「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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Relaxation Salon ANNA

第14話 周りを見ながらの帰宅

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駅へ向かう道を歩きながら、周りを見渡した。

平日の午後。学生たちが下校している時間帯だ。

そして――

目に入ったのは、夏服の制服を着た女子高生だった。

一人で歩いている。イヤホンをつけて、スマホを見ながら。

セーラー服。紺色のスカート。白いソックス。ローファー。

顔立ちは、一般的にはかわいい部類だと思う。

でも、そんなことよりも――

『これからのことを考えると、実際の動きを見ることのほうが大事だった』

僕は、少し距離を取って、彼女の後ろを歩いた。

歩き方。

膝を少し曲げて、内股気味に歩く。

バッグの持ち方。

肩にかけて、片手で持つ。

スマホの操作。

親指だけで、器用に画面をスワイプしている。

そして――

スカート。

膝上15センチくらい。

かなり、短い。

風が吹くと、少しひらりと舞う。

彼女は慣れた手つきで、スカートを押さえた。

「……」

僕は、自分の足を見た。

スネ毛。

ある。

当たり前だ。男なんだから。

でも、あんな短いスカートを履いたら――

「まずいな……」

立ち止まって、スマホを取り出した。

美山理事長にメールを打つ。

件名:(なし)

本文:
『美山理事長

女子高生の制服のスカート丈を見て気づいたのですが、
私、スネ毛があります。
脱毛するべきでしょうか?
どうすれば良いか、ご指示いただけますか。

斎藤』

送信ボタンを押す。

三分後。

返信が来た。

件名:Re:

本文:
『斎藤様

既に手配してあります。
今日の午後には届くと思います。

脱毛サロンの予約も取っておきました。
明日の午前中、10時から施術を受けてください。
全身脱毛コースです。

住所と詳細は別途お送りします。

美山崇子』

「……既に?」

さすがだった。

美山理事長は、全て想定していた。

スネ毛だけじゃない。腕毛も。胸毛も――いや、胸毛はほとんどないけど。

全身脱毛。

「マジか……」

でも、確かに必要だ。

女子高生に、体毛は似合わない。

前を歩く女子高生は、信号待ちで立ち止まった。

その横顔を見る。

肌は、ツルツルだ。

当たり前か。

僕も、明日にはそうなる。

信号が青になり、彼女は歩き出した。

僕も、後を追う。

彼女のスカートが、また風で揺れる。

太腿。白い肌。

明後日からは、僕もあれを履く。

『斎藤みゆき』という女子高生として。

駅に着いた頃には、その女子高生の姿は見えなくなっていた。

電車に乗る。

窓ガラスに映る自分を見る。

まだ、男だ。

でも、明日脱毛して、明後日メイクを習って――。

そうしたら、完全に変わる。

「後戻りできないな……」

呟いた声は、電車の音にかき消された。

家に着くと、案の定、宅配ボックスに荷物が届いていた。

送り主:Atelier Miyama

中を開けると、脱毛クリームと、アフターケア用品の一式が入っていた。

そして、メモ。

『明日の施術前に、こちらのクリームで一度処理しておいてください。
施術がスムーズに進みます。
美山』

脱毛クリーム。

パッケージには、女性の綺麗な足の写真。

「これを……使うのか」

風呂場に向かった。

鏡で、自分の足を見る。

スネ毛。

男の証。

でも、明日にはこれが消える。

「……やるしかない」

クリームを手に取った。

そして、足に塗り始めた。

十分後、シャワーで流す。

スネ毛が、ゴッソリ落ちた。

「うわ……」

ツルツルになった足。

まるで、女の子みたいだ。

腕も、同じように処理する。

胸も。腹も。

気づけば、全身がツルツルになっていた。

鏡の前に立つ。

そこにいるのは――

体毛のない、華奢な体。

「もう、男に見えない……」

呟いた声が、風呂場に響いた。

窓の外は、もう夕暮れ時だった。

明日は、脱毛サロン。

明後日は、花奈とのメイクレッスン。

そして、一週間後――

女子高生として、学校に行く。

「本当に、やるんだな……」

タオルで体を拭きながら、僕は決意を新たにした。

もう、後戻りはできない。

進むしかない。

女子高生として、潜入取材をする。

それが、僕の仕事だ。

部屋に戻ると、ウィッグがマネキンヘッドに乗せられたまま、こちらを見ていた。

まるで、「早く来い」と誘っているみたいに。​​​​​​​​​​​​​​​​
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