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第一章

孤児院からの依頼④

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「どうだった?」

 静まり返ったギルドに帰って来ると、案の定、じいちゃんは部屋にいた。
 遊ばずに帰ってきて良かったよ。
 明日になってたら、拳骨くらってたところだ。
 
「孤児院には特に問題はなかったよ。子ども達も痩せている子もいないし、教養や礼儀もしっかりしていた。大きい子が小さい子の面倒をよく見ていたよ」

「そうか。森の方は?」

「特に問題はなかった」

「それで、お前はこの依頼の真意を何だと思った?」

「安全確認だろうね。自分達の」

「ほぅ」

 短くそう答えると、じいちゃんは目を伏せて考え込んだ。
 あの固そうな頭の中で今度は何を考えてるのやら。

「それでどうしますか? ギルドマスター殿」

「無論、見逃すわけにはいかない。ところで? 他に報告する事はあるか?」

 ほら、来たよ。
 はっきり聞けばいいのに、素直じゃないんだから。
 
「月に掛かる金はだいたい20万リド。ある貴族が定期的に施しをしているみたいだけど、今後はわからないな。他の貴族に話を通すか、ギルドから回した方がいいだろう。後釜は貧民街のテレス婆さんはどうだい? 飲んだくれのきっつい遣手婆だけど、元文官で教養もあるし、街の奴等にも顔が効く。意外と子ども好きだし、婆さんにとってもボケ防止にいいんじゃない?」

「ちゃんと先の事まで考えて調べてきたようだな。感心感心」

「何が感心だよ。わかってて言わなかったのは俺がギルドの裏職員として、ちゃんと考えて仕事をやってるかを試すためだったんだろ? 言われなくても仕事はちゃんとやるよ」
 
「それでいい。では、引き続きお前に任せる」

 じいちゃんが金の入った袋を投げて来た。
 重さからして30万リド。
 報酬の前金ってとこかな?

「いいか? 相手が誰であろうと容赦するな」

「わかってるよ。次の取引の時に一緒にやるさ」

 俺は窓から出てギルドを後にした。
 待ってろよ、悪党ども。
 この調査のせいで、ミシュリーちゃんがお預けになったんだ。
 この恨み晴らさでおくべきか!

 それから2日後の夜、ローグの森で待機していると奴等が集まっていた。
 依頼で問題なしと報告してあったせいか警戒心もなく堂々としていやがる。
 自分達は何をしても許されるとでも思ってるのかもしれないけどな。
 どちらにしても本当に救いようがないのは間違いない。

「調子はどうだ? ザウェル」

「はい。本日も良き品をご用意してございます。シモン様」

 シモン。
 ホーベンフルト伯爵家の次男か。
 騎士隊長の息子が共犯とは世も末だな。
 伯爵自身は結構しっかりした人なのに、やっぱり身内には甘いものなのかな?

「では、どうぞ。品定めを」

 ザウェルに促されて森の奥から現れたのは俺に白湯を出してくれたあの女の子だった。
 おいおい、あの子は14歳じゃなかったっけ?
 
「ほぅ。これは下賤の者にしてはまあまあな器量ではないか。それで? 初物であろうな?」

「もちろん生娘でございます。まだ年は若いですが、礼儀も弁えてございまして、シモン様の如何なる命令にも応えましょう」

 いよいよ下衆だな。
 あの子の眼は絶望を知っている眼だ。
 生娘だろうけど、何をされているかわかったもんじゃない。
 あの生臭坊主め、腐ってやがる。

「よかろう。では、貴様は私が飼ってやる。なに、心配するな。私の言う事さえ聞いておけば……」

「汚い手でその子に触れるな。下衆」

 俺は迷わず引き金を引いた。
 弾は女の子に触れようとした下衆の手を綺麗に撃ち抜いた。
 下卑た悲鳴が森にこだまする。
 何とも不愉快な声だ。
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