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第二話「演劇クラス再始動!」2

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 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響き、生徒たちはそれぞれの教室へと戻っていく。

 第一回部活会議の開始となり、羽月の用意したスライドショーを元に話を進めていく。

「―――と、いうわけで、当クラスは皆さんの希望通り、演劇クラスを希望する旨を生徒会に提出します」

 几帳面な羽月の性格通り、丁寧な進行で、半ば分かり切ったことを改めて自分の言葉で説明していた。

 ほとんどが昨年度と同じ面々の中で、羽月は自分も一員として参加する覚悟を持って真摯にクラスメイトと向き合っている様子だった。

 特に異論もなく、第一回の部活会議は滞りなく進行していく。
 羽月は少しずつ、進行役を務めることで少しずつ不安材料を払拭しながら、確かな手ごたえを噛みしめた。

(あなたはこうして今も生きているもの。それを忘れて残り一年を過ごすなんて出来ないから。

 ―――それに約束したから、“来年の学園祭は一緒に演劇をやろう”って。

 だから、浩二、あなたとの約束は果たすわ、あなたを好きだった頃の私のためにも)

 羽月は長く心の内に押し込めてきた大切にしてきた想いを胸に、夢に向かって一歩を踏み出した。

 仮の役職を決める段階まで会議は進んで、司会は副委員長の浩二へと切り替わった。
 ほとんどが昨年の役職を引き継ぐ形で役職が決定していく。
 
 長い付き合いなだけあって浩二に対するクラスメイトの信頼は厚い。それは昨年の文化祭の功績からしても確かなものだった。
 去年の文化祭で浩二が脚本・監督を務めた演劇で学年最優秀賞を受賞し、体育館優先使用権を得ている。そのことはクラスメイトの信頼をより大きなものにした。

「じゃあ、改めて、仮決定した役職を読み上げるぞ」

・総合監督(八重塚羽月)
・衣装担当、演技指導(永弥音唯花)
・大道具担当(内藤達也)
・脚本担当(樋坂浩二)
・音響担当(手塚神楽)

 常設のチーフ担当がこのように決まり、後は演目ごとに助監督やキャストなどはその都度相談して決めていくこととなった。

 羽月は総合監督までは想定していなかったようだが、去年、このクラスで委員長をしていた生徒はすでにいないことから、羽月が適任ということで仮決定することとなった。

 後日、生徒会から承認されれば、正式に活動が始まる。
 これからの一年間でどれだけのドラマが新たに生まれるのか、そんなわくわく感の中、一度目の部活会議は幕を閉じた。

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