食うために軍人になりました。

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第三章

処罰と真の目的

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「悪いが先の昇進の件は無かったことにしてくれ」

 げっ! マジで俺が処罰されんの?
 いつもの冗談……じゃなさそうだ。
 表情もかなり険しいし、何か悪いことしたかなぁ……
 そういえば家に帰った時に陛下の前なのに突っ立ったままだったっけ。
 それにその後も平伏する事なく、普通に話しちゃってたし、風呂に行く時もサッと行っちゃったからなぁ。
 不敬と言われればそうかも……
 昇進無しは嫌だけど、不敬罪で死刑になるよりはマシか。
 とにかく今からでも謝るべきだな。

「申し訳ありませんでした」

「何故、卿が謝るのだ? オルダーニと関係でもあるのか?」

「オルダーニ?」

「オルダーニ子爵家。此度の遠征においてシュナイデン卿が所属していた部隊の法務官を務めていた者の家です」

 ああっ、あの逃げた文官か。
 あいつは軍人の風上にも置けない奴だったし、あんな恥知らずな奴、知り合いにいたら恥ずかしいわっ!

「いえ、縁もゆかりもございません」

「それならいい。軍規違反のオルダーニの小倅は相応の処罰をせねばならんからな。しかし、よりによって敵前逃亡とはな……これだから貴族というだけの高官は度し難いのだ」

 なるほど、陛下もそいつの話を聞いて表情が険しくなったわけか。
 俺が怒られたわけじゃなかったみたいで良かったよ。

「だが、その馬鹿がお前の特進を約束していたと報告があったが、それは事実か?」

「はぁ、確かに小官が単独任務に出る時にそのようなお話がありました」

 っていうか、それは俺が言い出した話じゃないんだよなぁ。
 リーゼンフェルト少将がルーストレーム相手に行けと言うならそれぐらいは当然だって条件つけたんだ。

「ふむ。ならば仕方ない。先の一階級昇進では不服であろう。だが、高等士官学校は少佐が入学条件だ。故にお前は卒業と同時に中佐に昇進させる事にしよう。それで良いか?」

「は、はっ! ご、御随意に」

 ちゅ、中佐か……
 かなり高い階級になってきたけど、いいんだろうか? 
 俺ってまだ16だぞ?
 それなのに中佐って。
 中佐と言えば大隊長や連隊副隊長だ。
 今までの小隊長とは比べ物にならない程の責任がある。
 今の俺に務まるわけがない。
 うーん、そう考えると高等士官学校に行くのも仕方ないように思えてきたな。

「だが、これでしばらく昇進はなかろう。士官学校の学生は余程のことがない限り戦地には行かんし、学生の間の昇進もないからな」

「16歳で中佐は十分ですよ。士官学校でしっかり学ばせていただきます」

「ふむ。そうするがいい。その後は貴族としての務めもあるからな」

 ん? 貴族としての務め?
 どういう意味だ?
 騎士爵には特別な務めはなかった筈だけど。
 あれ? テラーズさんが何か持ってきたぞ。
 あれは剣か?

「テラーズ。準備はよいか?」

「はい、ぬかりありません」

「よし。では、これよりリクト・フォン・シュナイデンの准男爵への陞爵の儀を行う」

 はぃいいいいいいいいいいっ!?
 き、聞いてないよぉおおおおっ!

 

 
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