食うために軍人になりました【一人称版】

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第二章

皇帝と一緒

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「謁見はいかがでございましたか?」

 前を歩く白髪の執事が振り返らずに話しかけて来る。
 謁見前に注意されたキョロキョロするなってやつのことかな?

「見目麗しき陛下に列席の方々の錚々たる顔ぶれ、絢爛豪華な室内と驚きの連続でしたが、なんとかキョロキョロせずに済みましたよ」

「それは良うございました。私の発言に御留意頂けたようでありがとうございます」

 そう思うならこっちを向いて話をして欲しいね。
 それにしても何処まで行くんだ?
 陛下とお会いする応接室に案内するって、もう結構歩いてるんだけどな。

「そうそう、陛下からの伝言がございます。『此度は公的でなく、私的な面会故に堅苦しい挨拶は不要』との事です」

 そう言われても何が堅いのか軟らかいのかもわからないんだよなぁ。

「しかし、そうは言われても陛下に対して馴れ馴れしくする訳にもいかないですから、どうしたらいいんでしょうか?」

「そうですね……はっきり申し上げられなくて恐縮ですが、最低限の臣下の礼があれば良いと思います。正直、陛下が私的な面会をされる事は少ないので、私としても少々、計り兼ねております。なんらかの意図がある事は間違いないかと思いますが、気まぐれな方ですので」

 へぇ、珍しいんだ。
 俺みたいなやつと面会するくらいだから結構あるのかと思ってた。
 でも、ちょっと心配になってきたな。
 今回の面会に子爵は呼ばれてないから側にいないし、どうしたらいいかわからないな。

「シュナイデン軍曹、此方になります」

 考え事をしている間に着いたみたいだ。
 目の前には重厚な造りの扉があるし、扉の横には騎士が2人立っている。
 なんて厳重な応接室だ。
 執事が顎で促すと騎士が扉をゆっくり開けてくれた。
 室内は高価そうに見える調度品が並ぶ謁見の間にも負けない豪華な造りの部屋だ。
 天井には絢爛なシャンデリア、床一面に敷かれた質の良い絨毯、向かいにある大きなガラス張りの扉からは柔らかな日差しが差し込み、窓の外にはテラスが見えている。
 うーん、自分がこの場にいていいのか不安になる。

「そちらの椅子にかけてお待ち下さい。まもなく、陛下も来られるでしょう。来られたら起立でお迎えください。では、失礼致します」

 扉の両脇の騎士達に聞こえないよう小さな声でアドバイスをくれた後、執事は退室していった。
 それにしても、座って待てと言われてもこんな部屋では落ち着かないよ。
 でも、早く帰りたいと思うのも不敬なんだろうなぁ。
 落ち着かないけど、何かくれるみたいだし、それを期待して待つとするか。

 俺が所在なさげに待つ事、30分。
 扉がゆっくり開かれ、陛下が入室してきた。
 俺は執事に教わった通り、すぐに起立して迎える。

「堅苦しい挨拶は抜きでよい。テラーズに聞かなかったのか?」

 テラーズ? 
 さっきの白髪の執事の名前かな?

「執事殿からお聞きしておりますが、さすがに何もせぬ訳に参りません。お許しを」

「ふん。まぁ、いい。座れ」

 そう言うと俺と机を挟んで対面に座る陛下。
 俺も促されるままに椅子に座っとこう。

「さて、お前には勲章以外にも褒美をやる。随分と久しぶりに笑わせてもらったからな」

 笑わせたら褒美がもらえるのか?
 だったら大道芸人とかは褒美が貰いまくりだな。

「……言っておくが、大道芸人などを呼んだら殴るからな」

 あっ、それは違うんだ。
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