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その1 影武者令嬢はわがまま王女に婚約破棄された公爵令息に求婚される
第9話 わがまま王女の秘密の計画(回想)
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舞踏会で、ウィリアムと踊りながら、アネットは楽しそうに秘密の計画を話していた。
しかし、アネットはふと悲しげな表情になると、目を伏せ、「ごめんなさい」と謝った。
「アネット、なぜ謝る?」
ウィリアムはアネットの手を引き寄せると、王女を優雅にくるりと回転させた。
「ジルをあなたから取り上げておいて、今度はあなたの名前を汚してしまうわ。『わがまま王女に婚約破棄された公爵令息』なんて、不名誉な称号を与えてしまう」
アネットがウィリアムから離れ、2人は手をつないだまま、見つめ合った。
「でも、このままあなたと結婚したら、あなたも、ジルも、ジークも、みんなを不幸にしてしまう」
それは、婚約破棄騒動が起こった晩餐会より半年ほど前のこと。
アネットとウィリアムはとある舞踏会に出席していた。
優雅な音楽の調べに乗って踊る、若く美しい王女とその婚約者のダンスに魅了されて、会場の人々はほうっ、とため息をついた。
ウィリアムは視線でジリアンの姿を探した。
長い金色の巻毛をきゅっと背中で結び、チュニックにブーツ、さりげなくマントを羽織っているが、その下に帯剣しているのをウィリアムは知っている。
ジリアンはまっすぐな性格だ。
厳しい訓練を積んで、本気でアネットを守る覚悟で、彼女と行動を共にしている。
生真面目な顔をして壁際に控えているが、整った容姿をした男装姿の彼女に、周囲の令嬢達がチラチラと熱い視線を注いでいるのを、ジリアン本人は気づいているのだろうか?
おまけになんだあの、ちょっとピンクに染まった可愛らしい頬。
周囲の令嬢達に圧倒されているのか、会場が暑いのか。
口下手でまっすぐな気性のジリアンが、彼女達に話しかけたりはしないのをわかっているのに、ウィリアムは不機嫌になった。
そんなウィリアムの様子を、一緒にダンスを踊っているアネットが面白そうに眺めていた。
「アネット、あなたはいつまで影武者が必要なんだ?」
「結婚するまでよ。夫ができたら、夫にわたくしを守らせるわ」
「ジークフリートは顔はいいが、剣の腕はもっといい。頭の出来は保証できないが、腹黒い奴だから、宮廷内の駆け引きならお手の物だろう」
「そうよ。そこはあなたとよく似ているわね。でも、あなたと違って、わたくし一筋の可愛い王子様なのよ。しかもジークは第2王子。……ねえ、わたくしのために、おムコに来てくれると思う?」
急に乙女の表情になったアネットに、ウィリアムは無表情のまま、片方の眉を上げる。
「まあ、頑張ってみろ。アネット、ジリアンは私が貰い受けよう」
アネットは可愛らしく微笑んだ。
しかし出てくる言葉は甘さのかけらもない。
「まるでモノ扱いね。そんな態度でジルがイエス、と言うかしらね?」
アネットはまた、くるりと優雅に回った。
「ジルは手強いわよ。いつも他人のことばかり考えているんだから。お手並み拝見といきましょう」
「そっちこそ。ジークフリートに振られたら、目も当てられない。言っておくが、返品は受け付けないぞ」
まあ、失礼ね、とアネットは頬を膨らませた。
もちろん、会場の人々は、仲睦まじそうに踊る2人の間にこんなやりとりがあったことなど知らない。
音楽が終わり、互いに一礼すると、周囲から2人のダンスを賞賛する拍手が沸き起こった。
しかし、アネットはふと悲しげな表情になると、目を伏せ、「ごめんなさい」と謝った。
「アネット、なぜ謝る?」
ウィリアムはアネットの手を引き寄せると、王女を優雅にくるりと回転させた。
「ジルをあなたから取り上げておいて、今度はあなたの名前を汚してしまうわ。『わがまま王女に婚約破棄された公爵令息』なんて、不名誉な称号を与えてしまう」
アネットがウィリアムから離れ、2人は手をつないだまま、見つめ合った。
「でも、このままあなたと結婚したら、あなたも、ジルも、ジークも、みんなを不幸にしてしまう」
それは、婚約破棄騒動が起こった晩餐会より半年ほど前のこと。
アネットとウィリアムはとある舞踏会に出席していた。
優雅な音楽の調べに乗って踊る、若く美しい王女とその婚約者のダンスに魅了されて、会場の人々はほうっ、とため息をついた。
ウィリアムは視線でジリアンの姿を探した。
長い金色の巻毛をきゅっと背中で結び、チュニックにブーツ、さりげなくマントを羽織っているが、その下に帯剣しているのをウィリアムは知っている。
ジリアンはまっすぐな性格だ。
厳しい訓練を積んで、本気でアネットを守る覚悟で、彼女と行動を共にしている。
生真面目な顔をして壁際に控えているが、整った容姿をした男装姿の彼女に、周囲の令嬢達がチラチラと熱い視線を注いでいるのを、ジリアン本人は気づいているのだろうか?
おまけになんだあの、ちょっとピンクに染まった可愛らしい頬。
周囲の令嬢達に圧倒されているのか、会場が暑いのか。
口下手でまっすぐな気性のジリアンが、彼女達に話しかけたりはしないのをわかっているのに、ウィリアムは不機嫌になった。
そんなウィリアムの様子を、一緒にダンスを踊っているアネットが面白そうに眺めていた。
「アネット、あなたはいつまで影武者が必要なんだ?」
「結婚するまでよ。夫ができたら、夫にわたくしを守らせるわ」
「ジークフリートは顔はいいが、剣の腕はもっといい。頭の出来は保証できないが、腹黒い奴だから、宮廷内の駆け引きならお手の物だろう」
「そうよ。そこはあなたとよく似ているわね。でも、あなたと違って、わたくし一筋の可愛い王子様なのよ。しかもジークは第2王子。……ねえ、わたくしのために、おムコに来てくれると思う?」
急に乙女の表情になったアネットに、ウィリアムは無表情のまま、片方の眉を上げる。
「まあ、頑張ってみろ。アネット、ジリアンは私が貰い受けよう」
アネットは可愛らしく微笑んだ。
しかし出てくる言葉は甘さのかけらもない。
「まるでモノ扱いね。そんな態度でジルがイエス、と言うかしらね?」
アネットはまた、くるりと優雅に回った。
「ジルは手強いわよ。いつも他人のことばかり考えているんだから。お手並み拝見といきましょう」
「そっちこそ。ジークフリートに振られたら、目も当てられない。言っておくが、返品は受け付けないぞ」
まあ、失礼ね、とアネットは頬を膨らませた。
もちろん、会場の人々は、仲睦まじそうに踊る2人の間にこんなやりとりがあったことなど知らない。
音楽が終わり、互いに一礼すると、周囲から2人のダンスを賞賛する拍手が沸き起こった。
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