魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori

文字の大きさ
5 / 157

第二話「演劇クラス再始動!」1

しおりを挟む
「浩二」

 昼休みがもうすぐ終わろうとする頃、教室に戻ろうとしていた浩二に八重塚羽月やえづかはづきは話しかけた。
 多くの生徒が私服で学園生活をする中では珍しい制服姿の羽月、生徒会副会長も歴任していたこともあり、その几帳面で真面目な印象に合致している。その両手には普段使いしているタブレット端末を胸に抱えながら手で握っている。

「羽月」

 何か月ぶりだろう、羽月から名前を呼ばれるのは、浩二は別離の中で無理やりに冷めさせてきた気持ちが沸騰するようだった。
 あの日から……、別れることになったあの衝突から、もう数ヶ月。浩二にとっても羽月にとっても、それはほろ苦く、忘れようにも忘れられない過酷な数か月間だった。

 毎日のように名前を呼びあった愛に満たされた日々、未だ鮮明に思い出せる、過去とするには辛い大切な日々、思い出そうとすればいくらでも止めどなく思い出すことができる。
 付き合っていた期間は長いとは言えなくても、二人にとって大切な思い出であることに変わりはなかった。

 だけど、今こうして今になって向き合っていることを今更という気持ちもあった。

 探り探りでない自然な会話を取り戻すためにどう自分の感情に整理を付ければいいのか、せめて付き合う前のように戻りたいという気持ちは、どう整理を付ければいいのか。言葉にはしなくても、二人はずっと考えてきた。

「驚いたかもしれないけど、今更何をと思われるかもしれないけど……、でも、あなたとは約束したから。一緒に今度は演劇をしようって。だから、悪く思わないで」

 羽月は、思い詰めた気持ちを面に出さないよう懸命に堪えながら、出来るだけ自然な態度を取れるよう努めて言葉を紡いだ。浩二にはそれは素っ気ない言葉に聞こえるかもしれないと思いつつ。

「驚きはしたけど……、俺は羽月のこと、嫌いになったわけじゃねぇから。
 それが羽月の今したいことだっていうなら、手伝うさ」

 浩二は慎重に羽月の心境を図りながら、自分の気持ちを言葉にした。

「ありがとう、今はその言葉を信じるわ」

 大人びた羽月の声、浩二にとってもそれは懐かしく、心に響いた。

「―――それと、この後の部活会議だけど」

 そう切り出した羽月、昼休みの後にはそれぞれのクラスで一回目の部活会議がある。
 羽月が言っているのはそのことである。

「今日決めるのは、人事くらいなものだと思うから、そこは浩二にバトンタッチするわね。新参者の私が口を出すよりはいいでしょ?」
「そうかもしれないけど、いいのか?」
「一緒に演劇が出来れば、それで私は満足よ」
「そうか、分かった」

 浩二が返事をすると、羽月は少し穏やかな表情を浮かべて教室に戻った。
 委員長と副委員長という立場になった二人は、積もった雪が解けるように、一つずつ会話を重ねるたびに、二人の関係が元の色を取り戻し始めているようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい

葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。 絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。 過去の後悔を拭いたい。 誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...