12 / 28
十二話 新たな守護者
しおりを挟む
「レッドスライムだ。ブルースライムと同じGランクだけど、少しだけ強いんだ」
赤いスライムがウネウネと俊敏に動き回っている。
幸運にもどうやらこちらには気付いていないらしい。
「あれは、確実に守護者によって操作されていますね」
「僕たちが生み出せない魂無き獣だ。こちらの迷宮核よりも等級が高い可能性がある」
守護者がいない破棄された小迷宮にも、魂無き獣が残っている場合がある。
彼らは自らの意思でユグドラシルに出てくる事はない。小迷宮を守護するだけに留まる。
つまり外で活動している魂無き獣は、確実に誰かの指示の元で動いているのだ。
「あとを追いかけよう。敵の住処を確かめておかないと」
「はい。先手を打たれる前に行動するべきですね」
守護者との争いは迷宮核の奪い合いだ。つまり最終的には攻め勝つ必要がある。
僕の罠は防衛に使えても、相手の領域を攻めるのには向いていない。
主戦力が魂無き獣である以上、そこで劣ってしまうと正攻法では厳しい戦いになる。
レッドスライムが【幻影ノ森】にある開けた空間に出ていた。
木々が薙ぎ倒されていて、水源も近い。変異種が住み着いていた場所なんだろうか。
中央にある岩場の陰に空洞があった。レッドスライムが中に入っていく。
「割と近場に敵の小迷宮があったんだ。この辺は水源があるし変異種がいたから近付けなかったけど」
「……変異種をうまく利用して、最低限の魔力で防衛していたのかもしれません」
「となると、相手もそこまで魔力を蓄えていない可能性はあるね」
ユグドラシルに生息する魔物は、魔族だろうと関係なく襲ってくる。
防衛に変異種の縄張りを利用するなんて、かなり危険度の高い賭けだろう。
レッドスライムも第一層に生息する魔物だ。
第二層の魔物と戦うには戦力として心許ない。それをわざわざ偵察に使うなんて。
相手も僕たちと同じで、魔力の確保に相当苦労しているんじゃないだろうか。
「うん、今のところそこまでの脅威は感じないね。まぁ油断しないに越した事はないけど。レッドスライムもブルースライム三匹で戦わせれば勝てるだろうし、ウルフ一匹でも余裕を持って戦える」
「小迷宮もそこまでの規模はなさそうです。出入口も一つだけではないでしょうか?」
「だろうね、門番の変異種を倒されて慌てて様子を伺いにきたってとこかな」
最初の相手としては、かなり弱いのを引けたかもしれない。
さっそくフォンにお願いして、ウルフを一匹、入り口まで進めさせる。
一度フォンの小迷宮に戻って体制を整えるか悩んだけど、相手が場所を移動する可能性がある。
変異種を討伐した何者かの存在を相手は警戒しているだろうし、ここで逃すのはあまりに勿体ない。
「お、さっそく慌てて出てきたぞ。レッドスライムが五匹だ」
「ウルフ一匹では厳しそうですね。三匹ほど追加します」
キラーマンティスから得られた魔力を使ってウルフが追加される。
魂無き獣同士がぶつかり合う。お互いGランクではあるが、種族としての差が響いたか。
ウルフ側の圧勝だった。地面にキラキラ輝く石が落ちている、レッドスライムの屑魔石だ。
「こうして召喚に使われた魔力の何割かが、魔石となって返ってくるんだね」
「下手に弱い魂無き獣を増やしすぎても、相手に魔力が渡ってしまう。難しいです」
無駄に召喚してはいけない事を学んだところで。
僕たちは相手の小迷宮の中に入っていく。先行するのはウルフ四匹。
入り口での攻防戦を見るに、相手の戦力はもう殆ど残されていないのではないだろうか。
「……やはり、小迷宮内とそれ以外でコストが違いますね」
「どうしたの?」
フォンがずっと迷宮核を弄りながら納得したような顔になっている。
「先ほど外でウルフを召喚しましたが、掛かる魔力コストが若干増えていたのです」
「んーつまり。迷宮核を使う場合、小迷宮内じゃないと損をするって事かな?」
「現状もコストが増加したままなので、自分の小迷宮でなければいけないようですね」
「それはちょっと困ったな。ただでさえ魔力不足なのに、今後は外での召喚も控えるべきか」
新たな事実が発覚したが、今はそれどころじゃない。
小迷宮は一本道だった。拡張するだけの余裕もなかったのか。
「――――タチサレ」
薄暗い小迷宮内を反響する女性の声。
僕たちは気にせず前に進む。ウルフたちは欠伸していた。
魂無き獣は模倣した魔物の習慣までも真似するらしい。
「――――タ、タチサレ。タチサッテクダサイ、オネガイシマス」
まったく足が止まらない僕たちに驚いたのか。
声の主は急に丁寧な口調に変わっていた。殆ど命乞いに近い。
「……指摘するのもなんだけど。我慢しているみたいだけど、声がずっと震えているよ?」
「はい。まったく怖くありませんでした」
「そ、そんなぁ……!」
最深部で待ち構えていたのは少女だった。
彼女の手にあるのはフォンの持つものと同じ色の迷宮核。
「た、助けてください……降参しますので……お願いします」
僕たちの最初の迷宮核争奪戦は、こうして呆気なく終わってしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇レッドスライム
ブルースライムと同じGランクの魔物。全身が赤色で青色よりも三倍速い。
しかしながら戦闘力は三倍どころか二倍にも届かず、ランク通りの雑魚である。
赤色だからといって肉食というわけでもなく、青色共々花の蜜を好む温厚な性格。
狭い所が好きで、よく冒険者の鞄の中に入り込む。魔法書などがドロドロになる被害も。
素材として採れる赤い液は大変甘く、薬だけでなくお菓子の材料に重宝されるとか。
