔と言うのなら、彼女たちよりも俺の方がそうに決まっている。
「迷惑だなんてありえません」
でも、ルーラは俺の言葉を否定してくれた。
どこまでも俺のことを思っている彼女を……いや、彼女たちを、悪く思うなんてありえない。
「ありがとう。助けてくれたことも、俺を受け入れてくれたことも……本当に感謝してる。迷惑だなんて、とんでもない」
そう伝えると、ルーラは安堵したように表情を緩めてくれた。
「それなら、良かったです……嫌がっていたら、どうしようかなって思っておりました、悪いところはいくらでも改善します。ご主人様が求めるのなら、何だってやります。だからどうか、ここにいてくださいませ」
信じられないくらいに、ルーラは俺のことを大切にしてくれていた。
その思いがとても嬉しかった。
「嫌がってなんかないよ。悪いところもない。そんなに、気を遣わなくていいよ?」
「いえ、ご主人様が幸せになることも業務内容に含まれおります。そうなるように、職場の環境を整えるのは、雇用主であるわたくしたちの義務なので」
直後、ルーラは後ろから俺に抱き着いてきた。
「それに、わたくしはこう言いました。ご主人様の仕事は『甘やかされること』だと」
何も気にしなくていいと彼女は言ってくれるのだ。
「どうか存分に、幸せになってくださいませ……わたくしたちは、ご主人様のために何でもやりますから」
狂おしいほどの愛情が、触れた肌を通して伝わってくる。
なんだか、力が抜けたような気分だった。
もしかした俺は緊張していたのかもしれない。
押しかけたように俺はこの家に来たので、彼女たちに気後れしていたのだ。
だから寝つきも悪かったのだろう。
でも、ルーラが俺を安心させてくれたおかげで、気持ちが落ち着いたのだ。
俺が新しく来た家は――俺が思っていた以上に、温かい場所だったのである。
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