パーティに見捨てられた罠師、地龍の少女を保護して小迷宮の守護者となる~ゼロから始める迷宮運営、迷宮核争奪戦~

お茶っ葉

文字の大きさ
13 / 28

十三話 スライム族の少女

しおりを挟む
 僕とフォンの前で少女が縮こまっている。
 抵抗する意志もなく。すぐに彼女は負けを認めてしまった。
 とりあえず話だけでも聞いておこうと、落ち着くのを待っていた。
 
「ワタシは……ミリィといいます。その、これでもスライム族の上級魔族です」
「スライム族? えっと、どの辺りが?」

 僕から見た彼女は普通の人間だ。
 紫がかった綺麗な髪に、服は質素ながら女の子らしいひらひらのもの。
 少し汚れているけど、フォンと比べるとまだ大丈夫な範囲だ。怪我もなさそうだし。 

「……人間さんに身体を見せるのは恥ずかしいけど……見ててください」

 人の姿をしていたミリィの身体が溶けていく。
 顔の形はある程度保ったまま、足元は完全に粘液のある液体に変わっていた。
 これが彼女の正体か。スライム族の上級魔族ってかなり珍しい。僕は初めて聞いた。

「お願いします。助けてください。誓ってワタシは何も悪いことはしてません……。お散歩していたら綺麗な丸い球を見つけて、宝物にしようとお家に持ち帰ったら、何故か変な魔物たちに襲われるようになって、ここまで必死に逃げてきたんです。うぅ、ワタシがいったい何をしたっていうんですか……! スライム族なら痛みを感じないだろうって、虐めてもいいんですか……?」

 ミリィは泣きながら僕たちに訴えかけてくる。 
 なるほど。守護者の中には事情を知らずに戦っている子もいるんだな。
 いきなり他の守護者に襲われて、こうして生き残っているという事は、相当運が良かったんだろう。

 僕は彼女に迷宮核や守護者の仕組みを説明する。

「……始祖の魔術? ……ユグドラシルの管理権?」

 ミリィはポカンと口を開けて話を聞いていた。 
 偶然拾っただけの彼女は当然ながら、迷宮核の価値も知らなかった。

「そんなのいらないから……お家に帰りたい。一人ぼっちはもう嫌なんです」
「……何だか僕たちが虐めているみたいだ。フォン、この子をどうにかできない?」
「私も他の迷宮核を手にするのは初めてなので……予想がつかないです」

 守護者を倒せば、契約されていない迷宮核が手に入るけど。
 契約されたままの状態の迷宮核を取り込むとどうなってしまうのか。
 
「ただ、守護者と迷宮核は繋がっているので、迷宮核が破壊されると私たちの命も絶えます」
「あわわわ……!」

 ミリィは恐怖のあまり目を閉じていた。可能性としては彼女の命を奪う結果になる訳か。
 彼女は僕たちを襲おうとしたのではなく、生き残るために行動していた。
 敵ではないし、目的が一致すれば協力してもらえるのではないか。この先、戦力は多い方がいい。

「それなら現状維持かな。……ミリィ、君は死にたくはないよね?」
「当たり前です。ワタシには、大切な弟たちが待っているんです。お姉ちゃんなんです!」
「……家族ですか」

 母親を失ったフォンは、そんなミリィを羨ましそうに見ていた。
 それと同時に、姉を失った弟たちの気持ちもよく理解しているのだろう。
 
「わかった。なら僕たちと一緒に行動しよう。僕たちの目的は迷宮核を育ててユグドラシル最上層を目指すことだから。その道中で、君を家まで送り届けられると思うよ」
「ほ、本当ですか! 嘘じゃないですよね……? 貴方は人間さんなのにとてもお優しいのですね!」
「仲間は多い方がいいしね。もちろん多少は働いてもらうけど。フォンもそれで構わない?」

 勝手に話を進めているけど、あくまで迷宮核を所持しているフォンに決定権がある。
 確認を取ると、フォンはミリィの前に立ち、自然と右手を差し出していた。

「私はフォンといいます。地龍で、他の龍族に虐げられ命からがらここまで逃げてきました」
「……同じです。ワタシも、ワタシの故郷は六層にあるのですが、スライム族だからと馬鹿にされて、虐げられていました。身体が丈夫だからって、他の魔族から殴られたり。……痛くはないんですけど」
「ここには貴方を虐める悪い奴はいないです。リーンはとても優しいですから」
「そんなに褒められると照れるなぁ」

