「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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文化祭

第49話 近藤さんの笑み

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「みゆきちゃん、近藤さん!」

高橋さんが、声をかけてきた。

「メイド服、着替えてきて! 開店前に最終チェックするから」

「え? でも、昨日試着したよね……」

「うん。でも、最終チェックは大事でしょ? ほら、これ」

高橋さんが、二着のメイド服を渡してきた。

昨日、試着して返したもの。

「準備室で着替えてきて。そこなら、ゆっくりできるから」

準備室――教室の隣にある、小さな部屋。

普段は使われていない。

「わかった……」

近藤さんと一緒に、準備室へ向かう。

ドアを開けて、中に入る。

小さな部屋。

窓は一つ。

姿見の鏡がある。

「じゃあ、着替えよう」

近藤さんが、メイド服を手に取った。

私も、同じように。

二人きりの準備室。

お互いに背を向けて、着替え始める。

「……」

ブラウスを脱ぐ。

スカートを脱ぐ。

メイド服を着る。

黒いワンピース。

白いエプロン。

ファスナーを上げて――

「あれ……?」

違和感。

何か、違う。

「佐伯さん……」

近藤さんの声。

振り返ると――

近藤さんも、同じように困惑した顔をしていた。

「これ……昨日と、違くない?」

「え……?」

二人で、姿鏡の前に立つ。

鏡を見て――

「……!」

言葉を失った。

スカート。

昨日なかったスリットが、深く入っている。

太腿の半分以上が見える。

動いたら、もっと見える。

そして、胸部分。

更に強調されていた。

昨日より、胸元が開いている。

リボンの位置も変わっていて、胸の谷間が見えそう。

「何……これ」

近藤さんが、呟いた。

彼女の大きな胸が――

さらに強調されている。

谷間が、はっきりと見える。

「昨日は、こんなじゃなかった……」

「うん……確かに」

二人で、鏡を見つめる。

私のメイド服も――

スリットが深くて、太腿が丸見え。

胸元も開いていて、シリコンパッドの膨らみが強調されている。

「……修正された?」

「たぶん……昨日の夜に」

近藤さんが、メイド服のタグを確認している。

「家庭科部のハンコ、押してあるけど……」

「誰が、修正したんだろう……」

答えは、わかっていた。

桜井さんたち。

昨日の夜、残って修正したんだろう。

より露出の多いデザインに。

『これが、仕掛けなのか……?』

でも、まだ何か隠されている気がする。

「どうしよう……」

近藤さんが、不安そうに言った。

「このまま、着るの……?」

「……」

断れるだろうか。

今から、「着たくない」と言えるだろうか。

もう、開店まで三十分もない。

「佐伯さん……」

近藤さんが、私を見た。

その目には――

不安と、諦めが混ざっていた。

「私たち、やるしかないのかな……」

「……」

私は、何も言えなかった。

その時。

ドアがノックされた。

「みゆきちゃん、近藤さん、準備できた?」

桜井さんの声。

「あ……もうすぐ」

「早くしてね! もうすぐ開店だから!」

足音が、遠ざかっていく。

「……」

近藤さんと、目を合わせる。

「やるしか、ないよね……」

近藤さんが、小さく笑った。

でも、その笑みは――

どこか、諦めたような。

それとも、覚悟を決めたような。

「うん……やるしかない」

私も、頷いた。

ヘッドドレスをつける。

白い、メイド用のカチューシャ。

近藤さんも、同じようにつける。

鏡を見る。

二人のメイドさんが、映っている。

露出の多い、セクシーなメイド服。

スリットの深いスカート。

強調された胸。

「……行こう」

近藤さんが、ドアに手をかけた。

「うん……」

ドアを開ける。

廊下に出る。

教室へ向かう。

私の足が、震えている。

短いスカートが、揺れる。

太腿が、見える。

「……」

教室のドアを開けた瞬間――

「うわー! 可愛い!」

「めっちゃいい感じ!」

女子高生たちの歓声。

「みゆきちゃん、近藤さん、すっごく似合ってる!」

高橋さんが、拍手している。

桜井さんも――

満面の笑みで、私たちを見ていた。

「完璧だね」

その笑顔の裏に――

何かが隠れている。

私は、確信した。

『まだ、これで終わりじゃない』

もっと、何かが仕掛けられている。

でも、何なのか。

まだ、わからない。

「さあ、開店準備しよう!」

田中先生が、教室に入ってきた。

そして、私たちを見て――

「あら、可愛いわね」

それだけ言った。

露出の多さには、何も言わない。

放任主義。

生徒の自主性。

『助けてくれない……』

心の中で、呟いた。

でも、もう遅い。

文化祭は、もうすぐ始まる。

時計を見る。8:50。

あと十分で、開店。

「位置について!」

高橋さんの指示。

私と近藤さんは、入口の近くに立った。

お客さんを迎える役。

「いらっしゃいませ」と言う役。

「……」

深呼吸をする。

大丈夫。

きっと、大丈夫。

美山理事長が、来てくれる。

十時頃。

あと一時間。

それまで、耐えればいい。

「開店です!」

田中先生の声。

ドアが開く。

廊下には、すでに行列ができていた。

お客さんたち。

生徒、保護者、地域の人々――。

「いらっしゃいませー!」

高橋さんの元気な声。

そして――

最初のお客さんが、入ってきた。

文化祭。

メイドカフェ。

運命の時間が――

始まった。​​​​​​​​​​​​​​​​
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