パーティに見捨てられた罠師、地龍の少女を保護して小迷宮の守護者となる~ゼロから始める迷宮運営、迷宮核争奪戦~

お茶っ葉

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十一話 罠集め

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「……許せません。絶対に許せません」

 僕たちの前でフォンが怒りに燃えていた。
 ダントはそんな少女の前で、ただずっと頭を下げ続けている。
 僕はというと、何というか逆に冷静になる事ができた。本来、怒るのは僕の方なんだけど。

「リーンを裏切って、殺そうとしておいて、謝って済ませようとするだなんて……!」
「すまない……あの時はどうかしていたんだ。絶望的な状況で、冷静な判断ができなかった」
「リーンだってそれは同じです。いえ、それ以上に苦しんだはずです。悲しかったはずです! 貴方たちがそうさせました!」
「その通りだ……許される行為ではなかった」

 やはり【鋼の剣】の中ではダントはまともな方だ。
 過ちを認めて年下である僕に頭を下げてくれる。簡単なようで難しいことだ。
 元々ダントはカルロスの暴走を諫めることが多かった。
 彼の言う通り、あの時は彼自身も他人に構っていられる状態じゃなかったのだろう。

「ありがとうフォン。もういいんだ」
「ですが……!」
「これ以上、この件で時間を取られたくない。ほら、僕たちには目的があるんだからさ」

 迷宮核を育て上げ、ユグドラシル最上層を目指し、始祖の魔術を手に入れる。
 やらなきゃいけない事が山積みなのに、ダントやカルロスに構っている暇なんてない。
 そうだ、別に謝って欲しかった訳じゃない。そういう段階はとっくに超えてしまっている。

 僕は用意していた袋をダントに投げ渡す。

「これは……?」
「五日分の食料と水です。それさえあれば――運が良ければ貴方だけでも地上へ戻れるはずです」
「リーン……!」

 僕が渡したのは一人分のみ。カルロスたちの分は計算に含まれていない。
 キラーマンティスの討伐に力を貸してくれたお礼だ。ここは別けて考えるべきだろう。
 
「これでもう終わりにしましょう。……二度と僕の前に現れないでください」
「ああ、約束する。本当にすまなかった……それから、ありがとう。お前は命の恩人だ」

 最後に深く頭を下げてから、ダントは姿を消した。
 あとはもう僕は関与しない。贈り物をどうするかは彼次第だ。 

「リーン、これでよかったのですか?」
「……復讐した方がよかったかな。ダントを殺して、迷宮核の栄養にする方が正解だった?」

 そこまで想像して、カルロスに向けられた狂気を思い出す。
 僕も誰かを喜々として殺す時は、あんな顔を浮かべてしまうのだろうか。
 嫌だなと思う。あんな奴と一緒になりたくない。人としての分別は持ちたい。
 
「私は……魔族なのでよくわかりませんが。リーンが嫌だと思ったのなら、それでいいと思います」

 フォンはそう言って、僕の行動を肯定してくれた。
 境遇が似た者同士だからか、彼女は一番欲しい言葉をかけてくれる。
 あんまり甘えすぎるのもよくないな。よし、気持ちを切り替えていこう。

「そういえば、キラーマンティスから得られた魔力はどうだった?」

 待望の戦果報告の時間だ。フォンの次の言葉を楽しみに待つ
 魔石以外では効率が悪いとはいえ、仮にも第二層の支配者だ報酬も期待できる。
 
「それはもう大量でした。なんと、ウルフ十匹分です!」
「おおお――――――おぉう?」

 それが凄いのかどうか、僕にはよくわからない。
 ブルースライム六匹がウルフ一匹と同等だとすると、キラーマンティスはブルースライム六十匹分。
 マッドウルフの群れを倒してブルースライムが三匹だから。そう考えるとかなり魔力を蓄えていたな。
 
 ……いやいや駄目だろう。このままじゃ破産する。
 消費した罠種の量とまるで釣り合いが取れていない。
 
「今後は魔石集めに切り替えようか。魔物狩りはあくまで余裕がある時にしよう」
「その方がいいみたいですね。では、今日はこれからどうしましょう。お休みします?」
「今回消費した分を多少は取り戻したいかな」
「リーンの罠集めですね」

 という事で、僕たちは小迷宮から出て落ちている罠を探しに行く。
 ブルースライム三匹と、先ほど稼いだ魔力でウルフを一匹だけ召喚しておいた。
 変異種を倒した直後だからこの辺りは平和だろうけど。念のため警戒させておこう。

