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文化祭
第39話 朝6時
しおりを挟むガサガサ。
ゴトッ。
玄関前から、音がする。
「……ん?」
目が覚めた。
時計を見る。
6:02
朝の六時。
「誰か、いる……?」
ベッドから起き上がる。
玄関前が、なんだかザワザワしている。
足音?
いや、違う。
何かを置く音?
「泥棒……?」
いや、この時間に泥棒はないだろう。
『誰かいる?』
とふと思った。
そして――
『美山さんが手配してくれた荷物が届いたんだろう』
安直に考えた。
でも、それ以外答えが見当たらない。
昨日のメールで、『明日の朝、ご自宅に専用の下着をお送りします』と書いてあった。
配達の人が、今置いていったのかもしれない。
玄関のドアを開ける。
足元に――
ダンボール箱があった。
送り主:Atelier Miyama
「正解だった……」
ダンボールを持ち上げる。
軽い。
部屋に運び込む。
テーブルの上に置いて、開ける。
中には――
下着が入っていた。
ブラジャーと、ショーツ。
そして、何か別のものも。
「これは……」
取り出してみる。
ブラジャー。
でも、今まで着ていたものとは違う。
レース。
かなり、レースが多い。
肩紐も細い。
背中の部分も――
「露出が多い……」
今まで着ていたものは、シンプルな白や肌色だった。
でも、これは――
黒いレース。
セクシーな雰囲気。
ショーツも同じ。
黒いレース。
ハイレグ気味。
「美山さんが、間違えたのかな……」
こんなセクシーな下着、女子高生が着るか?
でも、箱には他に何も入っていない。
メモもない。
「……」
これを、着るしかないのか?
もう一度、箱の中を確認する。
すると、小さな紙が底に貼り付いていた。
剥がして、読む。
『斎藤様
こちらの下着は、採寸時に体のラインを自然に見せるための特別仕様です。
パッド入りで、胸の形を綺麗に整えます。
また、レース素材により、タッキング部分の違和感を軽減します。
通常の下着よりも露出が多いですが、
採寸時に服を着たまま行う場合は問題ありません。
ご安心ください。
美山崇子』
「なるほど……」
間違いじゃなかった。
ちゃんと、意味があるらしい。
『体のラインを自然に見せる』
『タッキング部分の違和感を軽減』
確かに、それなら――
レース素材の方がいいのかもしれない。
「……着てみるか」
時計を見る。6:15。
学校は、8:30集合。
まだ、時間はある。
シャワーを浴びて、タッキングをする。
そして――
新しい下着を手に取った。
まず、ショーツ。
履く。
「……」
フィット感が、今までとは違う。
レース素材だからか、柔らかい。
でも、しっかりとホールドしている。
タッキング部分も――
確かに、違和感が少ない。
次に、ブラジャー。
背中のホックを留める。
肩紐を調整する。
鏡を見る。
「……」
そこにいたのは――
セクシーな下着を着た女性だった。
黒いレースのブラジャー。
Bカップの胸を、綺麗に包んでいる。
黒いレースのショーツ。
ハイレグで、足が長く見える。
「これ……本当に大丈夫なのか?」
露出が多い。
今までの下着とは、全然違う。
でも――
確かに、体のラインは綺麗に見える。
胸も、自然な形。
タッキング部分も、レースのおかげで目立たない。
「美山さん、さすがだな……」
Tシャツを着てみる。
鏡で確認する。
外から見たら、普通の女の子の下着姿。
誰も、疑わないだろう。
「よし……これなら、大丈夫かも」
安心した。
でも、同時に――
少し、複雑な気持ちになった。
「俺、何やってるんだろう……」
セクシーな下着を着て。
女子高生のフリをして。
採寸される準備をして。
「……」
鏡の中の自分を見つめる。
黒いレースの下着。
膨らんだ胸。
女性らしい体のライン。
「もう、引き返せないな……」
呟いた。
制服を着る。
メイクをする。
ウィッグをつける。
準備完了。
時計を見る。7:30。
「行くか……」
家を出る。
今日、採寸される。
クラスメイトに、体を測られる。
でも、大丈夫。
美山理事長が、ちゃんと準備してくれた。
『大丈夫……』
自分に言い聞かせながら、私は学校へ向かった。
黒いレースの下着を着たまま。
誰にも見られることはないけど――
それを着ていることが、少しだけ心の支えになっていた。
『これで、乗り切れる』
そう信じて。
朝の通学路を、歩いていった。
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