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第五章
始まりの鐘
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今日一番の大歓声に思わずびびってしまった。
と、とりあえず名を呼ばれんだから闘技場に出よう。
「いやぁあああ! シュナイデン様ぁあああ!」
「こっちに顔をお見せになってぇええええ!」
な、なんだ?
よくわからないがさっきよりも黄色い声が闘技場内を響き渡ってるぞ?
声の主は一人二人じゃないし、俺には帝都にそれほど多くの女性の知り合いはいない筈だ。
例えばあそこで俺の名前を呼んだ女の子……
「きゃっ! シュ、シュナイデン様が私を見つめて……ああ、そんな……」
なんかふらついてるみたいだけど、やっぱり知らない人だ。
応援してくれるのはありがたいけど、どうにもうるさくて敵わないな。
「静粛に! お気持ちはわかりますが静粛に願います!」
進行の人の必死の説得で収まりつつあるけど、なんか雰囲気がぶち壊しだな。
俺はここに戦いに来たんだ。
あまり興を削いで欲しくない。
「ふふふっ、これはこれは。すごい人気ですね。シュナイデン様」
声をかけて来たのは俺と一緒に入場した珍しい桃色の髪をした女性だった。
セミロングの髪を整える仕草がなんとも艶っぽくて大人の女性を感じさせる。
これだけインパクトのある見た目の人なら一度会ったら忘れないと思うけど記憶にないな。
「あの、失礼ですが……」
「申し遅れました。私はメアリー・シーラン。皇帝陛下直属の魔道士で、この度は陛下の温情により参加を許された若輩者です」
陛下直属の魔道士とは聞いたことがないけど、この場に立っている以上は疑う余地はないか。
「失礼しました。私はリクト・フォン・シュナイデン。ただの帝国軍中佐です」
「ただの……ではないと思いますけどね。この大歓声がなによりの証拠ですよ。帝都中の女性を虜にするシュナイデン様とお話しできて光栄です」
一体何が言いたいんだ?
言葉は褒めているようだけど、なんとなく上辺だけのようで心に響いてこない。
敵対心は感じないんだけど、なんとなくスッキリしないなぁ。
「卿ら! ここは淑女の集うサロンではないのだぞ? 帝国の代表としての自覚を持ち給え!」
こちらに目もくれず背中越しに叱責してきたのは軍服とは違う見たことのない制服を着た男性だ。
ピンと伸びた背筋で直立姿勢をしているけど、かなり緊張しているようで今にも爆発しそうな雰囲気をしてる。
何をピリついているんだ?
「これは失礼しました。近衛連隊の副長様。結果を残そうと余裕のない貴方様の前での無神経な振る舞い、どうかお許しくださいませ」
慇懃無礼な事だ。
挑発にしても見え見えだよ。
「貴様……陛下直属の魔道士だからといって図に乗るなよ。貴様を重用するのは陛下の御意向ゆえ仕方あるまいが、本来であればどこの誰かもわからぬ貴様など即刻捕縛対象なのだからな」
「ふふっ、胸に刻んでおきますわ」
「シュナイデン卿。卿も帝国貴族の品位を貶める行為は厳に慎むべきだ。あまり浮かれるな」
浮かれた覚えはないけどね。
この人が近衛連隊のオスカー・ローズか。
2年前に創設されたばかりの新参部隊。
士官学校で貴族以外の有能な者だけで構成された陛下直属の部隊と学んだが、実際のところどんな活動をしているかわからないって話だ。
「おい、聞いているのか?」
「聞いてますよ。お口が過ぎるのはお互い様ですね。そろそろお止めになった方がよろしいのでは?」
「くっ! 図に乗るなよ、成り上がりの小僧が……」
「それもお互い様です」
「き、貴様……っ!」
ゴーン、ゴーーーーーーンッ!
オスカーの声をかき消す鐘の音が鳴り響いた。
どうやら本当にここまでのようだな。
「始まりの鐘は鳴らされた! これよりが第一試合を始める! 第一試合はリクト・フォン・シュナイデン対ロビン・マックス!」
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
審判と思しき男性が高らかにそう宣言した。
面倒な開会の話とかなくて良かったよ。
さぁ、やろうか!
