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第十六話「広いこの舞台の上で」2
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(次は映像研究部か……、こちらが一番のライバル、最も注意すべき相手だけど、今のフォーシスターズの演劇はオリジナルならではの華やかさもあって上手く仕上がっていた。
全体的なまとまりがどこまで発揮されるかは本番次第だけど、やってみないと分からないわね)
昨年に学園祭用で制作した映画ですでに経験値を活かせる映像研究部が有利であることに変わりはないが、正直、投票を入れる人のその時の気分によって結果は変わる。
羽月はフォーシスターズの人気のほどを正確に計算できていないこともあり、今回の演劇対決の結果は最後まで蓋を開けて見るまで分からないと、そう考えていた。
(……本番が始まってしまったら、みんなのことを信じて見守る事しかできない。他のクラスも当たり前だけど本気よね)
手を抜いてくれるような相手ではない。そのことは覚悟していたが、負けたくないという思いが気持ちを焦らせる。
やがて映像研究部の設営が終わり、掛け声と共に2クラス目のリハーサルが始まった。
映像研のミュージカル作品、巴里のアメリカ人。
去年の学園祭用に公開された映画版の際にも完成度の高さから、どちらが最優秀賞でもおかしくない出来栄えだった。
映像研のチームとしての成長が存分に感じられるものだっただけに、今回のミュージカル版の作品が面白くないわけがないという事前の見解は正しかった。
映画の時以上に臨場感があって迫力あるBGMや会場中に声の響く生の演技が、テンポよく心地良いまでにノンストップで舞台の上で繰り広げられ、その迫力は想像以上だった。
終盤の長いミュージカルシーンは圧巻で、その目が釘付けになるほどだ。ミュージカル全体を通してジャズやモダンの音楽とダンスシーンが華麗に描かれている。
リズ役のアンリエッタ・ヴェローナのプロ顔負けの演技も自信たっぷりで堂々としていて、存在感のあるダンスはもちろん、共演者と共に笑いと感動を時間いっぱいまでノンストップで心行くまで届けてくれる。
まだリハーサルにもかかわらずフィナーレを迎えると客席の生徒たちから拍手が一斉に鳴り、終わってしまうとあっという間に感じるほどに、完成度の高いものだった。
エンターテインメントとして完成度の高いものを見せつけられたと、釘付けになっていた演劇クラスの生徒は強く印象に残った。
「追加のエキストラなしで、あれだけ盛り上がるダンスシーンを繰り広げて、クラスのメンバーだけでこれをやりきるのは凄いね」
唯花はうっとりと感心した瞳で、淡々と片付けが始まる舞台上を見上げながら呟いた。
「俺達はこういう事はやってこなかったからな。参考になるところもたくさんあるが、俺たちがやるには身に余る部分もあるな」
ジャンル違いとはいえ、実力を見せつけられた形となった浩二たち。
パイプ椅子に並んで座っている浩二は唯花に言葉を返した。
浩二から見ても、彼らの披露したミュージカルは非の付けどころのないものだった。
「そうだよね……、ダンスとか歌とか、覚えないといけないことが増えると、それだけ荒い部分も出てきちゃうから。そこは映像研も分かってて、去年の学園祭で映画を制作した経験があるから、今回ここまで出来たってことだもんね」
歌やダンスの習得に苦難を感じてきた唯花ならではの見解だった。
「映像研だけあって考えてきてるな。一から考えるのは期間的に難しいから、出来るだけ経験を生かしてクォリティーの高いものを見せる。すでに出来ている素材を活かしながら全体をコントロールできるだけのメンバーが揃ってるから、生の演技でも違和感なく、むしろ新鮮な気持ちで鑑賞できるようになってる。よく考えられてるな」
浩二はライバルであることを意識しながら、その実力を称賛した。
「うん、一人一人の動きも合ってて感心しちゃうね」
自分たちとは違うパフォーマンスに感心して、唯花と浩二は互いに納得しあいながら、いよいよ自分たちの番が来ることに緊張していた。
「役割分担をして、丁寧に観客に劇を見せていくのも大切なことだろう。
さて、そろそろ準備を始めていかないとね、お二人さん」
隣で唯花と浩二の会話を聞いていた達也がそう言ってイスから立ち上がった。
それに合わせて浩二と唯花も遅れて立ち上がって、三人は揃って舞台袖に入り準備に取り掛かった。
映像研の実力を見せつけられても臆することはない。
負けられない気持ちをいっぱいに抱えながら、リハーサルの準備が始まる。
だが、そんな演劇クラスに慌てた様子で光がやってきた。
「大変だよ! お姉ちゃんが見当たらないんだ!」
