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第一章
昇進
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男爵邸の執務室にダウスター男爵はその大きな身体で机に向かっていた。
「先ずは論功行賞だがな。貴官の昇進が決まった。しかも、また特進だ」
「また特進ですか? となると、上級曹長か准尉あたりですか?」
「いや、四階級特進で少尉だ。とりあえず、おめでとうと言っておこう」
よ、四階級特進!?
一気に少尉かよっ!
少尉といえば士官だから、給金も大幅に上がるぞ!
でも、これの何が困った事なんだろう?
「ありがとうございます。しかし、この昇進に何か問題でも?」
「昇進自体は特に問題ない。特進続きだが、下士官から士官への特進なんぞ貴族では当たり前だからな。問題は別件だ。カール・フォン・ライエルは貴官の友人だと聞いたが?」
男爵は唐突にカールの名前を出してきた。
「はい。過分ながら救出の際に親交を深めまして友としてくださる事になりました」
「そうか……その友人、カールの領地であるライエル領は没収となった」
「そ、そんな! では、ライエル男爵家は……それはあまりに無体ではありませんかっ!?」
領地が荒れたのはカールのせいじゃない!
父親の前ライエル男爵と叛逆したオーマン伯爵のせいじゃないか!
それで今の当主であるカールが罰せられるなんて、そんな事あっていいのかよ!
「納得できない部分もあるだろうが、貴族とはそういうものだ。内的、外的要因に関わらず統治できていなかったのは事実だ」
「し、しかし……」
「まぁ、領地没収とはいえ、ライエル男爵家は残る事になった。法服貴族となったのだ」
「ほ、法服貴族……ですか?」
「簡単に言えば領地を持たない貴族だ。領主である貴族に仕え、役職を与えられた貴族だ。街の代官などがこれに当たる」
代官か、仕組みはよくわからないけど、貴族籍が残るだけマシなのかな?
「没収されたライエル領はダウスターに併合される。カールにはそのまま旧ライエル領の統治にあたってもらうつもりだ」
「へ、併合? つまり、ダウスター領への領地譲渡でありますか?」
「まぁ、そうなるな。ジェニングス中将が陛下に今回の件を報告した際に一早く対応した我が領の事を陛下が高く評価してくださってな。褒美として領地を下賜される事になったのだ。それに俺を陞爵してくださるそうだ」
陞爵って爵位が上がる事だったはずだよな? ってことは……。
「おめでとうございます! えっと……」
「子爵に陞爵だ。これからはダウスター子爵となる」
「子爵様! 本当におめでとうございます! お祝いに林檎のブランデーを樽で送らせていただきます」
「それは有り難く受け取ろう。だがな、ここからが問題なのだ」
問題? 一体、何が問題なんだ?
ライエル領没収はカールにとっては辛いけど、爵位は残ったし、代官として今までと同じ領地に住めるわけだろ?
俺は少尉に昇進したし、男爵様は子爵様になった。
何が問題なんだろう。
「大佐が言っていた事が現実になったんだよ」
はて? 大佐が何か言ったっけ?
影の薄い人だったし、あんまり話をした覚えもないんだけど。
「覚えてないか? 貴官の叙爵だ。中将が口八丁手八丁で陛下に進言してな。陛下が興味を持たれたのだ。騎士爵に叙爵されるだろう」
「じ、叙爵っ!? 小官かですか? ま、まさか……」
「本当だ。それに加えて貴官を寄越せとうるさい方々もおってな」
寄越せってどういう事だ?
何か悪い事したっけ?
「此度の戦でも貴官の働きは素晴らしかった。それに目を付けた方々がいるのだ。特に貴官を欲しているのはレヴァンス侯爵だ。先遣していた大尉が自軍に戻った時に貴官の働きを嬉々として語ったそうだ。その報を聞いた侯爵が『是非、我が領に迎えたい!』と言ってきおった! 他にも帝都中央軍の上級士官が貴官を麾下に加えたいと言ってきておる」
マ、マジか?
そんなに過大評価されても困るんですけど。
「とにかく、貴官は俺と一緒に帝都に行ってもらう。出発は明日だ。陛下との謁見もあるから身嗜みは整えておけよ。今回は特別に帝都から魔導飛空挺の迎えが来るそうだから、荷物は少なめでいいからな」
「り、了解であります」
こうして、少尉となった俺の初任務は帝都での皇帝陛下との謁見となった。
……行きたくないなぁ。
「先ずは論功行賞だがな。貴官の昇進が決まった。しかも、また特進だ」
「また特進ですか? となると、上級曹長か准尉あたりですか?」
「いや、四階級特進で少尉だ。とりあえず、おめでとうと言っておこう」
よ、四階級特進!?
