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第二章
主義主張
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「わかったようだな。さっきの門兵、コンラート一等兵は貴官をウォーレイク元帥の元帥ではなく、ヴォルドン司令長官の元帥府に誘導しようとしたのだ」
おいおい……マジかよ。
軍務省の門兵がそんな事で大丈夫なのか?
「間違い……では、ありませんよね?」
「残念ながらな。あいつは貴官を言葉巧みにヴォルドン派に取り入れようとしたのだ。その功績で出世するためにな」
「ですが、小官がたとえそのままヴォルドン司令長官の元帥府に行ったとしてもすぐに引き上げれば……」
「そんな事は関係ない。貴官が軍令部で辞令を受けた後にヴォルドン司令長官の元帥府に真っ先に向かったという事実があればいいのだ。あとは人事部長のヒーマン大佐が事実をどうにでも改変するさ」
腐ってるわ!
マジで腐ってるわ! この軍は!
あの門兵のやつ、後で覚えてろよ!
「断っておくが、コンラート一等兵に何もするなよ」
「何故ですかっ!? 奴は小官に嘘の情報を!」
「証拠はない。新兵の勘違いとでも言われたらそれまでだ」
ぐぬぬ……なんて組織だっ!
中心から末端まで腐り果ててやがる!
待てよ、じゃあ大尉も……。
「そんな目で見ないでほしいな。俺はどこの派閥にも属していない自由の身なんでな。お陰で友人らしい友人もいないがね。さっきも足早に立ち去ったのは俺と繋がりがあると思われると貴官の出世の妨げになるからだと思ったからだ」
「出世の妨げ?」
「情けない話だが、今の軍内部では誰に付くかで出世が決まるのだよ。最大派閥はヴォルドン司令長官。次にヘルフォード軍令部総長とフェラース軍務大臣だ。残念ながら貴官のウォーレイク元帥派閥は彼らと対抗するには力不足だな」
そりゃそうでしょうとも。
なんせ元帥以下の主だった将官はジェニングス中将だけ。
士官もアンダーソン大佐、ヴォルガング大尉とリンテール少尉、それと俺だけだからなぁ。
「俺としてはウォーレイク元帥には期待している。だから一度は貴官を救った。だが、次はわからんぞ? 俺が別の派閥に付けば……」
そんな試すような目をされても困る。
俺だって血の通った人間だよ?
「そうはならないでしょ? 大尉はこれまでも誰にも付かなかった。それは付くに値しなかったからです。いきなり自身の主義主張を変えられるものなんですか?」
この人はしない。
生きるために安易に変える人はいるけど、この人はしない。
だって、俺の出世の妨げになるかもって会ったばかりの俺に気を遣ってくれる人だ。
それに大尉は監査部所属で軍の内情には詳しいはず。
そんな人が今まで誰にも付かなかったのは付くに値しないと判断したからだ。
だから、この人は今更生き方を変えれない不器用な人なんだと思う。
だからこそ信頼できる!
「……そんな若い熱い眼をしないでくれ。昔を思い出してしまう」
大尉は馬車の窓を流れる帝都の街並みを見ながらボソッとそう呟いた。
おいおい……マジかよ。
軍務省の門兵がそんな事で大丈夫なのか?
「間違い……では、ありませんよね?」
「残念ながらな。あいつは貴官を言葉巧みにヴォルドン派に取り入れようとしたのだ。その功績で出世するためにな」
「ですが、小官がたとえそのままヴォルドン司令長官の元帥府に行ったとしてもすぐに引き上げれば……」
「そんな事は関係ない。貴官が軍令部で辞令を受けた後にヴォルドン司令長官の元帥府に真っ先に向かったという事実があればいいのだ。あとは人事部長のヒーマン大佐が事実をどうにでも改変するさ」
腐ってるわ!
マジで腐ってるわ! この軍は!
あの門兵のやつ、後で覚えてろよ!
「断っておくが、コンラート一等兵に何もするなよ」
「何故ですかっ!? 奴は小官に嘘の情報を!」
「証拠はない。新兵の勘違いとでも言われたらそれまでだ」
ぐぬぬ……なんて組織だっ!
中心から末端まで腐り果ててやがる!
待てよ、じゃあ大尉も……。
「そんな目で見ないでほしいな。俺はどこの派閥にも属していない自由の身なんでな。お陰で友人らしい友人もいないがね。さっきも足早に立ち去ったのは俺と繋がりがあると思われると貴官の出世の妨げになるからだと思ったからだ」
「出世の妨げ?」
「情けない話だが、今の軍内部では誰に付くかで出世が決まるのだよ。最大派閥はヴォルドン司令長官。次にヘルフォード軍令部総長とフェラース軍務大臣だ。残念ながら貴官のウォーレイク元帥派閥は彼らと対抗するには力不足だな」
そりゃそうでしょうとも。
なんせ元帥以下の主だった将官はジェニングス中将だけ。
士官もアンダーソン大佐、ヴォルガング大尉とリンテール少尉、それと俺だけだからなぁ。
「俺としてはウォーレイク元帥には期待している。だから一度は貴官を救った。だが、次はわからんぞ? 俺が別の派閥に付けば……」
そんな試すような目をされても困る。
俺だって血の通った人間だよ?
「そうはならないでしょ? 大尉はこれまでも誰にも付かなかった。それは付くに値しなかったからです。いきなり自身の主義主張を変えられるものなんですか?」
この人はしない。
生きるために安易に変える人はいるけど、この人はしない。
だって、俺の出世の妨げになるかもって会ったばかりの俺に気を遣ってくれる人だ。
それに大尉は監査部所属で軍の内情には詳しいはず。
そんな人が今まで誰にも付かなかったのは付くに値しないと判断したからだ。
だから、この人は今更生き方を変えれない不器用な人なんだと思う。
だからこそ信頼できる!
「……そんな若い熱い眼をしないでくれ。昔を思い出してしまう」
大尉は馬車の窓を流れる帝都の街並みを見ながらボソッとそう呟いた。
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