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第十三話「映画館へいこう!」3
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知枝からは特に観たい映画の要望はなく、舞の要望を取り入れる形で今話題沸騰のアイドル映画を一緒に見ることになった。
アイドルグループの成長や別れが描かれ、2時間近い上映時間はあっという間に過ぎていった。
「うううーーーっ!!! 最高だったなぁ!!」
舞はまだ目元に涙の跡を残したまま、濡れたハンカチを片手にしみじみと声を上げた。
光にとっては見慣れた光景であっても、舞の普段見せることない感情的な一面に知枝は驚かされた。
感動的なシーンでは感極まって涙を流していた舞と共に三人は日の当たる映画館の外へと出た。
映画を鑑賞した後の舞は腕を伸ばしながらご満悦といった調子で実に上機嫌だった。
舞のアイドル好きは小さい頃から元々あったが、唯花との出会いでその傾向はより大きいものとなった。
アイドルという職業や制約、活動自体にも興味関心があるようで、その辺りのスキャンダルやメンバー同士の対立や事務所との対立など、大人目線でのリアリティーのある描写も含めて、大変なことに巻き込まれることもあるが、歌って踊って努力をひたむきに続ける煌びやかな姿が光るアイドルという職業を舞は愛してやまないようだ。
文化的にもすでに成熟したアイドルに職業としてなりたくても、現実的には簡単になれるものではなく、たとえ目指しても多くの人がやがて挫折してしまう。
そういった競争率の高いハードルが存在することも、舞は受け入れているようで、純粋に頑張る唯花の姿を尊敬し続けているのだった。
「舞、相変わらず好きだねぇ」
舞ほどアイドルに興味があるわけではない光は、舞の満足気な様子を見ながらしみじみと一言、舞に向けて言った。
「唯花先輩が頑張ってる姿みたら、やっぱりアイドルって輝いてていいなぁって思っちゃうから、勝手に応援したい気持ちがどんどん湧いてくるのよね。
表には見えないところでも大変なことだってあって、挫折や嫉妬も経験しながらそれでも挫けずに努力して、仲間と一緒にメンバーそれぞれの個性を活かしながら、グループとしても成長して大きくなっていく、華やかでもあり切なくもある、やっぱりアイドルって最高なのよ!」
畳み掛けるように想いの内を語る舞。自分と変わらない年頃の等身大の少年少女が成長していく姿、その華やかな世界は舞でなくても憧れてやまないことだろう。
上機嫌に力説する舞を見ながら、知枝は自分にはそういう煌びやかな世界は縁がないけれどと内心思いながら、舞が明るい表情を浮かべてくれるのが嬉しかった。
「普段から唯花さんの気さくなところを見てるとイメージ湧かないけど、学生でありながらアイドルを続けてるって、影で凄い努力してるんだろうなぁ……」
知枝はしみじみと思った。舞から時々聞く程度だが、学園ではアイドルをしていることは隠し、そういった苦労は見せず、勉強や部活、図書委員を頑張っているのは本当にすごいと感じるのだった。
「唯花先輩は自己主張も控えめで、愚痴も言わないけど、凄く努力して、歌も上手いし、尊敬しちゃうところばかりなのよ」
唯花の話しをする舞はいつにも増して饒舌で、熱量があって、唯花のことになると急に熱弁して、自分の事のように力説しながら話すのだった。
「舞ってば、いつも唯花さんの歌聞いてるもんね」
舞の部屋から聞こえてくる唯花の歌声は日常の一部になり、すでに知枝にとっても馴染みのある音楽になっていた。
「そうよ、あたしは唯花先輩の一番のファンなんだから! バラードもポップスもみんな好きなんだから」