「第二層では矢罠や泥沼の罠が見つかる事が多いね。レアなのは落石罠かな、毒矢や麻痺矢があれば嬉しいけど。あ、フォンは【幻影ノ森】に住んでいるからそれくらい知っているか」
「いえ、私は殆ど引き籠っていたので……罠も、矢罠程度なら当たっても痛くないです」
「龍って凄いな。ひ弱な僕なんかだと一発で戦闘不能になっちゃうよ」
「カチカチです。地龍は硬さと生命力だけが取り柄ですから」

 フォンはちょっとだけ自慢げに答えてくれた。内容はとても謙虚だったけど。
 しかし矢罠にも種類があり、毒矢や麻痺矢はどれだけ身体が硬くても触れるだけで危険だ。
 威力が低いからと油断してはいけないと伝えておく。素直なフォンはしっかりと学んでくれた。 

 ユグドラシルで発生する罠には特に決まった位置などはなく。
 一ヶ所に罠が複数設置されていたり、大きな空間にトラバサミ一つだけだったりと。
 仕掛けられている内容も完全にランダムなので、欲しい罠を狙って集めることは難しい。

「矢罠は射程に入った生物に反応して矢を射出する。固定砲台だから背後に回れば無力だよ」
「あそこにある色が少し違う地面は、あれも罠ですか?」
「よく気付いたね。色が違うのは泥沼の罠で、一定以上の重量に反応して発動するんだ」
「私は昔から眼もいいんです。母様に褒められていましたから。あちらにも罠がありますね」

 飲み込みの早いフォンは次々と罠を見つけてくれる。僕一人で探すより早い。
 見つけた罠を手で触れて種に変えていく。僕の《罠師》は触れるだけで罠を無力化する。
 種類ごとに分けて袋に入れる。戦闘用、足止め用、そして緊急用。ポケットにも何粒か。
 
 僕の最高到達点は第五層。基本は第二層までを往復している。
 罠解除スキル持ちは需要があるので、色んなパーティを転々とすることが多い。
 中にはかなり上位のパーティもあって、緊急用の罠はその時に手に入れた第五層の罠だ。
 
「今日はこの辺で終わりにしようか。フォンのおかげでかなり集まったよ」

 今回の探索の成果を眺める。罠種が三十個ほど。
 僕一人だと同じ時間をかけて十個集まれば良い方だ。
 
「私はまだ頑張れますよ? リーンは疲れたのですか?」
「まぁ流石に、変異種は強敵だったからね。緊張もしたし、疲れたよ」 
「わかりました。戻ったらブルースライムでベッドを作りますね。柔らかくて気持ちがいいです。きっとリーンも気に入ります」

 フォンがブルースライムに包まれる。ブヨンブヨンしてて確かに寝心地は良さそうだ。
 それにしてもまるで捕食されているみたいだ。魂がないとはいえ見た目は普通の魔物だし。
 ふと空を見上げると徐々に暗くなってきている。ここから先は魔の時間だ。早く小迷宮に戻ろう。

 二人並んでフォンの小迷宮を目指していると、目の前に赤い物体が横切った。
 中心に魔核を持ち、ブヨブヨした身体はブルースライムに瓜二つ。ただし異様に動きが早い。

「あれ、今のって……!」

 第二層にはスライム系の魔物は存在しない。僕たちが連れているのも創造したものだ。
 すぐにフォンに確かめる。フォンもまた緊張した面持ちで頷いていた。

「……別の守護者の魂無き獣です」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◇落石罠 
 第二層から出現するようになる広範囲に打撃を与える罠。
 実際に脅威となるのは第三層と第四層で、【幻影ノ森】では稀にしか発生しない。
 周辺環境を無視して頭上に転移ゲートが開き、大量の岩が落ちてくる。地形にも影響を与える。
 直撃すれば軽傷では済まされない。発動までに若干の猶予があるのでさっさと逃げてしまおう。
 足止めの罠と同時に発動してしまうと危険極まりないので、見つけ次第優先的に解除される。

 リーンの所持罠種

 矢罠 10→30(+20)
 矢罠(麻痺) 3
 矢罠(毒) 1
 トラバサミ 2→6(+4)
 落石罠 3
 爆発罠 2
 泥沼罠 2→8(+6)
 移動床 2
 ワープ罠 1
 落とし穴 2
 警報罠 2
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