一気に少尉かよっ!
少尉といえば士官だから、給金も大幅に上がるぞ!
でも、これの何が困った事なんだろう?
「ありがとうございます。しかし、この昇進に何か問題でも?」
「昇進自体は特に問題ない。特進続きだが、下士官から士官への特進なんぞ貴族では当たり前だからな。問題は別件だ。カール・フォン・ライエルは貴官の友人だと聞いたが?」
男爵は唐突にカールの名前を出してきた。
「はい。過分ながら救出の際に親交を深めまして友としてくださる事になりました」
「そうか……その友人、カールの領地であるライエル領は没収となった」
「そ、そんな! では、ライエル男爵家は……それはあまりに無体ではありませんかっ!?」
領地が荒れたのはカールのせいじゃない!
父親の前ライエル男爵と叛逆したオーマン伯爵のせいじゃないか!
それで今の当主であるカールが罰せられるなんて、そんな事あっていいのかよ!
「納得できない部分もあるだろうが、貴族とはそういうものだ。内的、外的要因に関わらず統治できていなかったのは事実だ」
「し、しかし……」
「まぁ、領地没収とはいえ、ライエル男爵家は残る事になった。法服貴族となったのだ」
「ほ、法服貴族……ですか?」
「簡単に言えば領地を持たない貴族だ。領主である貴族に仕え、役職を与えられた貴族だ。街の代官などがこれに当たる」
代官か、仕組みはよくわからないけど、貴族籍が残るだけマシなのかな?
「没収されたライエル領はダウスターに併合される。カールにはそのまま旧ライエル領の統治にあたってもらうつもりだ」
「へ、併合? つまり、ダウスター領への領地譲渡でありますか?」
「まぁ、そうなるな。ジェニングス中将が陛下に今回の件を報告した際に一早く対応した我が領の事を陛下が高く評価してくださってな。褒美として領地を下賜される事になったのだ。それに俺を陞爵してくださるそうだ」
陞爵って爵位が上がる事だったはずだよな? ってことは……。
「おめでとうございます! えっと……」
「子爵に陞爵だ。これからはダウスター子爵となる」
「子爵様! 本当におめでとうございます! お祝いに林檎のブランデーを樽で送らせていただきます」
「それは有り難く受け取ろう。だがな、ここからが問題なのだ」
問題? 一体、何が問題なんだ?
ライエル領没収はカールにとっては辛いけど、爵位は残ったし、代官として今までと同じ領地に住めるわけだろ?
俺は少尉に昇進したし、男爵様は子爵様になった。
何が問題なんだろう。
「大佐が言っていた事が現実になったんだよ」
はて? 大佐が何か言ったっけ?
影の薄い人だったし、あんまり話をした覚えもないんだけど。
「覚えてないか? 貴官の叙爵だ。中将が口八丁手八丁で陛下に進言してな。陛下が興味を持たれたのだ。騎士爵に叙爵されるだろう」
「じ、叙爵っ!? 小官かですか? ま、まさか……」
「本当だ。それに加えて貴官を寄越せとうるさい方々もおってな」
寄越せってどういう事だ?
何か悪い事したっけ?
「此度の戦でも貴官の働きは素晴らしかった。それに目を付けた方々がいるのだ。特に貴官を欲しているのはレヴァンス侯爵だ。先遣していた大尉が自軍に戻った時に貴官の働きを嬉々として語ったそうだ。その報を聞いた侯爵が『是非、我が領に迎えたい!』と言ってきおった! 他にも帝都中央軍の上級士官が貴官を麾下に加えたいと言ってきておる」
マ、マジか?
そんなに過大評価されても困るんですけど。
「とにかく、貴官は俺と一緒に帝都に行ってもらう。出発は明日だ。陛下との謁見もあるから身嗜みは整えておけよ。今回は特別に帝都から魔導飛空挺の迎えが来るそうだから、荷物は少なめでいいからな」
「り、了解であります」
こうして、少尉となった俺の初任務は帝都での皇帝陛下との謁見となった。
……行きたくないなぁ。
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