「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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花奈との再会

第19話 届いた荷物

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表参道の駅へ向かう道を歩きながら、スマホを取り出した。

美山理事長へ、メールを打つ。

件名:ブラジャーについて

本文:
『美山理事長

今日のメイクレッスン、無事終わりました。
一つ質問なのですが、制服を着る際のブラジャーはどうすれば良いでしょうか?
胸がないので、どうしたら自然に見えるか……。

ご指示いただけますと幸いです。

斎藤(佐伯みゆき)』

送信ボタンを押す。

歩きながら、スマホを見つめる。

三分後。

返信が来た。

『斎藤様

既に手配済みです。
本日中に、ご自宅に届くかと思います。

他にも必要なものを一式同梱しておきました。
ご確認ください。

美山崇子』

「……また、手配済みか」

毛の時と同じだ。

美山理事長は、全てを先回りして準備してくれている。

「すごいな……」

呟いて、電車に乗った。

-----

家に着いたのは、午後三時だった。

玄関のドアを開けると――

「……でかい」

廊下に、大きめのダンボール箱が置かれていた。

置き配。

送り主は、もちろん『Atelier Miyama』。

重い。

両手で抱えて、部屋に運び込む。

「何が入ってるんだ……」

ガムテープを剥がして、箱を開ける。

中を見て――

「うわ……」

そこには、ぎっしりと詰まった荷物。

まず目に入ったのは、教科書の束。

国語、数学、英語、理科、社会――。

全部、高校二年生用だ。

「これ、本物……?」

ページをめくる。

新品。書き込みも何もない。

次に、ノート類。

大学ノート、ルーズリーフ、レポート用紙。

筆箱も入っている。

中には、シャーペン、消しゴム、蛍光ペン、ボールペン――。

「ここまで用意してくれるのか……」

さらに、タブレット。

『iPad』

最新モデルだ。

「授業用……か」

そして、生徒手帳。

『私立聖ヶ丘女子学園 生徒手帳』

表紙には、校章が刻まれている。

開いてみる。

一ページ目に、写真と名前欄。

写真は、まだ貼られていない。

名前欄には――

『2年A組 佐伯みゆき』

「佐伯……」

咄嗟に出た偽名が、こんなところにも使われている。

もう、後戻りできない。

『佐伯みゆき』として、学校に行く。

生徒手帳をめくる。

校則、年間行事、時間割――。

全部、本物だ。

「これ、どうやって手に入れたんだ……」

美山理事長の力、恐るべし。

箱の底には、まだ何か入っている。

白い袋。

中を覗くと――

ブラジャーと、ショーツが数枚入っていた。

「これが……」

ブラジャーを取り出す。

白。シンプル。

でも、カップの部分にはパッドが入っている。

触ってみる。

柔らかい。

「これをつけるのか……」

ショーツも、シンプルな白。

サイズを確認する。

Sサイズ。

「どうやって、サイズわかったんだ?」

そういえば、Atelier Miyamaで採寸した時のデータか。

「さすがだな……」

箱の中を全部出し終えた。

部屋の床には、学校用品が山積みになっている。

まるで、本当に女子高生の部屋みたいだ。

スマホが震えた。

美山理事長からのメールだった。

件名:制服のお渡しについて

本文:
『斎藤様

荷物、届きましたか?

制服が完成いたしましたので、明日の午後、アトリエまで取りに来てください。
14時にお待ちしております。

その際、生徒手帳用の写真撮影も行います。
メイクをして、女性の服装でお越しください。

美山崇子』

明日。

制服を受け取る。

そして、写真撮影。

生徒手帳に貼る、証明写真。

「いよいよだな……」

ブラジャーを手に取った。

試着してみるべきか。

鏡の前に立つ。

シャツを脱ぐ。

そして、ブラジャーを――

「……どうやってつけるんだ?」

背中のホック。

手が届かない。

何度か挑戦して、ようやく留められた。

鏡を見る。

パッド入りのブラジャーが、胸を作り出している。

「……女の子だ」

そこにいるのは、小さな胸のある女の子。

ショーツも履いてみる。

全身を鏡で確認する。

下着姿の女の子。

「これが、俺……」

信じられない。

でも、現実だ。

明日、制服を受け取る。

そして数日後――

この姿で、学校に行く。

女子高生として。

窓の外は、夕暮れ時だった。

部屋には、教科書、ノート、タブレット、生徒手帳。

そして、下着姿の「私」が、鏡に映っている。

人生が、完全に変わろうとしていた。

「……やるしかない」

呟いて、私は明日の準備を始めた。

制服を受け取る、最後の準備を。​​​​​​​​​​​​​​​​
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