魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori

文字の大きさ
10 / 157

第三話「緑色の巨塔」1

しおりを挟む
 幼馴染三人組、浩二、唯花、達也は今日も学園に向かって通学路を歩いていた。

「浩二はクリスタタワーがなぜ発光するか分かるか?」

 達也は浩二に聞いた。クリスタタワーというのは、22年前に建設が始められ、20年前に完成した円柱型の巨大なビルで、街の象徴ともいうべき建設物となっている。
 そのクリスタタワーの一番の謎が、夜になるとエメラルドグリーンのような美しい緑色に発光することだ。その科学的な説明は未だされておらず、見る人々から“蛍の光のようだ”とよく言われている。

「分からないが、様々な憶測とか学説は聞いたことはあるけど、実際建設にかかわった関係者でも分からないって話だろ?」

 浩二が達也の質問に答える、浩二の言葉にしたことは、大方の庶民が知るところの知識であった。

「本当、不思議だよね。でも、タワーが発光してくれているおかげで、夜道も安全だって、よく言ってるよね」

 唯花にも発光の理由は分からないが、唯花自身はタワーの存在そのものには好意的であった。

「実際分かっていないことだらけだが、初期の設計には当時市長の稗田黒江氏が関わっていて、その後、都市再生計画と関連の深い建設会社が引き継いだらしい」

 転校生の稗田知枝の祖母、稗田黒江が災厄で崩壊した舞原市の再建に尽力していたことは、調べればわかる事だった。
 調べれば調べるほど、その実績や影響力には驚かされるばかりだったが、今や他人事でもなくなったこともあり、三人は知識を付けると同時に、現実を受け入れつつあった。
 県知事から市長へ、長い間、舞原市の再建に携わってきたこと、そしてクリスタタワーの建設にもかかわっていたこと、まだ知らないことが多く残っていることもまた事実だった。
 
「僕たちが生まれる前のことだから、よくわからないけど、稗田さんなら詳しいこと知ってるのかな?」
「達也、もしかしてそれ、稗田さんに聞く気なの?」

 浩二の言葉の後に唯花は達也に向けて質問をぶつけた。
 知枝にとって祖母がどれだけ大切で、尊敬する人物であるかは皆が知っていることだったので、無闇な詮索は、知枝を傷つけることにも繋がることは容易に想像できた。

「いや、そこまで詮索するつもりはないが、“緑色”という色には心理的にリラックス効果があると知られている。そういった心理的効果、人の気持ちを落ち着かせるために意図的に緑色の色彩を発光させているとすれば、何か目的があるのではと想像するのは、自然なことじゃないか?」

 達也の話しは聞けばなんとなく理解できることだが、そこまで思考が向く人は多くないのではと思えた。

「昔の映画でもそういうのあったっけ、緑色に発光する現象を引き起こすもの、あっ、アニメだっけ」

 唯花のあやふやな記憶、それは生まれる前の作品だからか、曖昧な知識のものだった。

「でも、どうして発光してるのか分からないのだから、効能だけ考えても仕方ない気がするけどな」
「雑学のようなものだよ、だが、考えればいつか真実にたどり着けるかもしれないだろ?」
「真実ね……、専門家でも答えの出ないことに、俺たちのような一般人が辿り着けるとは思えないけど」

 浩二は煮え切らない様子で、今は陽が昇っている時間で発光した姿は見えないが、美しい景観を維持し続けるクリスタタワーを見ながら言った。

 夜には宝石のペリドットやエメラルドのような輝きを帯び、街の象徴としてまばゆい光を放つ。
 その美しさはすでに親しまれているものだ。

 完成披露会の時は”災厄の際には電気が止まり街は暗闇に包まれたことで、被災者に安心感を与えるためにも昼夜問わず恒久的に与える照明の光として作れられた”と説明されているのだが、それ以上の説明はされていない。


 街の象徴的建造物として、そこにそびえ立つ存在感は今なお大きく、夜間発光し続けることに何らかの意味があるのならば、それがいかなる理由なのか、知りたくないと言えば、嘘になるところであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい

葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。 絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。 過去の後悔を拭いたい。 誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...