光は息を切らし、かなり焦った様子で羽月の前に駆け寄って報告を入れた。
その慌てた様子を見て、何事かと周りのクラスメイトも心配そうに光の方を振り返った。
全体的なまとまりがどこまで発揮されるかは本番次第だけど、やってみないと分からないわね)
昨年に学園祭用で制作した映画ですでに経験値を活かせる映像研究部が有利であることに変わりはないが、正直、投票を入れる人のその時の気分によって結果は変わる。
羽月はフォーシスターズの人気のほどを正確に計算できていないこともあり、今回の演劇対決の結果は最後まで蓋を開けて見るまで分からないと、そう考えていた。
(……本番が始まってしまったら、みんなのことを信じて見守る事しかできない。他のクラスも当たり前だけど本気よね)
手を抜いてくれるような相手ではない。そのことは覚悟していたが、負けたくないという思いが気持ちを焦らせる。
やがて映像研究部の設営が終わり、掛け声と共に2クラス目のリハーサルが始まった。
映像研のミュージカル作品、巴里のアメリカ人。
去年の学園祭用に公開された映画版の際にも完成度の高さから、どちらが最優秀賞でもおかしくない出来栄えだった。
映像研のチームとしての成長が存分に感じられるものだっただけに、今回のミュージカル版の作品が面白くないわけがないという事前の見解は正しかった。
映画の時以上に臨場感があって迫力あるBGMや会場中に声の響く生の演技が、テンポよく心地良いまでにノンストップで舞台の上で繰り広げられ、その迫力は想像以上だった。
終盤の長いミュージカルシーンは圧巻で、その目が釘付けになるほどだ。ミュージカル全体を通してジャズやモダンの音楽とダンスシーンが華麗に描かれている。
リズ役のアンリエッタ・ヴェローナのプロ顔負けの演技も自信たっぷりで堂々としていて、存在感のあるダンスはもちろん、共演者と共に笑いと感動を時間いっぱいまでノンストップで心行くまで届けてくれる。
まだリハーサルにもかかわらずフィナーレを迎えると客席の生徒たちから拍手が一斉に鳴り、終わってしまうとあっという間に感じるほどに、完成度の高いものだった。
エンターテインメントとして完成度の高いものを見せつけられたと、釘付けになっていた演劇クラスの生徒は強く印象に残った。
「追加のエキストラなしで、あれだけ盛り上がるダンスシーンを繰り広げて、クラスのメンバーだけでこれをやりきるのは凄いね」
唯花はうっとりと感心した瞳で、淡々と片付けが始まる舞台上を見上げながら呟いた。
「俺達はこういう事はやってこなかったからな。参考になるところもたくさんあるが、俺たちがやるには身に余る部分もあるな」
ジャンル違いとはいえ、実力を見せつけられた形となった浩二たち。
パイプ椅子に並んで座っている浩二は唯花に言葉を返した。
浩二から見ても、彼らの披露したミュージカルは非の付けどころのないものだった。
「そうだよね……、ダンスとか歌とか、覚えないといけないことが増えると、それだけ荒い部分も出てきちゃうから。そこは映像研も分かってて、去年の学園祭で映画を制作した経験があるから、今回ここまで出来たってことだもんね」
歌やダンスの習得に苦難を感じてきた唯花ならではの見解だった。
「映像研だけあって考えてきてるな。一から考えるのは期間的に難しいから、出来るだけ経験を生かしてクォリティーの高いものを見せる。すでに出来ている素材を活かしながら全体をコントロールできるだけのメンバーが揃ってるから、生の演技でも違和感なく、むしろ新鮮な気持ちで鑑賞できるようになってる。よく考えられてるな」
浩二はライバルであることを意識しながら、その実力を称賛した。
「うん、一人一人の動きも合ってて感心しちゃうね」
自分たちとは違うパフォーマンスに感心して、唯花と浩二は互いに納得しあいながら、いよいよ自分たちの番が来ることに緊張していた。
「役割分担をして、丁寧に観客に劇を見せていくのも大切なことだろう。
さて、そろそろ準備を始めていかないとね、お二人さん」
隣で唯花と浩二の会話を聞いていた達也がそう言ってイスから立ち上がった。
それに合わせて浩二と唯花も遅れて立ち上がって、三人は揃って舞台袖に入り準備に取り掛かった。
映像研の実力を見せつけられても臆することはない。
負けられない気持ちをいっぱいに抱えながら、リハーサルの準備が始まる。
だが、そんな演劇クラスに慌てた様子で光がやってきた。
「大変だよ! お姉ちゃんが見当たらないんだ!」
光は息を切らし、かなり焦った様子で羽月の前に駆け寄って報告を入れた。
その慌てた様子を見て、何事かと周りのクラスメイトも心配そうに光の方を振り返った。
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