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決断
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美樹の死後、保の生活は一変した。
朝起きて、美保の世話をする。
おむつを替え、着替えさせ、朝食を食べさせる。
すべて、一人でやらなければならなくなった。
会社からは、休職の打診があった。
「しばらく休んだ方がいい。家庭のことを整理して」
上司の言葉は、優しかった。
でも、保にはわかっていた。
これは、事実上の退職勧奨だ。
保は、休職を受け入れた。
給料は六割になる。
でも、背に腹は代えられなかった。
そして、その日の午後、保は児童相談所を訪れた。
中村相談員が、保を迎えた。
「田中さん、お越しいただきありがとうございます」
「こちらこそ、美保を預かっていただいて……」
保は深く頭を下げた。
相談室に通された。
保は、決意を込めて口を開いた。
「美保を……施設に預けさせてください」
中村は静かに頷いた。
「お話、伺いました。奥様を亡くされて、お一人でお子様を育てるのは……」
「はい」
保は続けた。
「仕事もあります。訴訟もあります。俺一人じゃ、もう美保の面倒を見られません」
中村は資料を開いた。
「わかりました。状況を考慮して、早急に手続きを進めます。ひまわり学園で受け入れてくれることになりました」
「ひまわり学園……」
「以前、ショートステイを利用された施設です。美保ちゃんも慣れていますし、職員の方々も理解があります」
保は安堵のため息をついた。
「ありがとうございます……」
「ただし」
中村は真剣な顔で続けた。
「施設入所は、美保ちゃんから親御さんを奪うことではありません。定期的に面会に来ていただけますか?」
「はい。必ず」
保は答えた。
「美保は、お父さんを必要としています」
中村の言葉が、保の胸に刺さった。
手続きが終わり、保は美保を迎えに行った。
美保は、職員と一緒におもちゃで遊んでいた。
「美保」
保が呼ぶと、美保は顔を上げた。
一瞬、視線が合った。
「美保……これから、新しいところに行くんだ」
保は娘の前にしゃがんだ。
「パパは、ずっと一緒にはいられない。でも、時々会いに来るから」
美保は何も言わなかった。ただ、ぬいぐるみを抱きしめていた。
「ママも……もういない」
保の声が震えた。
「でも、パパは諦めない。美保のこと、絶対に守るから」
保は美保を抱きしめた。
美保の小さな体。温かい体。
「元気でな」
翌日、保は美保をひまわり学園に連れて行った。
加藤主任が出迎えた。
「田中さん、美保ちゃん、お久しぶりです」
「お世話になります」
保は深く頭を下げた。
荷物を渡し、注意事項を伝えた。
そして、別れの時間。
「美保、パパ、また来るからな」
保は美保の頭を撫でた。
美保は、じっと保を見ていた。
視線は合わないが、確かに保を見ていた。
「行くよ」
保は立ち上がった。
振り返らずに、施設を出た。
振り返ったら、泣いてしまいそうだった。
車に乗り込んで、保は深く息を吐いた。
「美樹……これでよかったのかな」
保は呟いた。
答えはなかった。
朝起きて、美保の世話をする。
おむつを替え、着替えさせ、朝食を食べさせる。
すべて、一人でやらなければならなくなった。
会社からは、休職の打診があった。
「しばらく休んだ方がいい。家庭のことを整理して」
上司の言葉は、優しかった。
でも、保にはわかっていた。
これは、事実上の退職勧奨だ。
保は、休職を受け入れた。
給料は六割になる。
でも、背に腹は代えられなかった。
そして、その日の午後、保は児童相談所を訪れた。
中村相談員が、保を迎えた。
「田中さん、お越しいただきありがとうございます」
「こちらこそ、美保を預かっていただいて……」
保は深く頭を下げた。
相談室に通された。
保は、決意を込めて口を開いた。
「美保を……施設に預けさせてください」
中村は静かに頷いた。
「お話、伺いました。奥様を亡くされて、お一人でお子様を育てるのは……」
「はい」
保は続けた。
「仕事もあります。訴訟もあります。俺一人じゃ、もう美保の面倒を見られません」
中村は資料を開いた。
「わかりました。状況を考慮して、早急に手続きを進めます。ひまわり学園で受け入れてくれることになりました」
「ひまわり学園……」
「以前、ショートステイを利用された施設です。美保ちゃんも慣れていますし、職員の方々も理解があります」
保は安堵のため息をついた。
「ありがとうございます……」
「ただし」
中村は真剣な顔で続けた。
「施設入所は、美保ちゃんから親御さんを奪うことではありません。定期的に面会に来ていただけますか?」
「はい。必ず」
保は答えた。
「美保は、お父さんを必要としています」
中村の言葉が、保の胸に刺さった。
手続きが終わり、保は美保を迎えに行った。
美保は、職員と一緒におもちゃで遊んでいた。
「美保」
保が呼ぶと、美保は顔を上げた。
一瞬、視線が合った。
「美保……これから、新しいところに行くんだ」
保は娘の前にしゃがんだ。
「パパは、ずっと一緒にはいられない。でも、時々会いに来るから」
美保は何も言わなかった。ただ、ぬいぐるみを抱きしめていた。
「ママも……もういない」
保の声が震えた。
「でも、パパは諦めない。美保のこと、絶対に守るから」
保は美保を抱きしめた。
美保の小さな体。温かい体。
「元気でな」
翌日、保は美保をひまわり学園に連れて行った。
加藤主任が出迎えた。
「田中さん、美保ちゃん、お久しぶりです」
「お世話になります」
保は深く頭を下げた。
荷物を渡し、注意事項を伝えた。
そして、別れの時間。
「美保、パパ、また来るからな」
保は美保の頭を撫でた。
美保は、じっと保を見ていた。
視線は合わないが、確かに保を見ていた。
「行くよ」
保は立ち上がった。
振り返らずに、施設を出た。
振り返ったら、泣いてしまいそうだった。
車に乗り込んで、保は深く息を吐いた。
「美樹……これでよかったのかな」
保は呟いた。
答えはなかった。
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