事務所に入って、活動場所を変えて、名前や姿も変えて、他のメンバ―もいる中で、過去の自分に振り回されずにさまざまなことに挑戦していく唯花のことを舞は一番に応援しているのだった。
「これはオフレコだけど、最近はドラマの撮影もしたみたいで、放映が待ち遠しいのよね~!」
舞は唯花とメッセージでプライベートなやり取りしていることを、自慢げに話した。
「凄いね、唯花さん頑張ってるんだ。唯花さんは演技も上手いから、他の役者さんも驚いてるかも」
唯花から教わることはいつも丁寧で正確で、分かりやすいと知枝は感じていた。
「先輩は撮影したドラマのことを、生で観客の前で演技をする舞台演劇とは勝手が違うから、なかなか慣れなくて難しかったっていうけど、期待しないわけにはいかないわよねっ!」
映画では周りの役者やスタッフの前で、ベストな演技が求められる。
これは安直な偏見も混じるが、その場の観客が喜んでくれればいい演劇とは全くわけが違うという説明を唯花は舞にしていたが、唯花が話したことを全部覚えている舞ではなく、単純に舞にとっては唯花が活躍する姿を見られることを喜んでいる部分が多いのだった。
「これから……、どうしよっか? すっかりお昼過ぎちゃったけど」
知枝は時刻を確認しながら言った。映画を鑑賞する前に待ち時間もあったので、上映時間を終え、映画館を出るとすでに時刻は13時を回り、お腹も空かしている状況であった。
「じゃあ、デザパラ行きましょっ! スパゲティーもあるし、いいでしょ?」
「私はいいよ~。なかなか今までは行きづらかったから、二人と一緒に行けるのは嬉しいかな!」
唐突な舞の提案に知枝は即答で喜んで答えた。デザートは舞同様知枝も大好物だった。
「うん、僕もいいよ。二人が喜んでくれるなら」
微笑ましい光景を見て光もこう答えて満場一致となり、デザパラへと三人揃って向かうことになった。
知枝にとっては同じ年頃の日本の友達は少なく、お付きのプリミエールと二人で入るには目立つし面倒だと思って、なかなか行きたくても行けないタイプのお店だった。
ノリで決まった店選びとなり、知枝はテンション高く空腹と共に楽しみが増し増しになるのだった。
アイドルグループの成長や別れが描かれ、2時間近い上映時間はあっという間に過ぎていった。
「うううーーーっ!!! 最高だったなぁ!!」
舞はまだ目元に涙の跡を残したまま、濡れたハンカチを片手にしみじみと声を上げた。
光にとっては見慣れた光景であっても、舞の普段見せることない感情的な一面に知枝は驚かされた。
感動的なシーンでは感極まって涙を流していた舞と共に三人は日の当たる映画館の外へと出た。
映画を鑑賞した後の舞は腕を伸ばしながらご満悦といった調子で実に上機嫌だった。
舞のアイドル好きは小さい頃から元々あったが、唯花との出会いでその傾向はより大きいものとなった。
アイドルという職業や制約、活動自体にも興味関心があるようで、その辺りのスキャンダルやメンバー同士の対立や事務所との対立など、大人目線でのリアリティーのある描写も含めて、大変なことに巻き込まれることもあるが、歌って踊って努力をひたむきに続ける煌びやかな姿が光るアイドルという職業を舞は愛してやまないようだ。
文化的にもすでに成熟したアイドルに職業としてなりたくても、現実的には簡単になれるものではなく、たとえ目指しても多くの人がやがて挫折してしまう。
そういった競争率の高いハードルが存在することも、舞は受け入れているようで、純粋に頑張る唯花の姿を尊敬し続けているのだった。
「舞、相変わらず好きだねぇ」
舞ほどアイドルに興味があるわけではない光は、舞の満足気な様子を見ながらしみじみと一言、舞に向けて言った。
「唯花先輩が頑張ってる姿みたら、やっぱりアイドルって輝いてていいなぁって思っちゃうから、勝手に応援したい気持ちがどんどん湧いてくるのよね。