赤いスライムがウネウネと俊敏に動き回っている。
幸運にもどうやらこちらには気付いていないらしい。
「あれは、確実に守護者によって操作されていますね」
「僕たちが生み出せない魂無き獣だ。こちらの迷宮核よりも等級が高い可能性がある」
守護者がいない破棄された小迷宮にも、魂無き獣が残っている場合がある。
彼らは自らの意思でユグドラシルに出てくる事はない。小迷宮を守護するだけに留まる。
つまり外で活動している魂無き獣は、確実に誰かの指示の元で動いているのだ。
「あとを追いかけよう。敵の住処を確かめておかないと」
「はい。先手を打たれる前に行動するべきですね」
守護者との争いは迷宮核の奪い合いだ。つまり最終的には攻め勝つ必要がある。
僕の罠は防衛に使えても、相手の領域を攻めるのには向いていない。
主戦力が魂無き獣である以上、そこで劣ってしまうと正攻法では厳しい戦いになる。
レッドスライムが【幻影ノ森】にある開けた空間に出ていた。
木々が薙ぎ倒されていて、水源も近い。変異種が住み着いていた場所なんだろうか。
中央にある岩場の陰に空洞があった。レッドスライムが中に入っていく。
「割と近場に敵の小迷宮があったんだ。この辺は水源があるし変異種がいたから近付けなかったけど」
「……変異種をうまく利用して、最低限の魔力で防衛していたのかもしれません」
「となると、相手もそこまで魔力を蓄えていない可能性はあるね」
ユグドラシルに生息する魔物は、魔族だろうと関係なく襲ってくる。
防衛に変異種の縄張りを利用するなんて、かなり危険度の高い賭けだろう。
レッドスライムも第一層に生息する魔物だ。
第二層の魔物と戦うには戦力として心許ない。それをわざわざ偵察に使うなんて。
相手も僕たちと同じで、魔力の確保に相当苦労しているんじゃないだろうか。
「うん、今のところそこまでの脅威は感じないね。まぁ油断しないに越した事はないけど。レッドスライムもブルースライム三匹で戦わせれば勝てるだろうし、ウルフ一匹でも余裕を持って戦える」
「小迷宮もそこまでの規模はなさそうです。出入口も一つだけではないでしょうか?」
「だろうね、門番の変異種を倒されて慌てて様子を伺いにきたってとこかな」
最初の相手としては、かなり弱いのを引けたかもしれない。
さっそくフォンにお願いして、ウルフを一匹、入り口まで進めさせる。
一度フォンの小迷宮に戻って体制を整えるか悩んだけど、相手が場所を移動する可能性がある。
変異種を討伐した何者かの存在を相手は警戒しているだろうし、ここで逃すのはあまりに勿体ない。
「お、さっそく慌てて出てきたぞ。レッドスライムが五匹だ」
「ウルフ一匹では厳しそうですね。三匹ほど追加します」
キラーマンティスから得られた魔力を使ってウルフが追加される。
魂無き獣同士がぶつかり合う。お互いGランクではあるが、種族としての差が響いたか。
ウルフ側の圧勝だった。地面にキラキラ輝く石が落ちている、レッドスライムの屑魔石だ。
「こうして召喚に使われた魔力の何割かが、魔石となって返ってくるんだね」
「下手に弱い魂無き獣を増やしすぎても、相手に魔力が渡ってしまう。難しいです」
無駄に召喚してはいけない事を学んだところで。
僕たちは相手の小迷宮の中に入っていく。先行するのはウルフ四匹。
入り口での攻防戦を見るに、相手の戦力はもう殆ど残されていないのではないだろうか。
「……やはり、小迷宮内とそれ以外でコストが違いますね」
「どうしたの?」
フォンがずっと迷宮核を弄りながら納得したような顔になっている。
「先ほど外でウルフを召喚しましたが、掛かる魔力コストが若干増えていたのです」
「んーつまり。迷宮核を使う場合、小迷宮内じゃないと損をするって事かな?」
「現状もコストが増加したままなので、自分の小迷宮でなければいけないようですね」
「それはちょっと困ったな。ただでさえ魔力不足なのに、今後は外での召喚も控えるべきか」
新たな事実が発覚したが、今はそれどころじゃない。
小迷宮は一本道だった。拡張するだけの余裕もなかったのか。
「――――タチサレ」
薄暗い小迷宮内を反響する女性の声。
僕たちは気にせず前に進む。ウルフたちは欠伸していた。
魂無き獣は模倣した魔物の習慣までも真似するらしい。
「――――タ、タチサレ。タチサッテクダサイ、オネガイシマス」
まったく足が止まらない僕たちに驚いたのか。
声の主は急に丁寧な口調に変わっていた。殆ど命乞いに近い。
「……指摘するのもなんだけど。我慢しているみたいだけど、声がずっと震えているよ?」
「はい。まったく怖くありませんでした」
「そ、そんなぁ……!」
最深部で待ち構えていたのは少女だった。
彼女の手にあるのはフォンの持つものと同じ色の迷宮核。
「た、助けてください……降参しますので……お願いします」
僕たちの最初の迷宮核争奪戦は、こうして呆気なく終わってしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇レッドスライム
ブルースライムと同じGランクの魔物。全身が赤色で青色よりも三倍速い。
しかしながら戦闘力は三倍どころか二倍にも届かず、ランク通りの雑魚である。
赤色だからといって肉食というわけでもなく、青色共々花の蜜を好む温厚な性格。
狭い所が好きで、よく冒険者の鞄の中に入り込む。魔法書などがドロドロになる被害も。
素材として採れる赤い液は大変甘く、薬だけでなくお菓子の材料に重宝されるとか。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる