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甘い嘘と苦い現実
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月曜日。
学校に行くのが怖かった。
渡瀬と、どう接すればいいのか。
わからなかった。
でも、行かなければならない。
教室に入ると、渡瀬はいつもの席にいた。
窓際の、一番後ろ。
目が合った。
渡瀬は、少し笑った。
普通の笑顔。
まるで、何もなかったかのように。
授業が始まった。
渡瀬は、相変わらず授業を聞いていない。
でも、時々俺を見る。
その視線が、胸に刺さる。
昼休み。
渡瀬が、俺のところに来た。
「先生、ちょっといい?」
「うん」
廊下に出た。
人気のない場所で、渡瀬が言った。
「昨日は、ありがとう」
「ああ」
「楽しかった」
渡瀬は笑った。
でも、どこか寂しそうだった。
「また、会える?」
「渡瀬さん」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど」
「じゃあ、会おう。今度は、もっとゆっくり」
そう言って、渡瀬は教室に戻っていった。
俺は、その場に立ち尽くした。
これは、続けていいのか。
いや、続けてはいけない。
わかっている。
でも、止められない。
渡瀬の笑顔が、頭から離れなかった。
その日の夜。
渡瀬からDMが来た。
「先生、今日もありがとう」
「うん」
「また会いたいな」
「渡瀬さん」
「週末、空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあ、また部屋に行っていい?」
断るべきだった。
でも、断れなかった。
「わかった」
「やった!楽しみ」
ハートのスタンプが送られてきた。
俺は、スマホを握りしめた。
これは、まずい。
完全にまずい。
でも、止められない。
週末が来た。
渡瀬が、また部屋に来た。
二人で、過ごした。
それが、三週間続いた。
教育実習が終わる日。
渡瀬が、泣いた。
「先生、もう会えないの?」
「会えるよ」
「本当?」
「本当」
「嘘つかないでね」
「嘘つかない」
でも、それは嘘だった。
教育実習が終わってから、三日後。
渡瀬からのDMが、途絶えた。
最後のメッセージは、短かった。
「先生、ありがとう。楽しかった」
それだけ。
返信を打った。
「渡瀬さん」
既読はついた。
でも、返信は来なかった。
次の日も。
その次の日も。
もう一度送った。
「どうしたの?」
既読。
返信なし。
「会いたい」
既読。
返信なし。
「渡瀬さん」
既読。
返信なし。
一週間が過ぎた。
俺は部屋で、スマホを握りしめていた。
渡瀬は、俺に飽きたんだろう。
最初から、遊びだったんだろう。
教師と生徒の禁断の関係。
そういうスリルが欲しかっただけ。
でも、違う気もする。
あの最後の顔。
「嘘つかないでね」
あの言葉。
渡瀬は、本当は何を求めていたんだろう。
わからなかった。
ただ、虚しかった。
使い捨てられた。
そんな気がした。
まいに捨てられた時と、同じ。
いや、もっと辛い。
渡瀬には、感情があると思っていたから。
俺を必要としてくれていると、思っていたから。
でも、違った。
全部、俺の勘違いだった。
スマホを置いた。
もう、連絡しない。
そう決めた。
でも、心のどこかで。
渡瀬からの連絡を、待っていた。
二週間が過ぎた。
連絡は来なかった。
三週間が過ぎた。
連絡は来なかった。
一ヶ月が過ぎた。
もう、諦めた。
全部、終わった。
そう思うことにした。
大学の授業に戻った。
日常が戻った。
でも、何も変わっていない気がした。
俺は相変わらず、一人だった。
誰もいない。
透明人間。
それが、俺だった。
ある日、早川さんとキャンパスで会った。
「中井くん、久しぶり」
「うん」
「教育実習、どうだった?」
その質問に、答えられなかった。
「まあ、色々あった」
「そっか。大変だったんだね」
早川さんは、優しく笑った。
「でも、頑張ったんだね。偉いよ」
その言葉が、胸に刺さった。
頑張った?
何を?
生徒と関係を持って。
捨てられて。
それが、頑張ったことなのか。
「ありがとう」
それだけ言って、別れた。
早川さんには、言えなかった。
誰にも、言えなかった。
この秘密は、俺だけが抱えていく。
ずっと。
そう思っていた。
でも、それは甘かった。
秘密は、いつかバレる。
どんなに隠しても。
それを知るのは、もう少し後のことだった。
学校に行くのが怖かった。
渡瀬と、どう接すればいいのか。
わからなかった。
でも、行かなければならない。
教室に入ると、渡瀬はいつもの席にいた。
窓際の、一番後ろ。
目が合った。
渡瀬は、少し笑った。
普通の笑顔。
まるで、何もなかったかのように。
授業が始まった。
渡瀬は、相変わらず授業を聞いていない。
でも、時々俺を見る。
その視線が、胸に刺さる。
昼休み。
渡瀬が、俺のところに来た。
「先生、ちょっといい?」
「うん」
廊下に出た。
人気のない場所で、渡瀬が言った。
「昨日は、ありがとう」
「ああ」
「楽しかった」
渡瀬は笑った。
でも、どこか寂しそうだった。
「また、会える?」
「渡瀬さん」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど」
「じゃあ、会おう。今度は、もっとゆっくり」
そう言って、渡瀬は教室に戻っていった。
俺は、その場に立ち尽くした。
これは、続けていいのか。
いや、続けてはいけない。
わかっている。
でも、止められない。
渡瀬の笑顔が、頭から離れなかった。
その日の夜。
渡瀬からDMが来た。
「先生、今日もありがとう」
「うん」
「また会いたいな」
「渡瀬さん」
「週末、空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあ、また部屋に行っていい?」
断るべきだった。
でも、断れなかった。
「わかった」
「やった!楽しみ」
ハートのスタンプが送られてきた。
俺は、スマホを握りしめた。
これは、まずい。
完全にまずい。
でも、止められない。
週末が来た。
渡瀬が、また部屋に来た。
二人で、過ごした。
それが、三週間続いた。
教育実習が終わる日。
渡瀬が、泣いた。
「先生、もう会えないの?」
「会えるよ」
「本当?」
「本当」
「嘘つかないでね」
「嘘つかない」
でも、それは嘘だった。
教育実習が終わってから、三日後。
渡瀬からのDMが、途絶えた。
最後のメッセージは、短かった。
「先生、ありがとう。楽しかった」
それだけ。
返信を打った。
「渡瀬さん」
既読はついた。
でも、返信は来なかった。
次の日も。
その次の日も。
もう一度送った。
「どうしたの?」
既読。
返信なし。
「会いたい」
既読。
返信なし。
「渡瀬さん」
既読。
返信なし。
一週間が過ぎた。
俺は部屋で、スマホを握りしめていた。
渡瀬は、俺に飽きたんだろう。
最初から、遊びだったんだろう。
教師と生徒の禁断の関係。
そういうスリルが欲しかっただけ。
でも、違う気もする。
あの最後の顔。
「嘘つかないでね」
あの言葉。
渡瀬は、本当は何を求めていたんだろう。
わからなかった。
ただ、虚しかった。
使い捨てられた。
そんな気がした。
まいに捨てられた時と、同じ。
いや、もっと辛い。
渡瀬には、感情があると思っていたから。
俺を必要としてくれていると、思っていたから。
でも、違った。
全部、俺の勘違いだった。
スマホを置いた。
もう、連絡しない。
そう決めた。
でも、心のどこかで。
渡瀬からの連絡を、待っていた。
二週間が過ぎた。
連絡は来なかった。
三週間が過ぎた。
連絡は来なかった。
一ヶ月が過ぎた。
もう、諦めた。
全部、終わった。
そう思うことにした。
大学の授業に戻った。
日常が戻った。
でも、何も変わっていない気がした。
俺は相変わらず、一人だった。
誰もいない。
透明人間。
それが、俺だった。
ある日、早川さんとキャンパスで会った。
「中井くん、久しぶり」
「うん」
「教育実習、どうだった?」
その質問に、答えられなかった。
「まあ、色々あった」
「そっか。大変だったんだね」
早川さんは、優しく笑った。
「でも、頑張ったんだね。偉いよ」
その言葉が、胸に刺さった。
頑張った?
何を?
生徒と関係を持って。
捨てられて。
それが、頑張ったことなのか。
「ありがとう」
それだけ言って、別れた。
早川さんには、言えなかった。
誰にも、言えなかった。
この秘密は、俺だけが抱えていく。
ずっと。
そう思っていた。
でも、それは甘かった。
秘密は、いつかバレる。
どんなに隠しても。
それを知るのは、もう少し後のことだった。
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