「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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Relaxation Salon ANNA

第12話 Relaxation Salon ANNA

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聖川駅から徒歩五分。

雑居ビルの三階に、その店はあった。

『Relaxation Salon ANNA』

小さな看板だけが、控えめに店の存在を主張している。

予約したのは、manaという名前のセラピスト。21歳、現役大学生らしい。

プロフィール写真を見た時、正直、半信半疑だった。こういう店の写真は、大抵加工されている。

でも、口コミを読んで決めた。

『身長152cm。小柄だけど、出るとこは出てる』
『逆パネマジ。写真より実物の方が可愛い』
『裏オプなし。でも、十分満足できる』

裏オプなし。

それが、決め手だった。

変な店には行きたくない。でも、男としての欲求は満たしたい。

そのギリギリのラインが、ここだった。

エレベーターで三階へ。

廊下を歩いて、304号室の前に立つ。

時計を見る。12時58分。

二分早い。

深呼吸をする。

そして、ちょうど13時になった瞬間――

インターホンを押した。

「はーい、お待ちしておりました」

明るい声が、インターホンから聞こえる。

ドアが開いた。

「いらっしゃいませ。manaです」

そこに立っていたのは――

「……やば」

思わず、声が出た。

口コミに書いてあった通りだった。

いや、それ以上だった。

『逆パネマジ』

写真より、実物の方が遥かに可愛い。

身長152センチ。確かに小柄だ。俺より8センチも低い。

黒髪のロング。大きな瞳。華奢な体つき。

でも、確かに――出るとこは出ている。

白いワンピースから覗く、曲線。

「どうぞ、上がってください」

manaは、笑顔で僕を招き入れた。

部屋の中は、薄暗い照明。アロマの香り。リラックスできる音楽が流れている。

「初めてですか?」

「あ……はい」

「緊張されてます? 大丈夫ですよ、ゆっくりリラックスしてくださいね」

manaは、ソファに座るよう促した。

「まず、簡単な問診票を書いていただけますか?」

渡された用紙に、名前や体調について記入する。

もちろん、偽名だ。

「お疲れの箇所は?」

「全身……ですね」

「わかりました。では、90分コースで全身しっかりほぐしていきますね」

manaは立ち上がった。

「シャワーを浴びていただいて、こちらのガウンに着替えてください。下着は……脱いでいただいても、つけたままでも、どちらでも大丈夫です」

彼女は、ウインクした。

「私のおすすめは、脱いだ方がリラックスできますよ」

心臓が、早鐘を打つ。

シャワールームに案内され、一人になる。

服を脱ぎながら、鏡を見た。

そこにいるのは、斎藤みゆき。

童顔で、小柄で、女の子に間違われる男。

でも、今は確かに、男だ。

「明後日からは……」

呟いて、頭を振った。

考えるな。今は、ただリラックスしろ。

男として、最後の時間を楽しめ。

シャワーを浴びて、ガウンを羽織る。

部屋に戻ると、manaが待っていた。

「では、こちらのベッドに、うつ伏せで横になってください」

柔らかいベッド。

manaの手が、背中に触れる。

「力、抜いてくださいね」

温かいオイルが、肌に塗られていく。

彼女の手が、ゆっくりと動く。

「お仕事、大変なんですか?」

「まあ……色々と」

「ふふ、頑張ってるんですね」

manaの声が、優しい。

この時間だけは、何も考えなくていい。

女子高生になることも。

花奈に会うことも。

潜入取材のことも。

全部、忘れていい。

「気持ちいいですか?」

「……はい」

manaの手が、腰の方へ移動していく。

「ここ、すごく凝ってますね……」

息が、近い。

鼓動が、速くなる。

これが、男としての最後の時間。

部屋には、アロマの香りと、リラックスできる音楽だけが流れている。

そして、manaの温かい手が――

「では、次は仰向けになってください」

90分間が、始まった。​​​​​​​​​​​​​​​​
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