食うために軍人になりました【一人称版】

第二章

100枚

　ふぅ、こんなもんかな。
　必要な雑貨は買ったし、保存の効く食料も買い込んだ。
　家具の配置も終わったし、掃除も済んだ。
　午後から大佐が来るけど、これでなんとか失礼じゃない程度には片付いただろう。
　ダイニングには中将から貰ったテーブルを置いたし、空いてるスペースに少佐から貰った絨毯を敷いた。
　いやぁ、絨毯なんて本当に敷いて良いのかと悩んだけど、少佐が敷くものだって言うからには敷かないとね。
　そんで絨毯に沿うように中尉からもらったソファーを置いた。
　まさか、ソファーが来るとは思わなかったからビックリしたよ。
　結構大きいソファーで玄関から入らなかったから、魔法鞄マジックバックに入れてから中に入れないといけなかった。
　ビックリと言えば、サンイラズ侯爵とダウスター子爵だ。
　どこから聞いたのかお2人からも祝いの品を頂いたよ。
　サンイラズ侯爵の品は絵だった。
　山と湖の描かれた綺麗な絵だったから、ソファーの正面の壁に飾ったよ。
　ダウスター子爵はブレないね。
　大量に酒を送ってきた。
　酒瓶と樽で台所横にあった保管庫が半分占領されちゃったよ。
　お気持ちは有り難いけどね。

「でも、これが俺の新しい家か。なかなか良いんじゃないか？　これなら田舎者だと馬鹿にされないで済むと思うんだけど。後は大佐に見てもらって悪い所を直していこう」

　おっと、そうだ。
　大佐が来る前にお茶の準備をしておこう。
　元帥閣下から貰ったティーセット。
　茶葉もそれなりの物を用意したし、有難く使わせてもらうとしましょ。

「おーい、大尉」

　ありゃ？　もう来ちゃった。
　思ったより早かったな。

「はい！　大佐殿。お待ちしておりました。おや？　マルグリットさんも一緒でしたか？」

　玄関扉を開けるとそこにはアンダーソン大佐と家主であるマルグリットさんがいた。

「ああ、たまたま出会ってな。ちょうど良いと思って誘ったのだ」

「シュナイデン様、急に来まして申し訳ありません」

「いやいや、全然大丈夫ですよ。どうぞ、今お茶の用意をしていた所です」

「そうか。では、中に入っ……」

「アンダーソン様？　どうかしま……」

　中に入った2人が口を開けたまま固まってしまった。
　どうしたんだ？

「大佐殿？　マルグリットさん？　どうしました？」

「な、な、な、なんだぁ！？　ここはっ！？」

「なんと、まぁ……」

　急に大声を出した大佐と呆然としたままのマルグリットさん。
　俺の家、何か変だったんだろうか？

「大尉！　どうしたんだ！？　このテーブルは！？」

「これですか？　これは中将がお古だからって……」

「もらったのかっ！？　これを！？　この繊細なカービングに天板エッジのリーフパターン！　伝統的なフォルム！　この深い味わいの杢目！　デラウェイパンネラの一級品であるこのテーブルを貰ったのかっ！？」

　いつもの大人しい大佐と違って、すごい剣幕だな。
　デラウェイパンネラ？
　なんだ、それ？

「シュナイデン様。デラウェイパンネラは一流ブランドの名前です。とても高級品でして、貴族の方々にもかなりの人気と聞いております」

「ああ、だから中将も使っておられたんですね。なるほど」

「……わかっておらんな。貴族の方々が安物なんか使うわけないだろ？　このテーブルと4脚の椅子。これだけでも金貨100枚はくだらないんだぞ！」

「き、金貨100枚ぃいいいいい！？」