表には見えないところでも大変なことだってあって、挫折や嫉妬も経験しながらそれでも挫けずに努力して、仲間と一緒にメンバーそれぞれの個性を活かしながら、グループとしても成長して大きくなっていく、華やかでもあり切なくもある、やっぱりアイドルって最高なのよ!」
畳み掛けるように想いの内を語る舞。自分と変わらない年頃の等身大の少年少女が成長していく姿、その華やかな世界は舞でなくても憧れてやまないことだろう。
上機嫌に力説する舞を見ながら、知枝は自分にはそういう煌びやかな世界は縁がないけれどと内心思いながら、舞が明るい表情を浮かべてくれるのが嬉しかった。
「普段から唯花さんの気さくなところを見てるとイメージ湧かないけど、学生でありながらアイドルを続けてるって、影で凄い努力してるんだろうなぁ……」
知枝はしみじみと思った。舞から時々聞く程度だが、学園ではアイドルをしていることは隠し、そういった苦労は見せず、勉強や部活、図書委員を頑張っているのは本当にすごいと感じるのだった。
「唯花先輩は自己主張も控えめで、愚痴も言わないけど、凄く努力して、歌も上手いし、尊敬しちゃうところばかりなのよ」
唯花の話しをする舞はいつにも増して饒舌で、熱量があって、唯花のことになると急に熱弁して、自分の事のように力説しながら話すのだった。
「舞ってば、いつも唯花さんの歌聞いてるもんね」
舞の部屋から聞こえてくる唯花の歌声は日常の一部になり、すでに知枝にとっても馴染みのある音楽になっていた。
「そうよ、あたしは唯花先輩の一番のファンなんだから! バラードもポップスもみんな好きなんだから」
事務所に入って、活動場所を変えて、名前や姿も変えて、他のメンバ―もいる中で、過去の自分に振り回されずにさまざまなことに挑戦していく唯花のことを舞は一番に応援しているのだった。
「これはオフレコだけど、最近はドラマの撮影もしたみたいで、放映が待ち遠しいのよね~!」
舞は唯花とメッセージでプライベートなやり取りしていることを、自慢げに話した。
「凄いね、唯花さん頑張ってるんだ。唯花さんは演技も上手いから、他の役者さんも驚いてるかも」
唯花から教わることはいつも丁寧で正確で、分かりやすいと知枝は感じていた。
「先輩は撮影したドラマのことを、生で観客の前で演技をする舞台演劇とは勝手が違うから、なかなか慣れなくて難しかったっていうけど、期待しないわけにはいかないわよねっ!」
映画では周りの役者やスタッフの前で、ベストな演技が求められる。
これは安直な偏見も混じるが、その場の観客が喜んでくれればいい演劇とは全くわけが違うという説明を唯花は舞にしていたが、唯花が話したことを全部覚えている舞ではなく、単純に舞にとっては唯花が活躍する姿を見られることを喜んでいる部分が多いのだった。
「これから……、どうしよっか? すっかりお昼過ぎちゃったけど」
知枝は時刻を確認しながら言った。映画を鑑賞する前に待ち時間もあったので、上映時間を終え、映画館を出るとすでに時刻は13時を回り、お腹も空かしている状況であった。
「じゃあ、デザパラ行きましょっ! スパゲティーもあるし、いいでしょ?」
「私はいいよ~。なかなか今までは行きづらかったから、二人と一緒に行けるのは嬉しいかな!」
唐突な舞の提案に知枝は即答で喜んで答えた。デザートは舞同様知枝も大好物だった。
「うん、僕もいいよ。二人が喜んでくれるなら」
微笑ましい光景を見て光もこう答えて満場一致となり、デザパラへと三人揃って向かうことになった。
知枝にとっては同じ年頃の日本の友達は少なく、お付きのプリミエールと二人で入るには目立つし面倒だと思って、なかなか行きたくても行けないタイプのお店だった。
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