 優しさって、それ以外に取り柄がない人によく使われる言葉だけど。
 フォンの場合は、本心から言ってくれているとわかるからグッとくる。
 ミリィはフォンの手を両手で握ると、続けて僕の手も握ってくれる。プニプニして気持ちいい。

「ワタシも、お二人の夢に協力しますので、どうか、優しくお願いします……!」
「うん。こちらこそ。しばらくの間よろしくね」
「頑張って生き残りましょう」
「はい!」  
 
 こうして、僕たちは新たな迷宮核と仲間を手にしたのであった。

 ◇

「レッドスライムちゃんですか? 最初から召喚できましたよ?」
「そんなはずはないです。私と同じ迷宮核なら、ブルースライムで限界のはずです」

 ミリィの所持している迷宮核は、フォンと同じ等級で屑だった。
 それでは何故レッドスライムを召喚できるのか。本人に尋ねてみたところこの反応。
 検証するために、ミリィは目の前で迷宮核を操作して、実際に召喚してみせてくれる。

「どうですか? ワタシは嘘を付いてませんよ」

 確かに、赤いスライムが呼び出されていた。
 第一層に生息する本物と色が薄い以外は瓜二つだ。
 フォンも自分の迷宮核と比べて疑問符を浮かべている。

「ワタシの迷宮核には二種類のスライムが登録されていました。……お友達になりたかったのに、話しかけても返事してくれなくて。魂がなかったんですね……残念です」

 ミリィはそう落ち込みながら、レッドスライムに探索の指示を与えた。
 単純に赤い方が優れているので悪い話ではないけど。この違いの原因を知りたい。

「今度はブルースライムを出してもらっていいかな?」
「いいですよ」

 彼女に屑魔石を渡して召喚してもらう。
 現れたブルースライムは、僕たちが召喚したものよりも若干大きかった。
 動きも俊敏で、能力が優れている。これは、かなり重要な情報ではないだろうか。

「もしかして、契約者の種族によって特定の魂無き獣に強化が掛かるのかも」
「ほぇ……」
「なるほど。私は龍族ですから、スライム族ではミリィよりも劣るのですね」

 等級が屑であるフォンの迷宮核は現状、龍族の魂無き獣を生み出せない。
 しかしこの先、等級を上げていけば他の守護者より強力な龍を生み出せる可能性がある。
 それに現段階ではスライム族も立派な戦力だ。ミリィの加入は大幅な戦力向上に繋がった。

「もしかして……ワタシ、お役に立ててます?」
「当然だよ。これ以上ないくらい、役に立てているよ。しかも今後にも期待できる!」
「はい。迷宮核が二つあれば実質戦力が二倍になった事になりますから」
「う、うう、嬉しいです」

 ミリィは褒められ慣れていないのか、不器用に口を緩ませて微笑む。
 単純に消費する魔力も増える事になった訳だけど。ここは用途によって分けた方がいいか。
 小迷宮を拡張するのはフォンの迷宮核で、ミリィの迷宮核を戦闘用にしよう。
 
 所持小迷宮も二つになってしまったけど。
 フォンの小迷宮を拠点として、ミリィのは破棄した方がいい。
 変異種は定期的に復活するので、巣に近いここはあまり立地がよいとはいえない。

「そろそろ戻ろうか。明日からは破棄された小迷宮を探して魔石集めをしよう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◇魂無き獣
 守護者が小迷宮を守るために創造した、魔物を模した魔導生物。
 若干色が薄く、戦闘能力はオリジナルに劣る。元となった魔物の性質に基づいた行動を取る。
 魂がないので守護者のどんな命令にも従順。その為、本来ではありえない行動を取る事も。
 倒すとその能力に応じた魔石を落す。魔石は様々な魔法道具の材料になるので重宝される。
 小迷宮を訪れる冒険者の大半がこの魔石を目当てにしている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

処理中です...