食うために軍人になりました【一人称版】

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第三章

過去の話

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「オーマンって、あの叛逆者オーマンの事か?」
 
 8人全員が俺の前に跪いて頭を下げているが、それには何も感じなかった。
 俺は襲ってきた事については怒ってはいない。
 やむに止まれぬ事情があるかもしれないし、軍人であれば誰かに命令されたって事もあり得るからだ。
 だが、オーマンの部下となると話は別だ。
 
「その通りです。帝国に反旗を翻し、シュナイデン様に討ち取られたあのオーマン。我々は領軍所属の軍人でした」

「ふーん。奴は反旗を翻した後にライエル領を襲った。そして略奪、暴行など人の道に外れたる外道行為をしたわけだが……お前達も同じか?」

 俺は自分でも抑えられない怒りが込み上げているのを必死に堪えた。
 ライエル領のカールは俺の友人であり、ライエルの領主だった。
 しかし、オーマンの侵攻を許したカールはライエル領を没収され、今は法服貴族となっている。
 貴族としての籍が残ったのは喜ばしかったが、それでも領主では無くなった事に変わりはない。
 その片棒を担いだとなれば許すつもりはない。

「どうなんだ? 答えろ」

「そ、それは……」

 兜メイドさん改めヒルデガルトは言葉を濁している。
 つまりそういう事か。
 何のつもりでここに来たか知らないが、我が友の仇を討たせてもらおう。
 いや、それより捕まえててカールに引き渡そう。
 カールは優しい男だけど、腹が立たっていないわけがない。
 オーマンは俺が斬ってしまったから、その残党だけでも斬れば少しは気が晴れるかもしれないからな。
 全員四肢の骨を砕いて、カールの元に送りつけてやろう。

「お待ちください、旦那様」

 ヒルデガルトに手をかけようとした俺の腕をテラーズが止めた。

「何のつもりだ?」

「旦那様こそ何をなさるつもりですか? 私が止めねば旦那様の二つ名に《ロンドベルゲンの惨劇》という不名誉な名が増えるところだったのですよ?」

「だから何だ? カールの怒りと哀しみを思えば、こいつらを許す道理はないぞ」

「早計は避けるべきです。この者達はオーマンの叛逆に加担する事を良しとせず、そのために軍を追われた者達なのです」

 え? 軍を追われた?
 どういう事だ?

「わ、私達はオーマン領軍の叛逆に反対でした。オーマン伯爵にもお考えを改めるよう上申したのですが、伯爵の耳は既に別の者によって防がれていたのです」

「我々は皇帝陛下に弓引く事はできず、命令を拒否しました。その結果としてフォンタール大佐によって軍から追放されたのです」

 フォンタール大佐……なんかそんな名前の人いたぞ。
 オーマンの軍の連隊長だった筈だ。

「彼なりの配慮でしょうな。反旗を翻した時に命令拒否などすれば、見せしめに殺されてもおかしくはありません。だからフォンタール大佐はヒルデガルト中尉達を守るために軍から追放したのでしょう」

 確かにそうだ。
 それに大佐はオーマンが討たれた後は即時降伏したって聞いた。
 お陰で無駄に命を散らす者がいなくて良かったって。
 しかし、さっきの話が本当ならこいつらはライエル領を荒らしてないわけか。
 なるほど、確かに早計だったな。
 危うく無実の奴らを斬るところだったよ。
 あれ? 待てよ。
 
「その話が本当ならなら軍に復帰すればいいんじゃないか? 追放の理由も不当だし、軍令部に掛け合えば大丈夫だろ? お前達はかなり強いしな」

「それが……無理でした」

 え? なんで?

 

 
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