食うために軍人になりました。

KBT

文字の大きさ
上 下
188 / 480
第三章

思惑の真意

しおりを挟む
 ヴォルガング少佐とリンテール中尉の最初から最後までの変わらない圧を受けながら、俺の凱旋パレードは終わった。
 いや、凱旋って言葉にもパレードって言葉にも楽しい雰囲気しかないんだけど、全然楽しくなかったし、妙に気疲れしたよ。
 どんよりした俺は次の予定である陛下との謁見に備えて帝城に移動する事になり、ここで2人と別れ、ようやく圧から解放された。
 そして待機する部屋の中で再会したリーゼンフェルト少将との雑談の中で、さっきの少佐と中尉の話をすると頷きながら納得されてしまった。

「それは彼女達の言い分が正しかろうな」

「そうなんですか? ですが、何故そんな事になるのでしょうか?」

「貴官は今や帝国の英雄だ。その男を一門に迎え入れる、また麾下に収められれば、自身の権力を周囲に誇示する事が出来るだろうからな」

「それは以前陛下にもお聞きしましたが、それが何で虫になるのですか?」

「虫とはおそらく隠喩だ。その人にとって好ましくない交際相手の事を『悪い虫』と表現するのだ。貴官の場合であれば女性であろうな」

 女性? 
 女性が好ましくないってことか?
 でも、そうなるとヴォルガング少佐とリンテール中尉もそうなるんじゃないか?

「また勘違いしているようだから言っておく。女性もは女性全般の事ではない。貴官に近寄る事を目的とした女性だ」

「近寄る事を目的とした女性?」

「先に言った貴官を欲しい者達は貴官に近づくために娘や孫なんかを貴官にあてがってくるだろうからな」

 ああ、なるほど。
 俺がその女性と関係をもてばそれだけで縁になるってわけか。
 嫌いだな、そういうのは。

「だからジェニングス中将は貴官の馬車に少佐と中尉を無理に乗せたのだろう。貴官に色香は通用しないと、あのパレード中2人が目を光らせていたのは貴官が女性に隙を見せないために必要だったのだよ」

「そういう意図があったんですか? それならそうと言ってくれればいいのに」

「まぁ、ライバルを増やしたくないのもあったのだろう。大目にみてやってくれ」

 ライバル? 
 一体何のライバルだろ?
 それを聞こうと思ってたら、部屋の扉が開いて、黒髪の執事が礼をした。
 どことなくテラーズさんににているから、この人がテラーズさんの跡を継いだ息子さんかな?

「失礼します。フロリアン・フォン・リーゼンフェルト少将閣下、リクト・フォン・シュナイデン大尉殿。謁見の準備が整いました。玉座の間までお越しください」

 さぁ、久しぶりの謁見だな。
 ボロが出ないように注意しないとね。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,422pt お気に入り:2,473

正しい聖女さまのつくりかた

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:841

地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,700

飴と薬と鎖鎌

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:65

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,086pt お気に入り:281

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,039pt お気に入り:3,568

悪役令嬢の中身が私になった。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:2,628

処理中です...