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その1 影武者令嬢はわがまま王女に婚約破棄された公爵令息に求婚される
第8話 わがまま王女の婚約破棄(2)
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アネットがジリアンを見上げた。
まるで姉妹のような、同じ明るい金色の巻毛、鮮やかな青の瞳をした2人の少女が見つめ合う。
アネットは濃いピンク色のふわりとしたドレスを身に付けていて、まるで1輪のバラの花のようだった。
ちょっと不満そうに目を細め、キュッと唇を結んだその表情は、時に『わがまま王女』と宮廷貴族達に揶揄される姿そのものだったが、子どもの頃から一緒に過ごしてきたジリアンが見ても愛らしい。
ジリアンが首の後ろでまとめた明るい金色の巻毛を揺らし、大きな明るい青の瞳を潤ませて、かすかに唇を震わせながらアネットを見つめると、アネットは一瞬、困ったように眉を下げた。
「殿下、ウィリアムは……!」
ジリアンはそう話しかけて、声が震えてしまっていた。
深呼吸をして、改めて話し始める。
「殿下、殿下はとても思慮深いお方です。決して、噂で言われているような、『わがまま』王女などではないことは、幼い頃からご一緒している私は存じております。思いつきでーー婚約破棄をされたのではないはず」
ジリアンは、アネットを見つめた。
「しかし! 今はいったん、ウィリアムと2人で、お2人で話されるべきではーーこんな形で婚約破棄をする理由はありません!」
アネットは無言だった。
しかし、ようやく我に返った大臣達が、騒ぎ始めた。
「ジリアン殿! 王女殿下に意見するとは、何事ですか!?」
「王女殿下の護衛に過ぎないあなたが言っていいことではない!」
自分を非難する人々に、ジリアンは正面から向き合って、ぴしゃりと言い返した。
「臣下の想いに耳を傾けることなく、人の上に立てますでしょうか!?」
睨み合うジリアンと大臣達の会話を遮るように、アネットが静かに口を開いた。
「いいのよ、ジリアン。あなたの言うことはわかるわ。臣下の意見は、これからも耳を傾けるつもり。でも、わたくしはもう決めたの。もちろん、何度も考えた結果よ」
ジリアンの目から涙がこぼれ落ちそうになった瞬間、横からウィリアムがジリアンの腕を引いた。
「もういい、ジル。さあ行こう」
「しかし、ウィル!」
ウィリアムは無言で、ジリアンの腕を掴んだまま、テーブルから離れた。
「ジリアン、もうわたくしの影武者になる必要はないわ」
ジリアンの背後から、アネットの不機嫌そうな声が届いた。
「殿下……!?」
「だからもう、わたくしに構わないでちょうだい」
ジリアンがウィリアムの腕を振り解いて、振り返った。
気が昂って、幼かった頃のように叫んだ。
「アネット! ウィリアムの気持ちはどうなるんだ! なんてひどいことを」
「ジリアン殿! 王女殿下に対して不敬ですぞ!」
ばーん、とテーブルを叩き、我慢しきれなくなった財務大臣が叫ぶと、晩餐会のテーブルは大混乱になった。
ウィリアム・ディーンは今度こそジリアンの腕をしっかりと掴むと、一礼して、彼女を連れてバンケットホールを退出した。
* * *
ローデール王国を守る将軍の娘であるジリアンは、第一王女アネットと同じ年に生まれ、同じ髪、同じ目の色をしていた。
背格好もよく似ていたジリアンは、幼い頃は王女の遊び相手、そして学友に、成長してからは騎士となるべく訓練を重ね、王女の護衛騎士に、さらには影武者となり、王女に仕えてきた。
公爵家の令息であるウィリアム・ディーンもまた、アネットの学友に選ばれた1人で、アネット、ジリアン、ウィリアムの3人は幼なじみとして多くの時間を過ごしてきた仲だったのだ。
今でも、3人で会えば、アネット、ジル、ウィル、とお互いに呼び合うくらい、気の置けない関係だと思っていたのに。
ジリアンは黙ってウィリアムに腕を引かれて、王宮の回廊を歩きながら考えていた。
そして思い出す。
学友仲間には、もう1人、隣国から留学していたジークフリートもいた。
ジークフリートは、隣国の第2王子だったが、アネットとウィリアムの婚約後、突然、母国へ帰国してしまったのだった。
* * *
ぱたん、と閉まった扉の向こうに、ウィリアムとジリアンの姿が消えた。