と、とりあえず名を呼ばれんだから闘技場に出よう。
「いやぁあああ! シュナイデン様ぁあああ!」
「こっちに顔をお見せになってぇええええ!」
な、なんだ?
よくわからないがさっきよりも黄色い声が闘技場内を響き渡ってるぞ?
声の主は一人二人じゃないし、俺には帝都にそれほど多くの女性の知り合いはいない筈だ。
例えばあそこで俺の名前を呼んだ女の子……
「きゃっ! シュ、シュナイデン様が私を見つめて……ああ、そんな……」
なんかふらついてるみたいだけど、やっぱり知らない人だ。
応援してくれるのはありがたいけど、どうにもうるさくて敵わないな。
「静粛に! お気持ちはわかりますが静粛に願います!」
進行の人の必死の説得で収まりつつあるけど、なんか雰囲気がぶち壊しだな。
俺はここに戦いに来たんだ。
あまり興を削いで欲しくない。
「ふふふっ、これはこれは。すごい人気ですね。シュナイデン様」
声をかけて来たのは俺と一緒に入場した珍しい桃色の髪をした女性だった。
セミロングの髪を整える仕草がなんとも艶っぽくて大人の女性を感じさせる。
これだけインパクトのある見た目の人なら一度会ったら忘れないと思うけど記憶にないな。
「あの、失礼ですが……」
「申し遅れました。私はメアリー・シーラン。皇帝陛下直属の魔道士で、この度は陛下の温情により参加を許された若輩者です」
陛下直属の魔道士とは聞いたことがないけど、この場に立っている以上は疑う余地はないか。
「失礼しました。私はリクト・フォン・シュナイデン。ただの帝国軍中佐です」
「ただの……ではないと思いますけどね。この大歓声がなによりの証拠ですよ。帝都中の女性を虜にするシュナイデン様とお話しできて光栄です」
一体何が言いたいんだ?
言葉は褒めているようだけど、なんとなく上辺だけのようで心に響いてこない。
敵対心は感じないんだけど、なんとなくスッキリしないなぁ。
「卿ら! ここは淑女の集うサロンではないのだぞ? 帝国の代表としての自覚を持ち給え!」
こちらに目もくれず背中越しに叱責してきたのは軍服とは違う見たことのない制服を着た男性だ。
ピンと伸びた背筋で直立姿勢をしているけど、かなり緊張しているようで今にも爆発しそうな雰囲気をしてる。
何をピリついているんだ?
「これは失礼しました。近衛連隊の副長様。結果を残そうと余裕のない貴方様の前での無神経な振る舞い、どうかお許しくださいませ」
慇懃無礼な事だ。
挑発にしても見え見えだよ。
「貴様……陛下直属の魔道士だからといって図に乗るなよ。貴様を重用するのは陛下の御意向ゆえ仕方あるまいが、本来であればどこの誰かもわからぬ貴様など即刻捕縛対象なのだからな」
「ふふっ、胸に刻んでおきますわ」
「シュナイデン卿。卿も帝国貴族の品位を貶める行為は厳に慎むべきだ。あまり浮かれるな」
浮かれた覚えはないけどね。
この人が近衛連隊のオスカー・ローズか。
2年前に創設されたばかりの新参部隊。
士官学校で貴族以外の有能な者だけで構成された陛下直属の部隊と学んだが、実際のところどんな活動をしているかわからないって話だ。
「おい、聞いているのか?」
「聞いてますよ。お口が過ぎるのはお互い様ですね。そろそろお止めになった方がよろしいのでは?」
「くっ! 図に乗るなよ、成り上がりの小僧が……」
「それもお互い様です」
「き、貴様……っ!」
ゴーン、ゴーーーーーーンッ!
オスカーの声をかき消す鐘の音が鳴り響いた。
どうやら本当にここまでのようだな。
「始まりの鐘は鳴らされた! これよりが第一試合を始める! 第一試合はリクト・フォン・シュナイデン対ロビン・マックス!」
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
審判と思しき男性が高らかにそう宣言した。
面倒な開会の話とかなくて良かったよ。
さぁ、やろうか!
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