食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第三章

右翼壊滅

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 俺達左翼部隊は全軍をもって敵右翼の中枢へと攻め込んだ。
 敵陣が近くなるにつれて敵の守りも堅固にはなっていたが、既に司令官が討たれていた事もあり、兵士達の士気は低かった。
 今がチャンスだな。
 ここで一気に攻勢でよう。

「第78小隊! 敵の本陣に向けて突っ込むぞ! 遅れるやつは置いていく! 死ぬ気でついて来い!」

「「「了解!」」」

 俺達は半分戦意喪失した奴等を蹴散らしながら本陣への突撃を敢行した。
 本陣の手前には兵が密集していたが、此方の方が勢いも士気も高い。
 あっという間に蹴散らして敵の本陣の中へと突入、敵兵から本陣の天幕を聞き出して、その天幕を囲った。

「我々はヴァランタイン帝国、第78小隊だ! 抵抗は無駄だ。大人しく投降すれば良し、さもなくば無駄に命を散らすことになるぞ!」

 中にいる敵の幹部達に降伏勧告を出した。
 別に斬り捨てても良かったんだけど、幹部達なら何かの役に立つかもしれないからね。
 敵の本隊の作戦行動を知っていれば、この先の戦いが優位に運べるだろうし、何より楽でいい。
 しかし、反応はないか。
 気配を見るに何人かが中にいるのは間違いないんだけど……。

「小隊長、反応がありませんね。どうします? このまま待っているのは得策ではないかと」

「既に敵右翼は瓦解しており、組織的な抵抗は終わっています。ですが、敵の本隊がやって来ないとも限りません」

 少尉と曹長の言う通りだな。
 ただ囲んで待っているのもバカバカしい。
 それに段々面倒臭くなってきた。

「確かに悠長に待っている場合じゃないな。よし、天幕を潰そう。おい! 魔法兵隊、前へ出ろ。この天幕ごと敵を丸焼きにしてしまえ!」

 俺の大声に少尉が困惑した顔を見せた。

「よ、よろしいのですか? 敵を捕らえて情報を引き出した方が……」

「少尉、投降を呼びかけても相手からは反応はない。おそらく時間稼ぎをしているんだろうから簡単には捕まえられない。捕まえたとしても情報を聞き出すのに時間がかかる。今は一刻を争う時だ。このまま敵右翼を完膚なきまでに壊滅させて、敵の本隊の士気を挫く方が有利に立てる。構う事はない、骨すら残らないほど焼き尽くしてやれ。ジェラール・フェルドと同じようにな」

 俺の声が聞こえたのか、敵の天幕の中が慌ただしくなった。
 
「ま、待て! と、投降する! 投降するから!」

 天幕の中から豪華な軍服を着た何人かの兵士が手を上げながら出てきた。
 ったく、投降するなら最初から出てくればいいのに。

「流石ですな、小隊長」

「ブラス曹長?」

「ワザとあのような残虐非道な事を言ったのですね。敵の投降を促すために。お見事です」

「えっ? あ、いや……まぁね」
 
 天幕ごと燃やすって残虐非道だったのか……危なかった。
 ブラス曹長の尊敬の眼差しが痛いな……。

 
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