2人の姿を見送ったアネットは心の中でそっとつぶやく。
(ひどいと思うなら、ウィリアムを幸せにしてあげて)
(わたくしは、もう少しの間、『わがまま王女』らしくいなければいけない)
まるで姉妹のような、同じ明るい金色の巻毛、鮮やかな青の瞳をした2人の少女が見つめ合う。
アネットは濃いピンク色のふわりとしたドレスを身に付けていて、まるで1輪のバラの花のようだった。
ちょっと不満そうに目を細め、キュッと唇を結んだその表情は、時に『わがまま王女』と宮廷貴族達に揶揄される姿そのものだったが、子どもの頃から一緒に過ごしてきたジリアンが見ても愛らしい。
ジリアンが首の後ろでまとめた明るい金色の巻毛を揺らし、大きな明るい青の瞳を潤ませて、かすかに唇を震わせながらアネットを見つめると、アネットは一瞬、困ったように眉を下げた。
「殿下、ウィリアムは……!」
ジリアンはそう話しかけて、声が震えてしまっていた。
深呼吸をして、改めて話し始める。
「殿下、殿下はとても思慮深いお方です。決して、噂で言われているような、『わがまま』王女などではないことは、幼い頃からご一緒している私は存じております。思いつきでーー婚約破棄をされたのではないはず」
ジリアンは、アネットを見つめた。
「しかし! 今はいったん、ウィリアムと2人で、お2人で話されるべきではーーこんな形で婚約破棄をする理由はありません!」
アネットは無言だった。
しかし、ようやく我に返った大臣達が、騒ぎ始めた。
「ジリアン殿! 王女殿下に意見するとは、何事ですか!?」
「王女殿下の護衛に過ぎないあなたが言っていいことではない!」
自分を非難する人々に、ジリアンは正面から向き合って、ぴしゃりと言い返した。
「臣下の想いに耳を傾けることなく、人の上に立てますでしょうか!?」
睨み合うジリアンと大臣達の会話を遮るように、アネットが静かに口を開いた。
「いいのよ、ジリアン。あなたの言うことはわかるわ。臣下の意見は、これからも耳を傾けるつもり。でも、わたくしはもう決めたの。もちろん、何度も考えた結果よ」
ジリアンの目から涙がこぼれ落ちそうになった瞬間、横からウィリアムがジリアンの腕を引いた。
「もういい、ジル。さあ行こう」
「しかし、ウィル!」
ウィリアムは無言で、ジリアンの腕を掴んだまま、テーブルから離れた。
「ジリアン、もうわたくしの影武者になる必要はないわ」
ジリアンの背後から、アネットの不機嫌そうな声が届いた。
「殿下……!?」
「だからもう、わたくしに構わないでちょうだい」
ジリアンがウィリアムの腕を振り解いて、振り返った。
気が昂って、幼かった頃のように叫んだ。
「アネット! ウィリアムの気持ちはどうなるんだ! なんてひどいことを」
「ジリアン殿! 王女殿下に対して不敬ですぞ!」
ばーん、とテーブルを叩き、我慢しきれなくなった財務大臣が叫ぶと、晩餐会のテーブルは大混乱になった。
ウィリアム・ディーンは今度こそジリアンの腕をしっかりと掴むと、一礼して、彼女を連れてバンケットホールを退出した。
* * *
ローデール王国を守る将軍の娘であるジリアンは、第一王女アネットと同じ年に生まれ、同じ髪、同じ目の色をしていた。
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公爵家の令息であるウィリアム・ディーンもまた、アネットの学友に選ばれた1人で、アネット、ジリアン、ウィリアムの3人は幼なじみとして多くの時間を過ごしてきた仲だったのだ。
今でも、3人で会えば、アネット、ジル、ウィル、とお互いに呼び合うくらい、気の置けない関係だと思っていたのに。
ジリアンは黙ってウィリアムに腕を引かれて、王宮の回廊を歩きながら考えていた。
そして思い出す。
学友仲間には、もう1人、隣国から留学していたジークフリートもいた。
ジークフリートは、隣国の第2王子だったが、アネットとウィリアムの婚約後、突然、母国へ帰国してしまったのだった。
* * *
ぱたん、と閉まった扉の向こうに、ウィリアムとジリアンの姿が消えた。
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(ひどいと思うなら、ウィリアムを幸せにしてあげて)
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