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39 殺気
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幼子の風貌の天狗ではあるが、油断ならないと朧は警戒心を露わにする。
「お前、一回殺されとくか?」
いつもの可愛らしい言い回しではなく、低いドスの効いた声で、朧が言葉を口にした。
体がもりもりと大きくなり、丸顔の可愛らしい猫の顔から、口が大きく裂け、牙を剥き、鼻筋には皺がより敵対心がより鮮明に感じられる。
朱丸は、通常ではない殺気に当てられ、声も出せずに佐久夜の胸元に飛び込み姿を隠した。
「ひぃっ!」
小さく悲鳴を上げ、京平も腰を抜かし座り込んだ。
朧は、大きく短い尻尾を左右に揺らしながら、佐久夜たち以上に大きくなった身体で、ゆっくりと天狗に近づいていく。
佐久夜は、ぐっと拳を握り締め気を失いそうな恐怖に耐え忍ぶ。大きく息を吸い込んで、呼吸を整えていく。
「待て!朧!!攻撃は、絶対に許さない」
天狗と朧の顔が、今にもぶつかり、争いが始まりそうな中、佐久夜は大きな声で朧を制止する。
朧が、不機嫌そうな表情で、佐久夜の方に振り向いた。
「朧。俺は、神さまを優しい神さまとして祀りたい。闇を背負わせたくないんだ」
ギロリと釣り上がった目で、佐久夜を睨みつける。
「そんなもの、理想論に過ぎん!この『ウラ』から無事生還したいのなら、オイラに従うべきだ!」
低く、地響きが伴う朧の叫び。
確かに、佐久夜たちは、『ウラ』について、全く知識もない。朧に守られ続けている事も解っている。
佐久夜は、恐怖が支配しそうな雰囲気の中、一歩、また一歩朧に近づいて行った。
佐久夜の身の丈以上の大きさとなった朧の顔を、佐久夜は両手を広げて優しく抱きしめた。
朧の深く皺の刻まれた鼻筋に、佐久夜は頬をすり寄せた。
「解ってる。朧は、俺たちを守ってくれてること」
「甘い!佐久夜は、甘いぞ」
「知ってる。だけど、俺のために、朧が傷ついて欲しくないんだ」
朧の鼻筋の皺が、ゆっくりと伸びていく。佐久夜に抱きしめられ、朧はグルグルと喉を鳴らし始めた。
「オイラが、守りたいんだ」
「ありがとう…朧。いつも、守ってもらってるよ」
朧の雰囲気が柔らかくなり、殺気が少しずつ収まっていく。佐久夜の胸元からも、朱丸が飛び出して、朧にしがみついた。
「オッチャン、僕ももっともっと強くなるから……帰ってきて!」
ポロポロ涙を流し、朱丸も訴えた。徐々に体が小さくなっていく朧。いつもの猫の大きさまで戻ると、佐久夜は朧を抱きかかえた。そして、天狗に向き合った。
ばっと、天狗は、膝を折り、腕を地面につけて佐久夜に傅いた。
「佐久夜さま!試すような真似をして申し訳ございませんでした。朧さまが、なぜ、人間如きをそこまで守ってらっしゃるのか計ることができませんでした。俺なりに、守るべく主君に値するのか、確かめるべく、一つ芝居を打ちました」
「主君?」
「ダメにゃ!」
佐久夜が、首を傾げた途端に、すぐさま朧が否定の声を上げた。再び、ニヤリと天狗が笑う。
「はい、この天狗め、ずっと佐久夜さまについて行きます」
「ダメにゃー!」
再び、朧の雄叫びが、茂みに響いた。
「お前、一回殺されとくか?」
いつもの可愛らしい言い回しではなく、低いドスの効いた声で、朧が言葉を口にした。
体がもりもりと大きくなり、丸顔の可愛らしい猫の顔から、口が大きく裂け、牙を剥き、鼻筋には皺がより敵対心がより鮮明に感じられる。
朱丸は、通常ではない殺気に当てられ、声も出せずに佐久夜の胸元に飛び込み姿を隠した。
「ひぃっ!」
小さく悲鳴を上げ、京平も腰を抜かし座り込んだ。
朧は、大きく短い尻尾を左右に揺らしながら、佐久夜たち以上に大きくなった身体で、ゆっくりと天狗に近づいていく。
佐久夜は、ぐっと拳を握り締め気を失いそうな恐怖に耐え忍ぶ。大きく息を吸い込んで、呼吸を整えていく。
「待て!朧!!攻撃は、絶対に許さない」
天狗と朧の顔が、今にもぶつかり、争いが始まりそうな中、佐久夜は大きな声で朧を制止する。
朧が、不機嫌そうな表情で、佐久夜の方に振り向いた。
「朧。俺は、神さまを優しい神さまとして祀りたい。闇を背負わせたくないんだ」
ギロリと釣り上がった目で、佐久夜を睨みつける。
「そんなもの、理想論に過ぎん!この『ウラ』から無事生還したいのなら、オイラに従うべきだ!」
低く、地響きが伴う朧の叫び。
確かに、佐久夜たちは、『ウラ』について、全く知識もない。朧に守られ続けている事も解っている。
佐久夜は、恐怖が支配しそうな雰囲気の中、一歩、また一歩朧に近づいて行った。
佐久夜の身の丈以上の大きさとなった朧の顔を、佐久夜は両手を広げて優しく抱きしめた。
朧の深く皺の刻まれた鼻筋に、佐久夜は頬をすり寄せた。
「解ってる。朧は、俺たちを守ってくれてること」
「甘い!佐久夜は、甘いぞ」
「知ってる。だけど、俺のために、朧が傷ついて欲しくないんだ」
朧の鼻筋の皺が、ゆっくりと伸びていく。佐久夜に抱きしめられ、朧はグルグルと喉を鳴らし始めた。
「オイラが、守りたいんだ」
「ありがとう…朧。いつも、守ってもらってるよ」
朧の雰囲気が柔らかくなり、殺気が少しずつ収まっていく。佐久夜の胸元からも、朱丸が飛び出して、朧にしがみついた。
「オッチャン、僕ももっともっと強くなるから……帰ってきて!」
ポロポロ涙を流し、朱丸も訴えた。徐々に体が小さくなっていく朧。いつもの猫の大きさまで戻ると、佐久夜は朧を抱きかかえた。そして、天狗に向き合った。
ばっと、天狗は、膝を折り、腕を地面につけて佐久夜に傅いた。
「佐久夜さま!試すような真似をして申し訳ございませんでした。朧さまが、なぜ、人間如きをそこまで守ってらっしゃるのか計ることができませんでした。俺なりに、守るべく主君に値するのか、確かめるべく、一つ芝居を打ちました」
「主君?」
「ダメにゃ!」
佐久夜が、首を傾げた途端に、すぐさま朧が否定の声を上げた。再び、ニヤリと天狗が笑う。
「はい、この天狗め、ずっと佐久夜さまについて行きます」
「ダメにゃー!」
再び、朧の雄叫びが、茂みに響いた。
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