食うために軍人になりました【一人称版】

第三章

終幕

「そ、そんな……」

「とても良い攻撃だったよ、兜メイドさん」

　驚いたみたいだな。
　まぁ、俺だって最初は戸惑ったもん。
　まさか手で刃を受け止める技があるなんて思わなかったからなぁ。
　それにしても、このハルバートは結構良い業物だね。
　鉄の質もいいし、バランスも良い。
　うーん、少し惜しい気もする。

「や、刃を受け止めたからって関係ない！　このまま押し切ってやる！」

「おっ？　力比べか？」

　鎧メイドさんは身体を震わせながら力を込めてるけど、その程度の力じゃ俺はビクともしないぞ。

「クゥ……クククッ……」

「これが限界かな？」

「バ、バカな……こんな細腕のやつにこの私が……」

「うーん、自信を持つのは良い事だけど、過信は禁物だよ。常に相手は己より強者であると考えなきゃ。じゃあ、そろそろ終わりにさせてもらうよ」

　無剣・無刀華散は敵の攻撃を受け止めるだけの技じゃない。
　この技の真骨頂はここからだ。

「さぁ行くぞ。さよならは今のうちに済ませておけよ」

「な、何をする気だっ！？」

　何かする気です。
　この技はあんまり得意じゃないから少し時間がかかるけど、許してね。
　両手で受け止めたハルバートの刃に魔力を込めてっと。

「な、なんだっ！　このひび割れるような音は！？」

　この音がするってことは刃全体に魔力が行き渡ったってことだな。
　思ったより早かった。
　それだけ良品の武器だったて事か。
　惜しい気は拭えないけど、仕方ないね。
　仕上げに力を込めて刃を圧迫するぞ。

「ふん！」

　バッキーン！

　ハルバートの刃がバラバラと崩れ落ちていった。
　うん、上手くいったね。

「そ、そんな……す、素手で私のハルバートの刃を粉々にするなんて……」

「これが魔刃一刀流の四文字、無剣・無刀華散だよ」

　本来の魔刃一刀流は刀に魔力を流し、剣術と組み合わせる事で魔法を発動させるんだけど、この技は相手の武器に魔力を流して破壊する武器破壊技だ。
　だけど魔力を流すには接触していないとダメだし、ちょっと触れただけだと魔力が流れていかない。
　だから相手の攻撃を素手で受け止める必要があるんだ。
　達人相手だとなかなか難しい技なんだよね。

「さて、武器は無くなっちゃったけどどうする？　またさっきみたいに別の武器を出すか？」

「うっ……」

「うっ？」

　なんだ？　
　急に俯いて肩を震わせ始めたぞ？

「おい、どうし……」

「うわぁあああああああああん！　私のベルちゃんがぁああ！　ベルちゃんがぁあああ！　うわぁあああああああん！」

　な、な、な、なんだっ！？
　急に泣き出したぞ！
　べ、ベルちゃんて誰だ？
　しかも、なんて馬鹿でかい声だ！

「ヒ、ヒルダ様！　お気を確かに！」

「なんて事を……ヒルダ様の愛斧であるベルテを砕くなんて……」

「酷い、酷すぎるよ！」

「貴方は人間じゃないわ！」

「……最低」

　ええええええええええっ！
　倒した奴らからの心無い罵倒！？
　そんなに俺が悪いのかっ！？