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第十六話「広いこの舞台の上で」5
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「羽月さん……」
隠れていたのに見つかってしまった私は力なく声を漏らした。
「ダメよ稗田さん、諦めちゃ。まだ、何も終わっていないわ」
強い意思の込められたはっきりと言い切った言葉に、このまま時間を潰そうと思っていた私の心は激しく乱された。
「私を呼びに来たんですか? それは、そうですよね……、勝手に飛び出して行ったきり帰ってこなかったら、羽月さん……、責任感じて捜しに来ますよね……。
でもダメなんです、私なんかじゃ無理なんです。
だからお願いです、今ならまだ間に合います、羽月さんが私の代わりに舞台に立ってください。
私には出来なくても、羽月さんならできるはずです。
羽月さんが作った脚本なんですから」
実力不足の私のことなんて放っておいてくれたらいいのにと……、そう思って言葉にしても羽月さんの意思は固く、とても折れてくれそうになかった。
「許さないわよ、そんなこと」
はっきりと羽月さんは決意を込めて言い放った。
「どうして……、どうして私でないといけないんですか? そんなの無理ですよ……。演技未経験の私がいきなりこの短い期間でなんて……。私が舞台に立っても一緒に恥をかくだけです、こんなことはやめましょうよ……っ」
私はすがるように懸命に訴えた。きっと私が舞台に立てば、私を選んだ羽月さんにも迷惑がかかる、“無茶な人選であった”と、そんなの、耐えられるわけがない。
「……私は、ずっと前から浩二と約束したの。一緒に演劇をしようって。
そのためには、私も含めて同じハードルを一度越えなければならない。そうでなければ、一緒に考えて同じ目標に向かって進んでいくことなんてできないわ」
羽月さんの紡ぐ言葉が頭の中で振動するように反響する。私の心を乱すような言葉が、私の諦めようとする意思を否定する。
約束という言葉が引き金になったのか、それが“検索するためのキーワード”として使われたかのように、無意識のうちに羽月さんと意識が繋がって、電気的な流れを持ったシナプス細胞とテレパシー能力を通じて接続された感触を感じ、ゾクっとした感覚に襲われる。
羽月さんが望んだのか、私が望んだのか、それも分からないまま、その接続された回路は、私の意思と関係なく、羽月さんの記憶の扉の中へと私を連れていく。
深く深く、記憶の奥深く深層に向かって、私はコントロール出来ないまま導かれていく。
羽月さんと樋坂君が“約束した”学園祭の日の光景が、頭の中で駆け巡っていく。
学園の屋上、夕日を背に身体を寄せ合い触れ合う、二人の唇。
自分から望んだわけでもないのに、記憶を勝手に覗き見てしまう。
私は制御の効かないまま勝手に、人の大切な部分に土足で足を踏み入れてしまっていた。
隠れていたのに見つかってしまった私は力なく声を漏らした。
「ダメよ稗田さん、諦めちゃ。まだ、何も終わっていないわ」
強い意思の込められたはっきりと言い切った言葉に、このまま時間を潰そうと思っていた私の心は激しく乱された。
「私を呼びに来たんですか? それは、そうですよね……、勝手に飛び出して行ったきり帰ってこなかったら、羽月さん……、責任感じて捜しに来ますよね……。
でもダメなんです、私なんかじゃ無理なんです。
だからお願いです、今ならまだ間に合います、羽月さんが私の代わりに舞台に立ってください。
私には出来なくても、羽月さんならできるはずです。
羽月さんが作った脚本なんですから」
実力不足の私のことなんて放っておいてくれたらいいのにと……、そう思って言葉にしても羽月さんの意思は固く、とても折れてくれそうになかった。
「許さないわよ、そんなこと」
はっきりと羽月さんは決意を込めて言い放った。
「どうして……、どうして私でないといけないんですか? そんなの無理ですよ……。演技未経験の私がいきなりこの短い期間でなんて……。私が舞台に立っても一緒に恥をかくだけです、こんなことはやめましょうよ……っ」
私はすがるように懸命に訴えた。きっと私が舞台に立てば、私を選んだ羽月さんにも迷惑がかかる、“無茶な人選であった”と、そんなの、耐えられるわけがない。
「……私は、ずっと前から浩二と約束したの。一緒に演劇をしようって。
そのためには、私も含めて同じハードルを一度越えなければならない。そうでなければ、一緒に考えて同じ目標に向かって進んでいくことなんてできないわ」
羽月さんの紡ぐ言葉が頭の中で振動するように反響する。私の心を乱すような言葉が、私の諦めようとする意思を否定する。
約束という言葉が引き金になったのか、それが“検索するためのキーワード”として使われたかのように、無意識のうちに羽月さんと意識が繋がって、電気的な流れを持ったシナプス細胞とテレパシー能力を通じて接続された感触を感じ、ゾクっとした感覚に襲われる。
羽月さんが望んだのか、私が望んだのか、それも分からないまま、その接続された回路は、私の意思と関係なく、羽月さんの記憶の扉の中へと私を連れていく。
深く深く、記憶の奥深く深層に向かって、私はコントロール出来ないまま導かれていく。
羽月さんと樋坂君が“約束した”学園祭の日の光景が、頭の中で駆け巡っていく。
学園の屋上、夕日を背に身体を寄せ合い触れ合う、二人の唇。
自分から望んだわけでもないのに、記憶を勝手に覗き見てしまう。
私は制御の効かないまま勝手に、人の大切な部分に土足で足を踏み入れてしまっていた。
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