食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第四章

世継ぎ

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 ううぅ……最悪の目覚めだ。
 中途半端に興奮したし、自責の念もあったせいかうまく寝れなかった。
 まさかヒルダの言ってた事が夜伽の事だとは思わなかったからな。
 でも、さすがにあれは無理だろ。
 
「あぁ、いてて……変な体勢で寝てたせいか身体が痛いな」

「まったくです。よくそんな体勢で寝れたもんですな」

「うわぁああああ!」

 背後から気配もなく声をかけられて絶叫してしまった。
 声の主は当然テラーズ。
 というか、俺の背後をとれるのはテラーズくらいなもんだよ。

「あのなぁ、心臓に悪いんだよ。もっと優しく声をかけてくれないか?」

「倉庫の片隅でシーツに包まって寝ているような領主様にはこれぐらいがちょうどいいのですよ」

「ぐっ……だ、だって仕方ないだろ。あいつら半裸で来た上に襲いかかってきたんだぞ? おまけに『これもプレイですか?』って訳の分からない事言いながら追いかけて来たんだ! 逃げるのも当然だろ!?」

「はぁ……とにかく、さっさと支度なさってください。今夜には帝都に向けて出発しないと行けないのですから、仕事が残ってますよ」

「わ、わかってるよ。でも……」

「あの者達は昼間は普通に仕事をしますから問題ありません。昨夜の事も誤解があったと説明しておきましたから大丈夫です」

 テラーズさぁああん!
 ありがたや、ありがたや……

「拝まなくていいですから早く支度をしに来てください」

「お、おう!」

 俺は慌てて倉庫から飛び出てテラーズと一緒に部屋に向かった。
 途中、テレシアとクラリスとすれ違ったけど会釈するだけで特に変わった様子はなかった。

「……本当に問題ないみたいだな」

「当然です。今は後継問題よりも目の前の仕事の方に集中して欲しいですから」

「後継問題? 俺のか?」

「他に誰がいるんですか? 言っておきますが、これもいずれは避けて通れない問題ですから嫌がっても無駄ですよ」

 別に嫌がる理由はない。
 俺だって人並みの男だ。
 女性に興味はあるし、結婚だってしたい。
 子どもも好きだしね。
 ダウスターではよく村の子達と遊んだもんだ。

「その問題の課題は相手だけだよ。俺自身は結婚に後向きなわけじゃない」

 俺の言葉にテラーズは驚いた顔を見せた。
 なんさおかしな事言ったか?

「意外ですな。では何故昨晩は逃げたのですか? てっきり女性に対して奥手なのだと思ってました」

「あれは愛を育もうとする淑女じゃなく、獲物を喰おうとする猛者だったからだ! ヒルダなんか兜にネグリジェ姿で迫ってきたんだぞ? 理解できんわ!」

「なるほど。まぁ使用人からすれば旦那様のお手付き、つまり妾にでもなれば将来は安泰ですからギラついたのもやむを得ないところでしょう」

 勘弁してくれ。
  
「しかし、良い事を聞きました。では、縁談の話は前向きに検討する事にしましょう」

 へっ? 縁談?
 

 
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