異世界で魔物と産業革命

どーん

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第40話 - ルクフォントデュー

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「もしかしたら、遠い未来、和解できるかと思って、魔王城でやってる収穫祭って祭りに呼んだんだ」
「女王は来たのか?」
「来た、竜皇と親しげに話してた」
「うーん、女王の方が軽率だったんじゃないか?さすがに敵地に行くのはまずいだろ」

俺はうつむいた

「それでも、彼女は戦争を避けようと言う意思が有ることを伝えてくれたんだ、俺がもっとしっかりしてれば防げたかもしれない」

ユートは顎に手を当て考える

「魔物がみんなお前みたいに話しができるんだったらもっと簡単だったのかもな」

そうだ、魔物と人の和解は俺の会話スキルがあったからこんなにも簡単にできていたんだ
まめいやリリアナがいる事ですっかりわからなくなっていた

俺は勇者に質問した

「魔物と人が和解するのって無理だと思うか?」
「さぁ、お前ができてるんならいつかはできるんじゃないか?そのころ俺がいるかはわからないけど」
「そういえばお前はこんなとこで俺と話してていいのか?セドリオンと同じになるんじゃないのか...」
「戦っただろ、他のやつもいないし、この傷のまま帰ればいいさ」

たしかに、それならリスクは低い

「なんで来たんだ?」
「俺はこの世界の人間じゃないからな、戦争とか勇者とかほんとはどうでもいい、魔王が人間だったってのが気になっただけだ」
「そうか...じゃあ俺はもう帰るぞ」

俺がそう言うとユートは黙って立ち上がり剣を収め、片手をあげてしんどそうに帰っていった



城に帰ってしばらくすると、リリアナからセドリオンが滅亡した事を知らせてきた
エミリエルの一族は全て火刑に処され子供も含めて全て死んだそうだ

また、ルクフォントデューが魔王領と取引する者たちを異教徒として次々と火刑にしているようで人間の国との交易は全てなくなった

...

春になった

ある日リリアナが不安そうな顔をして軍略会議をしたいと言うので向かうと、深刻な表情をして待っていた

「玄人さま、ルクフォントデューが元シルヴァンの城に兵を集めているそうです」
「侵略か...」
「はい、その可能性が高いと思います」
「兵数は?」
「目測で20万を超えるそうです」

絶望的だ、どう頑張っても魔王軍は2万かそこらだぞ

「和解の余地は?」
「無理な要求をされそうですが...送ってみましょう」

数日すると返答が来た
リリアナに呼ばれて軍略会議室へ行く

「結果はどうだった?」
「受け入れられませんでした、魔王と魔物の殲滅が目的との事です」

リリアナが不安そうな顔で提案する

「あの、竜王様やシトリ様に参戦願うのはいかがでしょうか」

竜や魔神が参戦したらどうなるだろうか...
きっと撃退はできるだろう、でもこの先和解の道はなくなる可能性がある
竜は人間に肩入れしている事もあるので最終的に和解のための切り札にもなる
戦争には参加させられない

魔神はやりすぎる可能性がある、火力が高すぎるからだ
そもそも気分屋なので指示に従ってくれる気がしない
やりすぎてしまうとまた恨みの螺旋が終わらない、やめよう

「やめよう、人間を滅ぼす気が無いなら彼らに頼ってはいけない」
「そう...ですか...わかりました」

全軍招集するしかないか...20万もの大軍で攻められればどの集落も耐えられないだろう

「被害が拡大する前に協力してくれる魔物たち全てに声をかけてくれ」
「はい、ですが...おそらく多く見積もってもこちらは3万程度かと、さらに敵軍は今回勇者が参戦するようです」

一番起きてほしくない事が起きた
戦争は結局数がモノを言う、ヨルンを従えたとはいえかなり勝ち目は薄い

ヨルンの巨体を活かして敵軍にのし掛かれば数万は削れるだろうか?
それに恐れをなして撤退してくれればいいんだが

「わかった、俺は勇者を相手にする、また開幕に広範囲魔術で敵軍を焼く、勇者を相手にしている間リリアナが指揮を頼む」

リリアナは涙を浮かべた

「帰ってきてくださいね」
「死ぬつもりでやるわけじゃないさ、やれるだけやらなきゃな」
「承知しました...」



夏が始まる頃、20万もの軍が魔王城東の平原に集まった

魔王軍3万、人間軍20万、布陣が終わるとすぐに人間軍は前進を始める

「リリアナ、こちらも前進だ、俺が勇者と戦い始めたら通常の戦術で迎え撃て」

そういうと俺はワイバーンで敵軍上空まで飛んだ

「ヨルン、力を貸してくれ。真下にいる人間達を押しつぶしてほしい」
「承知した」

俺はワイバーンからヨルンの腕輪を放り投げた
すると腕輪がほどけ、小さな蛇が現れる、蛇はムクムクと大きくなり人間軍を横断するほどの大きさまで成長すると地面に叩きつけられる

