食うために軍人になりました【一人称版】

KBT

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第五章

熱さと爽やかと

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 俺の相手はロビン・マックスか。
 確か南方方面軍からの推薦者だったよな?
 おっ? 誰かが近づいてくるぞ。

「お前がシュナイデンか?」

 俺より背がデカくて体格のいい男だ。
 何より筋肉がしっかりついている。
 腕の太さは女性の腰回りくらいはありそうだ。
 俺が一番強いって感じで自信に満ち溢れた態度をしていやがる。

「そうだ。卿がロビン・マックスか?」

「まぁな。俺は運がいいぜ。一番戦いたかった奴と一回戦で当たるとはな。普段の行いは良くしておくもんだぜ」

 不敵な笑いを浮かべるロビン。
 獲物を見るかのような瞳が少し気に入らないな。

「運がいいのか悪いのかは今はわからないだろ? 後悔しても知らないぞ」

「ふんっ! 甘ったれが! 戦いは勝つか負けるかじゃねぇ。生きるか死ぬかだ。死んだら終わりなんだから後悔なんかする暇もないんだよ! これだから平和ボケした貴族はクソなんだ!」

「……なんだと?」

「一丁前に怒るか? お前の睨みなんざ俺には効かねぇんだよ! 惨劇だが英雄だか知らねぇが、お前がやった事なんか大した事ないんだよ! 兵士100人? 百勇士? それがどうした!? 俺達南方の兵士はいつも最前線で命張ってんだよ! 内地でぬくぬくしてやがるお前らに何が出来るんだよ!?」

 興奮して一方的に罵ってきやがるな。
 随分な言われ様だ。
 それにしても腐った貴族を排除したいと思っている俺を奴等と同類扱いするとは……思った以上に腹が立つな。

「南方の兵士は声と威勢だけはいいと見える。それで倒される敵もその程度というわけだ。よかったな、ロビン。南方の兵士で」

「テメェ……獣人や亜人を舐めてんのか!? 奴らを愚弄すんじゃねえよ!」

 あっ? さっきよりも怒り出したぞ。
 獣人や亜人を舐めるな?
 どういう事だ?
 奴等は帝国にとっては宿敵のはずだ。
 帝国の古い人達は未だに獣人の殲滅を唱えてるくらいだしな。

「どういう事だ?」

「俺はあいつらと何度も戦った! だが、あいつらは絶対に卑怯な真似はしなかった! 正々堂々と誇りを持って戦っているんだ! その戦士の誇りを汚す事。俺は絶対に許さない!」

「へぇ、君は獣人と亜人の誇りを尊ぶのかい?」

 熱苦しいロビンとは対照的な爽やかな出立で歩み寄ってきたのはバランディン様だった。
 さっきの会話を聞いてる限り、俺はあまり関わりたくない相手だな。

「ゴッドフリート・フォン・バランディンか」

「そうだよ、ロビン・マックス。随分と辛く当たるじゃないか? 見ていられないよ」

「黙れ! お前には関係ない事だ! 俺はこの腐った貴族の……」

「先入観は捨てる事だね。シュナイデン卿が腐ってるかどうかも見極めずに噂だけで中傷するなんて、君はそれが誇りある行為と言うつもりかい?」

「うっ……」

 ど正論!?
 すいません! バランディン様! 
 俺も貴方を侮っていました!

「今日は栄えある帝国軍の勇者が揃う日だ。不心得者は帝国の汚点でしかない事を肝に銘じておきなさい。それにもっと目を養う事だ」

「どういう意味だ!?」

「シュナイデン卿が卑怯な弱者に見えるなら君は一回戦で消えるのは確実だよ。僕なら最初から全力でいくね」

 バランディン様がいやらしい目つきで俺を見てくる。
 値踏みするような、挑発するような感じだ。
 だけど、この人も強い。
 さっきまでの軽々しくて飄々とした雰囲気が全くない。
 なんて存在感だ。

「ぬうぅ……いいだろう! シュナイデン! 勝負でお前が俺に勝ったなら俺を好きにするがいい! だが、俺が勝ったら民衆の面前で土下座してもらうからな!」

 それだけ言い残してロビンは去っていった。 
 最後まで一方的な奴だったな。
 だが、獣人に対する見解には少し興味が湧いた。
 戦士の誇り……良い事言うじゃん。
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