食うために軍人になりました。

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第三章

中将と少佐と中尉

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「それで、どうだったんだ? あいつは」

「私が行った時はまだ良かったんですけど……」

「私が行った時はダメダメでしたよぉ。ボッコボコの死屍累々って感じでしたからねぇ」

 やっぱりか。
 やれやれ、困ったものだ。
 忙しいのに悪いと思ったが、アリシアとファンティーヌに様子を見に行ってもらって正解だったようだな。

「やはり彼に小隊長は難しかったのではありませんか? 分隊すら指揮した事がないのに、いきなり小隊長とは……実力というよりは経験不足を感じます。」

「それと社会的常識ですねぇ。自分と他の軍人との戦闘力がどれだけ差があるかわかってないんですよぉ」

「確か卿達の言う通りだ。だが今は時間がない。まもなく北方戦線が開く。そうなれば、あいつには嫌でも小隊長として参陣してもらわねばならない。でなければ軍令部から何を言われるかわからん」

「軍令部っていうかぁ、軍隊司令長官のヴォルドン元帥ですよねぇ」

「おい、ファンティーヌ。軽々しく口に出すな。此処が完璧に安全とは言えないんだぞ。あの根性悪なら他の元帥府の盗聴ぐらいやりかねんからな」

 ファンティーヌを諫めるアリシアの言葉も大概だな。
 だが2人の言う通り、ヴォルドン元帥はウォーレイク元帥を目の敵にしている節がある。
 嫌がらせ感覚で軍事に口を挟む事もあるから厄介な事だ。
 まぁ、怪我の功名でこの度はファーレンハイト大尉を招くことが出来たのは大きかったがな。
 大尉は後方支援の専門でその分野においては、他の者より頭2つは飛び抜けている。
 多少は潔癖で頑固な面もあるが、大きな問題はない。
 少なくともヴォルドンに対して反抗する気概がある時点で私は気に入ったからな。

「それより話を戻すが、シュナイデン大尉には指揮官としての能力も培ってもらわねば困る。いつまでも単騎突撃では困るからな」

「了解です。合間を見てそれとなく小隊長の役割についても話してみます」

「私も隊員達との関係性の構築について教えてあげますよぉ」

「すまんが頼む。私からも指揮系統などについて説明しておくようにしよう」

 ん? 
 ファンティーヌめ、何を笑っているだ?
 私が何かおかしな事言ったか?

「ふふっ、他の人だったらここまで手厚くはならないのにぃ、大尉は幸せ者ですよねぇ~まぁ、それは教える側もそうかなぁ? ねぇ? アリシアちゃん?」

「わ、私は上官として当然の事をしているだけで、他意は……」

「へぇ~? 軍令部から元帥府に戻って来て、練兵場に行く前にしてた身だしなみや髪型のチェックもですかぁ~?」

「なっ!? あ、あれは……軍人として、その、襟を正していただけで……」

「ふーん、窓ガラスに向かってニコッて笑ってたのも……」

「うわぁあああああ! 何で知ってるんだっ! だいたいファンティーヌだって走って練兵場に行ってたじゃないか! 普段は走ることなんて面倒くさがるくせに!」

「だってぇ、私は大尉に早く会いたかったんだもーん」

「くっ! ぬ、ぬけぬけと……だいたいお前はいつも……」

 やれやれ、2人も相変わらずだな。
 この2人に好かれるとは大尉もまったく幸せ者だ。
 

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