さらに、杖へ雷の魔力を流し込み、雲を呼ぶと雷を落とし続けるよう魔力を込めた

俺はそれを見届けた後すぐさま人間軍の戦闘を走る勇者のパーティの前に降りた

「やぁ、俺が相手になるよ」

勇者たちは立ち止まり、武器を構えて隊形を組んだ
以前腕を落とした騎士の腕は無事くっついたようで、剣を握り締めている

「腕、くっついたんだな」
「黙れ、前回のようにはいかんぞ」

騎士が盾を構えながら走りこんでくる
俺はすぐさま左手で重力魔術を展開すると騎士は膝をつく

勇者が横から回り込んでくると大きく剣を振りかぶり、光の刃を纏って剣を振り下ろす
後ろへ飛ぶように回避すると騎士の後ろから弧を描くように炎の蛇が襲い掛かってきた

俺は左手の重力魔術を解除すると左手で障壁を作り、受け止めた
右手に火の魔力を貯めて賢者と神官を囲むように炎の竜巻を作り出す

(手が足りない、せめて杖を戻したいが人間軍の足止めをやめるわけにはいかない)

俺は左手にも火の魔力を込めて無数の火の玉を勇者に向けて放った
勇者へ火の玉が着弾しているのを確認し、両手の魔術を解除する、転移魔術で騎士の背後へ回ると両手で騎士の兜に当て、火と雷の魔術を兜の中に送り込んだ

「.....!!!!.....!!!!....」

騎士は声もなく崩れ落ちる

(残り三人)



しばらく戦闘を続けていると人間軍が押し寄せてくる
俺はヨルンに何かあったのかと思い、ヨルンを見た、ヨルンは無数の巨大な岩の槍に貫かれ、身動きが取れなくなっている

(英雄たちの魔術か...クソッ)

人間軍の兵士全員とも言える規模だ
英雄の数も多く、12人ほど参戦しているという報告だった

(ダラダラ戦闘を続けてるわけにはいかなくなったな)

俺は杖とヨルンを呼び戻した

(こうなったら先に勇者を仕留めて残りを相手にしよう)

左手に風の魔力を、右手に火の魔力を、杖に雷の魔力を、ヨルンの腕輪に水の魔力を込めた
勇者の後方へ転移して風の刃を叩きつける

勇者は気づき、盾で受け止めた
右手を足元へかざし、火柱を作り上げると勇者は火に包まれる

さらに勇者の背中から杖に貯めた雷の魔術で勇者を攻撃し、ヨルンの腕輪から高水圧の水流を放つ

(これで終わりだろう、残り二人)

俺は賢者と聖女に目を向けた
聖女は祈りを捧げている、おそらく勇者に対してだろう

聖女の前まで転移し、熱線を撃ち込んだ
賢者は障壁で熱線を防ぐ

俺は障壁の中へ歩いて入ると障壁の中を業火で満たした
聖女は業火に耐えながら祈り続けている
賢者は苦しみながらも術式を展開し、聖女を水の薄膜で包む

しばらく賢者は耐えていたが、力尽きた
俺は竜のローブがあるためそこそこの火は平気だがさすがに無茶をしたので足が焦げてしまった

聖女にとどめを刺すべく杖を呼び戻すと、胸元が熱くなるのを感じた

目をやると、胸から剣が生えている
後ろへ目をやると、勇者がいた

(クソッ、しくじった)

勇者は語り掛けてくる

「すまん」
「ぐ...」

急に恐ろしくなった、まめい、ティル、ミミ、リリアナと子供たちの日常が駆け巡る

「やめ...」

勇者は剣をひねり、俺の胸の傷が広がる

...

怒号や人間達が戦う音、地響きや胸の熱さも何も感じなくなった
地面も空も何もわからない、寝ているのか立っているのかもわからなかった

星も見えない夜、真っ暗だ、戦争は終わったのだろうか?
ここはどこだろう、ひたすら暗い、しばらく歩いた

光もない、俺は勇者と戦ってた
ハッとして胸を見る、傷はない

...

どれくらい経ったかもわからない
俺は座り込んでどうしたらいいか考えていた



まぶたを閉じ、うつむいた
すると、うっすらと光を感じる!
あれ?夢が終わるのか、目を開けてみよう

俺は自室のベッドで寝ていた、ゆっくり起きると朝日がまぶしい
ドアが開いてる、なぜだろう

俺は廊下へ出た、廊下はボロボロだった
何が起きたかわからない、広間へ行ってみると人間達の死体が詰みあがっていた

どういうことだ!夢じゃないのか?
ティル!まめい!ミミ!リリアナ!子供たちはどこだ

俺は剣で刺されたはずだ
自分の胸を再度確認する、傷はない

不安に押しつぶされそうだ
地下のシェルターへ走った、シェルターへ続く廊下も全て人の死体だらけだ
まだティルたちの死体はない、どうか逃げていて欲しい

...

シェルターへ着いた、目の前にはおびただしい数の人の死体
ティル、ミミ、リリアナ、クルハ、くるみ、ミクロ、リク...

みんな血を流して横たわっている...

(うそだ!なんでこんな...)

動悸がとまらない、心臓の音が聞こえるほどに大きく響く
まめいの姿はない、シェルターの扉は閉まっている
俺は扉を叩いた、すると手が扉をすり抜ける

急につらくなり、涙を流した
逃げ出したくなる、床を見るのが恐ろしい
まぶたを閉じ、ゆっくりと目を開け床を見た

ティル達が口や目から血を流し、横たわっている

「あぁあああぁぁぁあぁぁぁ!!!」

恐ろしくて胸が痛かった、目の前の景色が消える事を祈って力の限り叫んだ
胸が熱くなる、叫ぶ口から血が溢れ、力が抜けていく
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